スパコン導入・活用の歴史
半世紀にわたる計算機システムの運用と数値シミュレーション技術の研究で宇宙航空分野の発展に貢献してきた、JAXAの計算機システムと数値シミュレーション技術の歩みを紹介します。
JAXAの前身である航空宇宙技術研究所(NAL)は、最初の計算機として米国製DATATRON205を1960年に導入しました。その後、国産機HITAC5020の導入を経て、1977年に富士通との共同開発によるFACOM 230-75APUが日本初のスーパーコンピュータとなりました。
1987年にはNALの特別注文によってFACOM VP400が開発され、これにより機体周りの全機モデル粘性流計算が10時間以内で行えるようになりました。
次に目指したのは、風洞で行う実験を数値シミュレーション技術で行う計算機「数値風洞(Numerical Wind Tunnel)」の開発でした。数値風洞の研究開発は1989年に始まり、1993年に導入。性能は期待された目標を達成し、宇宙航空関連の流体力学の基礎研究分野で大いに活用されました。1994年から3年連続でゴードンベル賞を受賞し、世界一の性能が認められました。
2002年には富士通製のPRIMEPOWERを中核とするシステム(CeNSS)にリプレースし、新世代数値シミュレーション技術の研究開発に実績を残しています。
その後、2003年にJAXAが発足。さらなる研究効率の強化を図るため、2007年に調布、角田、相模原の各事業所に設置されていた3つのスーパーコンピュータを1つに統合したJAXAスーパーコンピュータシステム(JSS1)の運用を開始しました。2009年4月から本格稼働となり、スカラー計算を行うMシステム、Pシステムを合わせた理論演算性能が135TFLOPS、総メモリ量は100TBとなりました。
そして2014年、新スパコン「宙:SORA」の段階的な導入を開始し、10月にはプレポストシステム(SORA-PP)が稼働開始、2015年4月には計算システム(SORA-MA)が理論演算性能1.31PFLOPSで稼働開始しました。2016年4月からはシステムのフル稼働を果たし、SORA-MAの理論演算性能が3.49PFLOPS、総メモリ量は100TiBで運用しています。