重力的に不安定な原始惑星系円盤における惑星軌道の変化
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)
報告書番号: R19JCWU00
利用分野: 連携大学院
- 責任者: Elizabeth Tasker, 宇宙科学研究所太陽系科学研究系
- 問い合せ先: Elizabeth Tasker(elizabeth.tasker@jaxa.jp)
- メンバ: Elizabeth Tasker, Ngan Kim Nguyen
事業概要
惑星形成の理論の中で長い間未解決である問題は, 若い恒星の周りのガス円盤の中で出来たての惑星の軌道がどう変化するかということである. このプロジェクトは, 円盤内にできるスパイラルウェーブなどの構造がこの惑星移動にどのような影響を及ぼすかを調べるものである. 恒星の周りの円盤ガス中の惑星の動きをモデリングすることにより, 惑星の軌道が円盤ガスの中の構造に依存すること, そして異なる円盤が異なる惑星の周期を生じることを示したい.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
このプロジェクトには, 数百個のコアを用いた3次元流体力学計算が必要であり, 通常のデスクトップコンピュータでは到底できないことである. 使用しているコード(ChaNGa)はMPIで並列化されたスーパーコンピュータ用に設計されている. 円盤の構造(冷却効率や質量などに依存する)が惑星の移動に与える影響を調べるためには, 様々な異なるシミュレーションをすることが必要となる.
今年度の成果
惑星形成期における, 原始惑星円盤内での低質量惑星に動径方向移動速度の関する理論計算を完成させた. 円盤構造の移動速度への効果を検証するために, 軽くなめらかな円盤内での惑星移動が予想通りであることを確認する必要がある.
そのためには, (A)適正な惑星質量範囲を選ぶこと:小質量過ぎると物理過程を解像が困難であり, 大質量過ぎると, 円盤のギャップを生じることで, 異なる物理を誘発してしまう. (B)円盤中に惑星を「徐々に置く」というやり方をすることで急な相互作用の立ち上げを防ぐこと, (C)冷却効果を取り入れること, という課題をクリアする必要があった. 図1と2に, 地球質量の10倍の惑星が円盤中にあるケースについて示す. 惑星が円盤との相互作用から受けるトルクは定常値に収束し, かつ, その値は理論予想通りである(図2). 惑星の軌道は, 円盤ガスの抵抗により円に近い楕円となる(図1). 円盤ガスを濃くすると円盤からのトルクが大きくなって惑星移動速度は速まる. また, 円盤ガスがなめらかではない構造を持つようになり, トルクは時間変動を示す(図3).
成果の公表
-ポスター
“Planetary Atrmospheres and Habitability”, 14 – 18 10月 2019, 沖縄. http://www.resceu.s.u-tokyo.ac.jp/symposium/resceu_sympo2019/
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 144 – 264
- 1ケースあたりの経過時間: 50 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.25
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 0.00 | 0.00 |
SORA-PP | 683,254.12 | 4.43 |
SORA-LM | 0.00 | 0.00 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 7.95 | 0.01 |
/data | 79.47 | 0.00 |
/ltmp | 1,627.60 | 0.14 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)