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燃焼解析技術

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2022年2月~2023年1月)

報告書番号: R22JG3212

利用分野: 研究開発

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  • 責任者: 清水太郎, 研究開発部門第三研究ユニット
  • 問い合せ先: 芳賀 臣紀, 研究開発部門 第三研究ユニット(haga.takanori@jaxa.jp)
  • メンバ: 青野 淳也, 安部 賢治, Simon Blanchard, 大門 優, 福島 裕馬, 芳賀 臣紀, 濱戸 昭太郎, 伊藤 浩之, 熊畑 清, 倉田 博文, 川島 康弘, 根岸 秀世, 中島 健賀, 大野 真司, 清水 太郎, 堤 誠司, 高木 亮治, 多湖 和馬

事業概要

実スケールの液体ロケットエンジン内の非定常現象を捉えるため, 燃焼LES解析に必要な物理モデル及び計算手法を構築する. サブスケール試験との比較検証により解析ツールを開発し, 実機エンジンの開発に適用する.

参照URL

https://stage.tksc.jaxa.jp/jedi/simul/index.html 参照.

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

燃焼室内の流れ場は乱流状態でかつ,非定常な特性を有するため,LES解析が必須となっている.本検証対象でも数千万~数億セルの格子に対して,数百万~数千万ステップ程度の解析計算が必要であるため,スパコンの利用なしには到底目標を達成できない.

今年度の成果

実機スケールの液体ロケットエンジン燃焼器の高精度な解析を実現するため, 高次精度スキームのFlux Reconstruction(FR)法をベースとする燃焼ソルバーLS-FLOW-HOを開発中である. 噴射器数百本を計算する大規模な燃焼LESを実用化するため, 1)高速ソルバーの開発, 2)計算負荷を低減する物理モデルの開発の2本柱で開発を進めている. これまでは大型の1段エンジンの解析に適用するため, 燃焼圧が超臨界圧力の単相流れのソルバーを開発してきた[1]. 本年度から上段エンジンやスロットリング性能の評価のための3)亜臨界圧力下の気液2相ソルバーの開発も本格的にスタートした.

1. 高速ソルバーの開発(高速化と検証解析)

JSS3 TOKI-SORAシステムのCPU A64FX向けのLS-FLOW-HO高速化チューニングに加え, 計算コストが大きい実在流体モデル(SRK状態方程式およびChung輸送係数モデル)について回帰近似を用いる高速化を行った. 燃焼モデルに採用しているFlameletテーブルに回帰近似の係数を追加することで, 比較的容易に高速化が得られることを確認した[2].

極低温推進剤の遷臨界噴射に必要な格子解像度および流入条件などを調べるため, 極低温窒素の噴射実験を対象に検証解析を行った. 噴射器出口より下流の乱流せん断層の格子依存性を調べ必要な格子解像度を調べた. 噴流のポテンシャルコアを実験と比較し, おおむね良好な一致が得られたが, 流入条件に与える速度分布の影響が大きいことがわかった. 現在は, 噴射器上流の円管乱流も考慮した解析を行っている(図1).

2. 物理モデルの開発(反応壁面モデル)

燃焼器壁面の熱流束の予測精度向上のため, 化学反応を考慮した壁面モデルをLS-FLOW-HOに導入した. ミュンヘン工科大のサブスケール燃焼器(GOX/GH2)を対象に, 壁面モデルLES(WMLES)を実施した(図2). 燃焼LESの計算コストが大きいため, 既往研究で必要とされている境界層厚さに対して各方向25点以上の計算点を配置することは容易ではなく, 基準より粗い格子での計算を行ったところ数値不安定が発生した. 燃焼器の平行部壁面にそって境界層が発達するが, 発達途中の境界層が薄いところでは格子解像度がより低下し, 乱流拡散が過小評価されるため壁面セルにおける温度勾配の誤差が大きくなることが原因と推定される. 改善策として, 平衡壁面モデルの仮定に基づき解像不足の乱流拡散を補うサブグリッドスケールモデルの導入を試行中である.

3. 気液2相ソルバーの開発

気液2相流れのモデルは多数あるが, これまで開発してきた単相流れのソルバーを基に拡張できることと大規模並列性に優れることから界面拡散型モデルを採用した. その中でも機械的および熱的平衡を仮定する4方程式モデルを採用し, LS-FLOW-HOに実装した. 液相の状態方程式にはNASGを採用した. 相変化モデルにはChiapolinoモデルを採用し, 多成分化学種が考慮できるように拡張した. 液体および気体窒素の同軸噴流の実験を検証対象とし, 2次元計算を行った結果を図3に示す. せん断層における液体窒素の微粒化の再現性を高めるため, 現在は表面張力モデルの導入を試行している.

Annual Reoprt Figures for 2022

図1: 極低温窒素の円形噴流LES. チャンバ圧は3.97 MPa, 窒素の噴射温度は126.9 K, 噴射速度は4.9 m/s.

 

Annual Reoprt Figures for 2022

図2: 壁面モデルLESによるTUMシングルエレメント燃焼器(GOX/GH2)の瞬時温度場.

 

Annual Reoprt Figures for 2022

図3: 液体窒素(中央)と気体窒素(環状)の非燃焼同軸ジェットの2Dシミュレーション. 周囲圧力は15bar. 蒸発プロセスを含む.

 

成果の公表

-査読なし論文

[1] 芳賀臣紀, 福島裕馬, 熊畑清, 根岸秀世, 清水太郎, 液体ロケットエンジンの実機スケール燃焼器 LES に向けた取り組み, 日本燃焼学会誌, 64(208), 126-135, 2022年.

[2] 芳賀臣紀, 青野 淳也, 福島 裕馬, 清水 太郎, Flameletモデルに基づく超臨界圧乱流拡散火炎シミュレーションの高速化, 第60回燃焼シンポジウム, K114, 2022年.

-招待講演

Haga, T., Fukushima, Y., Kumahata, K., Shimizu, T., "Large-Eddy Simulations of Supercritical Jet Flames by Flux-Reconstruction Method with Invariant-Region-Preserving Limiter," 15th World Congress on Computational Mechanics & 8th Asian Pacific Congress on Computational Mechanics, 2022.

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: N/A - 2000
  • 1ケースあたりの経過時間: 336 時間

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 3.59

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 91522322.93 3.99
TOKI-ST 318898.09 0.32
TOKI-GP 201951.29 8.59
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 766.27 0.05
TOKI-TST 177895.67 4.69
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 2515.32 2.28
/data及び/data2 143670.80 1.11
/ssd 1902.07 0.26

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 173.94 0.77

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 13153.69 9.15

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2022年2月~2023年1月)


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所在地 〒182-8522 東京都
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