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極超音速飛行に向けた流体・燃焼の基礎研究

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2022年2月~2023年1月)

報告書番号: R22JCMP18

利用分野: 競争的資金

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  • 責任者: 沖田耕一, 研究開発部門第四研究ユニット
  • 問い合せ先: 髙橋 政浩(takahashi.masahiro@jaxa.jp)
  • メンバ: 福井 正明, 長谷川 進, 井上 拓, 小寺 正敏, 小林 完, 水野 裕介, 宗像 利彦, 高橋 正晴, 富岡 定毅, 高橋 政浩, 高橋 俊, 山田 剛治, 山下 璃良威

事業概要

本研究は, 地上風洞設備で超音速燃焼試験を行う際に問題となる, 風洞気流加熱用燃焼ガスの混入や気流の乱れが燃焼過程に及ぼす影響について, 風洞試験とCFDの両面から現象解明し, こうした風洞依存性の影響を再現できる数理モデルを提案し, それらを組み込んだCFDベースのツールを構築することで, 風洞試験データから実飛行データを推定可能にすることを目標としている. 最終的には, 飛行試験を実施して実飛行データを取得し, 実飛行データと対応する風洞試験データを用いてツール検証を行う計画である.

参照URL

https://www.kenkai.jaxa.jp/research/supersonic/supersonic.html 参照.

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

近年, 燃料として超音速燃焼器でも炭化水素系燃料が注目されている. これは, 水素に比べて, 体積当たりの燃焼エネルギーが大きいので, 燃料タンクを小さくすることでき, 小型の飛行実証機の実現が可能になるからである. そこで, 本飛行試験でも燃料にエチレンを用いる計画である. エチレンの燃焼反応過程は多くの化学種が関与する複雑なものであり, 風洞気流組成の違いを評価可能な反応機構を用いた燃焼CFDは計算負荷が高い. さらに, 試験機供試体形状やそれに搭載する燃焼器供試体の内部流路形状の設計では, 数多くのパラメトリック計算を限られた期間内に実施しなければならない. よって, 高い計算能力を持つJSSの利用が必要不可欠である.

今年度の成果

(1) 超音速燃焼に対する設備依存性を予測するCFDツールの構築

昨年度構築したRANSをベースとするCFDツールを, 超音速燃焼飛行試験S-520-RD1のエチレンを燃料とする供試体燃焼器に適用し, 飛行試験で得られた圧力分布データとの比較を行った. その際, 各種CFDパラメータは飛行試験前に実施した地上試験データを用いて調整した. その結果, CFDツールによる予測結果は動圧110kPa付近の気流条件において, 試験データとの差が積分圧力推力換算で16.2%となり, 目標値の5%以下を達成できないことがわかった. そこで飛行試験後に実際の飛行条件に合わせて気流条件を調整して行った地上試験データを用い, CFDパラメータの再調整を行った. 結果として反応モデル, 乱流モデル, 乱流シュミット数が前回から変更となった. 再度飛行試験データと比較したところ, 動圧110kPa付近の条件において積分圧力推力換算で試験データとの差が0.1%と目標を達成できた(図1).

(2) RD1飛行試験供試体の熱・空力解析

飛行試験供試体・詳細設計の進捗に伴い, フェアリングとの干渉や機器搭載性の確保のため, 機体形状の見直しがたびたび発生した. その都度, 飛行マッハ数2~7の範囲について飛行試験供試体の空力CFDを実施し, 空力DBを更新した. 図2は, 飛行マッハ数6, 迎角5度の場合の飛行試験供試体表面の圧力係数と機体周りのマッハ数分布である. また, 空力DBを用いて飛行解析を実施し, 飛行試験の成立性と飛行安全上の問題がないことを確認した. さらに, ADS用圧力センサの出力から飛行動圧や飛行姿勢などを推算する式の導出にも利用された. この他, 空力加熱による飛行試験供試体の溶損や著しい局所温度上昇の発生リスクの評価を行った. CFDで飛行試験供試体が受ける空力加熱を予測し, これを入熱条件として, 飛行試験供試体の熱解析(Abaqusを使用)を行い, 各部の温度上昇推定を行った(図3参照). その結果, 溶損が危惧されるほどの温度上昇が生じないことを確認した.

S-520-RD1号機は2022年7月に無事打ち上げられ, RD1飛行試験機はほぼ予定通り飛行し, 超音速燃焼の飛行試験データの取得に成功した.

(3) RD1飛行試験供試体の応力解析

S-520-RD1号機で打上げる予定の飛行試験供試体に対して, 構造に過負荷がかかっていないことを確認するため, Abaqusを用いて振動解析を行った. まず, 供試体に加速度計を取り付け, PSD評価を行い, 計測結果と解析結果を比較した. その結果, 両者は完全に一致してはいないものの, 100 Hzから1000 Hzの範囲で, 周波数特性とその大きさのオーダーは概ね一致した. 解析の妥当性を確認できたので, 次に振動試験における応力解析を行った. 解析結果(図4)より, 加速度計を取り付けていない箇所についても, 振動試験による過負荷はかかっていないと判断した.

