立体的可視化技術への挑戦
スパコン活用課では、スパコンの計算結果を素早くかつ、できるだけ効率良く計算結果を検証できるよう可視化技術をユーザに提供しています。また、既存の可視化アプリ、デバイスを使うだけではなく、新しい可能性を発見した場合、その発想をどのように可視化技術に応用できるかにも取り組んでいます。
数年前より着手している「3Dプリンタ」を利用するまったく新しい可視化技術「立体的可視化技術」を紹介します。
3Dプリンタを使ったまったく新しい可視化技術として誕生した「立体的可視化技術」
数値シミュレーションはコンピュータの中に数値的に創りだした3次元空間の中での航空機や宇宙機の機体周りの物理現象の解析なので、計算結果を検証するには2次元の画像より3次元の立体で確認するのが理想的といえます。
数年前より3Dプリンタが活用できるようになり、数値シミュレーション結果をリアルな3次元立体モデルとして造形することが可能となりました。スパコン可視化チームは早い段階で計算結果の立体化技術の確立に着手し、3Dプリントの問題点に取り組んでいます。
初期:単色形状モデルの造形
3DプリンタはCADデータの出力にすぐれているので、数値シミュレーションを行うモデルのプリントは比較的簡単に行えます。
複雑な形状や、細かい形状をプリントして形状の把握に利用しました。
しかし、単色でのプリントなので、数値シミュレーション結果を表現するにはいたりませんでした。
中期:フルカラープリントの実現
3Dプリンタは造形材料によりいくつかのタイプに分けられます。
単色プリントモデルを展示してところフルカラーのプリントができる3Dプリンタの存在を教えてもらい、さっそく可視化に応用できないか試してみました。
フルカラーの場合、造形材料が石膏のため、完成品の強度に問題があります。
薄い形状は少し厚みを増すなどの対応をして、機体表面の分布の表示に成功しました。
最新:透明樹脂を使用した立体的可視化技術
最新の3Dプリンタは複数の造形材料を使えるようになり、透明樹脂と不透明樹脂を同時プリントすることで目指していた「空間の流れ」が表現できるようになりました。
「機体から離れた渦の立体的表現」は研究者にも高く評価してもらえたので、今後はその技術を「計算結果の検証」に利用できるまでに「手軽な可視化技術」にすることを目指しています。
ただ、そのためには巨大なデータを3Dプリンタにかかるようにするためのデータ処理技術や、立体として見せることを考慮した3次元デザインの習熟が重要となってきます。
また、プリント時間や、コストの問題もあります。
3Dプリンタの今後の進化に合わせて、立体的可視化技術を高めていくことが次ステップとなっています。