JSS2の利用概要
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)
1.システム概要
JSS2は,主要計算機である計算システム(SORA-MA)に加えて,大規模計算を行う大メモリ計算システム(SORA-LM)や可視化専用計算機(SORA-PP),大規模ストレージ(J-SPACE)を装備し,さらに水冷システムの採用など,充実した性能とエネルギー削減を目指した先進的なシステムである.
2016年4月から計算システム(SORA-MA)を理論演算性能3.49PFLOPS,総メモリ量100TiBに増設し稼働開始している.
また,インターネット等を経由した遠隔地からの利用において,ファイル転送速度の高速化のため,日米間の回線実験等から,従来速度の30倍の高速通信が可能な技術の開発と検証を行い,実際の運用に役立てている.
JSS2の主要システムの諸元を表1-1に示す.
システム名 | 計算 システム (SORA-MA) |
プレポスト システム (SORA-PP) |
大メモリ計算 システム (SORA-LM) |
つくばプレポスト システム (SORA-TPP) |
---|---|---|---|---|
機種名 | 富士通 FX100 | 富士通 RX350 S8 | 富士通 RX350 S8 | 富士通 RX350 S8 |
ノード数 | 3,240 | 160 | 5 | 25 |
総理論演算性能 | 3.49PFLOPS | 53.7TFLOPS | 2.10TFLOPS | 8.40TFLOPS |
コア数/CPU | 32 | 6 | 8 | 6 |
CPU数/ノード | 1 | 2 | 2 | 2 |
メモリ量/ノード | 32GB | 64GB | 1024/512GB | 64GB |
2.H28年度利用枠
研究開発成果最大化のために利用枠が設けられている.利用枠と配分を図1-1に示す.
利用枠の値は,最低利用率保障として設けられている.例えば,ある利用枠で基準値以上のジョブがあり他の利用枠には余裕がある場合,利用枠の基準%を超えて使用することが可能.
(ご参考)
- 重点利用: JAXAが戦略的に取り組む課題枠
- 一般利用: 重点利用に紐付られない計算テーマの利用枠
- 小規模利用: 新規利用を見据えた試験的・萌芽的な小規模計算枠
- JSS2大学共同利用: 大学共同利用設備制度
- 設備貸付: スパコン資源をJAXA外部の利用者が有償で利用する枠, 設備貸付を利用する前に利用可否を判断するためのトライアルユース(無償)を配分に含む
利用枠別利用人数
JSS2ではJAXA内の利用の他, 共同研究やJSS2大学共同利用, 及び有償による設備貸付等, 外部のユーザにも利用いただいている. JSS2の利用人数を表2-1に示す.
分類 | 利用人数 |
---|---|
重点利用 | 173 |
一般利用 | 249 |
小規模利用 | 143 |
JSS2大学共同利用 | 64 |
設備貸付 | 15 |
合計 | 644 |
利用枠別ジョブ実績
重点利用、一般利用で利用枠全体の96%を占めている. 外部の利用状況は、大学共同利用は3%と概ね計画通りの一方, 設備貸付は受付に余裕があった.
利用枠別ジョブ時間を図1-2に示す.
3. 分野別利用状況
分野別研究テーマ数
詳細分野の研究テーマ数は,宇宙分野79件(48%),航空分野52件(32%),基礎分野31件(19%)であった(表3-1参照).詳細分野では、航空機22件、数値解析17件、宇宙輸送17件、ロケット14件、航空機エンジン13件が上位を占めている(図2-1参照).
分野 | 分野別 研究テーマ数 |
詳細研究テーマ 数(重複あり) |
---|---|---|
宇宙分野 | 55件 | 79件(48%) |
航空分野 | 38件 | 52件(32%) |
基礎分野 | 26件 | 31件(19%) |
その他 | 2件 | 2件( 1%) |
合計 | 121件 | 164件 |
分野別ジョブ時間
分野別のジョブ時間の年間合計割合は,宇宙分野42%,航空分野30%,基礎分野27%だった.分野別ジョブ時間の年間合計を図3-2に示す.
研究テーマ当たりの平均ジョブ時間は,基礎分野の1,864時間が最も長く,航空分野1,448時間,宇宙分野1,381時間となっている.分野別の平均ジョブ時間を表3-2に示す.
分野 | 分野別研究 テーマ数① |
分野別実行 時間合計② |
平均時間 ②/① |
---|---|---|---|
宇宙分野 | 55件 | 75,942h | 1,381h |
航空分野 | 38件 | 55,021h | 1,448h |
基礎分野 | 26件 | 48,457h | 1,864h |
その他 | 2件 | 2,144h | 1,072h |
4.JSS2運用状況
システム稼働率
2016年4月から主力計算システムSORA-MAが増設され運用開始して以来,ジョブスケジューリングの改善により資源の有効活用が進み,年度末ではジョブ充填率が90%近くに達している.
月毎のジョブ充填率推移を図3-1に示す.
(ご参考)
ジョブ充填率とは,運用計画の総コア時間に対するジョブに割り当てられた総コア時間の比率.例えば,すべてのコアがジョブに割り当てられたらジョブ充填率は100%である.
ジョブの実行状況
500並列以上の大規模並列ジョブが主流となっており,ジョブが使用するコア数が大きいほどコア時間が大きくなる傾向にある.また,ジョブが使用しているコア数が1,000~10,000コア,その場合のコア時間が1,000,000~10,000,000秒の区間にジョブが最も密集している.コア数とコア実行時間の分布を図3-2に示す.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)