(4) 地上対比試験のための供試体空力設計評価

RD1飛行試験の代表条件の気流状態量に試験気流条件を一致させた地上対比試験において, さらに空気取入口で圧縮した後の燃焼器入口気流条件についても気流状態量を飛行試験に一致させた地上試験も行い, 気流条件の合せ込み方法が燃焼試験結果に及ぼす影響を調べた. この燃焼器入口気流条件の調整に用いる低圧縮比インレットの設計評価をCFDで実施し, 形状を決めた. RD1形状と低圧縮比形状のインレットを用いた地上対比試験結果の比較により, 飛行試験と地上対比試験における気流条件合せ込みの方針やその影響に関する知見を得ることができた.

Annual Reoprt Figures for 2022

図1: CFDと飛行試験結果との比較(燃焼器上面壁圧分布)

 

Annual Reoprt Figures for 2022

図2: RD1飛行試験供試体表面の圧力係数と機体周りのマッハ数分布:飛行マッハ数6, 迎角5度

 

Annual Reoprt Figures for 2022

図3: RD1飛行試験供試体の表面温度予測結果

 

Annual Reoprt Figures for 2022

図4: RD1飛行試験供試体の振動試験中に発生する応力の予測結果

 

成果の公表

-査読付き論文

1) Kobayashi, K., Tomioka, S., Takahashi, M., Kodera, M., ''Reaction mechanism reduction for ethylene-fueled supersonic combustion CFD, '' CEAS Space Journal, https://doi.org/10.1007/s12567-023-00484-1, 2023.

2) Takahashi, H., Hasegawa, S., Tani, K., Journal of Spacecraft and Rockets (投稿中).

-査読なし論文

1) 谷, 超音速燃焼飛行試験チーム, ''S-520-RD1による超音速燃焼飛行試験について,'' 日本航空宇宙学会北部支部2023年講演会ならびに第4回再使用型宇宙輸送系シンポジウム, Keynote speech, 2023.

2) 竹腰, 超音速燃焼飛行試験チーム, ''S-520-RD1飛行試験供試体の開発・作動試験,'' 日本航空宇宙学会北部支部2023年講演会ならびに第4回再使用型宇宙輸送系シンポジウム, 2023.

3) 髙橋, 竹腰, 齋藤, 加藤, 小寺, 磯野, 小野寺, 小林, 富岡, ''S-520-RD1飛行試験の地上対比試験結果について,'' 日本航空宇宙学会北部支部2023年講演会ならびに第4回再使用型宇宙輸送系シンポジウム, 2023.

4) Kobayashi, K., Tomioka, S., Takahashi, M., Kodera, M., ''Reaction mechanism reduction for ethylene-fueled supersonic combustion CFD, '' HiSST-2022-0187, 2022.

-招待講演

1) 谷, ''S-520-RD1号機による超音速燃焼飛行試験について,'' 令和4年度宇宙輸送シンポジウム, 特別講演, 2023.

-口頭発表

1) 小寺, 高橋, 小林, 富岡, ''S-520-RD1号機試験:飛行試験, 地上試験とCFD解析の結果比較,'' 令和4年度宇宙輸送シンポジウム, 2023.

2) 谷, 超音速燃焼飛行試験チーム, ''S-520-RD1による超音速燃焼飛行試験について,'' 日本航空宇宙学会北部支部2023年講演会ならびに第4回再使用型宇宙輸送系シンポジウム, Keynote speech, 2023.

3) 竹腰, 超音速燃焼飛行試験チーム, ''S-520-RD1飛行試験供試体の開発・作動試験,'' 日本航空宇宙学会北部支部2023年講演会ならびに第4回再使用型宇宙輸送系シンポジウム, 2023.

4) 髙橋, 竹腰, 齋藤, 加藤, 小寺, 磯野, 小野寺, 小林, 富岡, ''S-520-RD1飛行試験の地上対比試験結果について,'' 日本航空宇宙学会北部支部2023年講演会ならびに第4回再使用型宇宙輸送系シンポジウム, 2023.

5) Kobayashi, K., Tomioka, S., Takahashi, M., Kodera, M., ''Reaction mechanism reduction for ethylene-fueled supersonic combustion CFD, '' HiSST2022, 2022.

-その他

1) 長谷川, 谷, 特許出願手続き中

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: OpenMP/自動並列
  • プロセス並列数: 960 - 2000
  • 1ケースあたりの経過時間: 120 時間

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 4.00

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 108025672.73 4.71
TOKI-ST 211955.68 0.21
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 1944.02 0.13
TOKI-TST 0.46 0.00
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 778.12 0.70
/data及び/data2 53342.57 0.41
/ssd 5735.62 0.80

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 6.96 0.03

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 1797.08 1.25

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2022年2月~2023年1月)


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おしらせ-最近の追加

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JSS3を利用するには

JSS3 を利用するには 「利用するには 」ページをご覧ください。

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所在地

JAXA(宇宙航空研究開発機構) 調布航空宇宙センター
所在地 〒182-8522 東京都
調布市深大寺東町7-44-1