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圧縮性熱乱流境界層の物理とモデリングに関する研究

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2021年2月~2022年1月)

報告書番号: R21JACA31

利用分野: JSS大学共同利用

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  • 責任者: 河合宗司, 東北大学大学院 工学研究科航空宇宙工学専攻
  • 問い合せ先: 平井遼(ryo.hirai.q7@dc.tohoku.ac.jp)
  • メンバ: 河合 宗司, 平井 遼, 那須川 勝一, 岩谷 優汰, 藤原 悠嗣, 中野 敦志

事業概要

本研究では, 衝撃波/乱流境界層干渉現象の境界層剥離流れにおける加熱・冷却壁の影響について壁面モデルLESによる予測精度を検証する. 平均主流方向速度, 壁面せん断応力, 壁面熱流束の各分布に対してDNS流れ場との比較を行った. 壁面モデルLESにより, 剥離領域の平均速度分布に関して壁面温度の違いによる影響を定性的に正しく予測することができた.

参照URL

https://www.klab.mech.tohoku.ac.jp/index_jpn.html 参照.

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

衝撃波/乱流境界層干渉によって生じる乱流境界層剥離を十分に解像するためには多くの格子点が必要となる. さらに, 干渉によって生じた低周波数成分を含む非定常衝撃波振動を捉えるためには非常に長い計算時間を要する. このような空間的・時間的に大規模な非定常流れのシミュレーションにはJSS3を用いた大規模並列計算が有効である.

今年度の成果

 本研究では,壁面熱流束を伴った衝撃波/乱流境界層干渉現象を壁面モデルLESにより計算し,壁面加熱・冷却の影響を受けた境界層剥離流れ場の予測精度についてDNS 計算結果と比較することにより検証を行った.図1に計算条件の概要を示す.主流条件はマッハ数をM∞=2.28,レイノルズ数をReθ≈5,000とした (レイノルズ数の代表長さθは境界層の運動量厚さ).入射衝撃波角はβ=32.7ºとし,非粘性壁を仮定した時に主流方向位置x_sh=35δ0で壁と衝突するように上方境界から衝撃波を与えた (δ0は代表境界層厚さ).壁面温度Twは空力加熱を受けた壁面温度 (回復温度) をTrとした時に Tw⁄Tr =0.5 (冷却条件), 1.0 (疑似断熱条件), 2.0 (加熱条件) の全3ケースを計算した.流入位置では疑似断熱条件で壁面温度を固定し,主流方向位置x_t=8δ0で加熱・冷却条件になめらかに遷移させた.空間差分に6次精度コンパクト差分法,時間積分法に3段3次TVD Runge–Kutta法を用いた.非散逸なコンパクト差分法を用いたロバストな衝撃波捕獲のために Localized Artificial Diffusion 法 [Kawai & Lele (2008)] を用いた.壁面モデルLESの計算において Subgrid-scale 粘性は Selective mixed scale モデルを用いて与えた.さらに,壁面モデルは過去のJSS2利用研究で構築した,壁面熱流束の影響を考慮した平衡壁面モデルを使用した [当課題の一昨年度報告書R19EACA31を参照].

 図2に境界層剥離領域における平均速度分布を示す.DNSの結果 (左列) では,壁面温度条件による違いが主に剥離開始位置と剥離領域の大きさにおいて現れている.加熱壁条件 (図2c) では,疑似断熱壁条件 (図2a) と比較して剥離点がより上流側に移動し,剥離領域サイズが拡大する.対照的に冷却壁条件 (図2e) では剥離点が後流へと移動し,剥離領域が小さくなる.以上の壁面温度の影響を受けた境界層剥離の変化を,壁面モデルLESの結果 (右列) はおおよそ再現している.なお,加熱壁条件 (図 2d) においてはDNSに比べて剥離領域の大きさを若干過小評価する傾向が見られるものの,疑似断熱壁条件 (図2b) および冷却壁条件 (図2f) と比較した際の定性的な変化の特徴は良く再現できている.

 図3に壁面せん断応力と壁面熱流束の主流方向分布を示す.壁面せん断応力分布 (図3a) においては,壁面モデルLESはDNSと比較してせん断応力の減少がより後流側で発生しせん断応力の値自体も高めに予測する.この傾向は壁面温度が高くなるほど顕著に現れる.また,境界層剥離が生じている領域ではDNSの分布は2つのピークを持っているが壁面モデルLESでは壁面温度条件によらず (x-x_sh)⁄δ0≈-1 付近に1つのピークしか現れない.壁面熱流束 (図3b) に関しては,加熱・冷却壁条件において境界層剥離に伴い増加する傾向を示すDNSとは異なり,壁面モデルLESでは減少を示す.以上のように,現在使用している壁面モデルは壁面熱流束の影響をおおよそ予測できるものの,剥離点や剥離領域内の熱流束の予測には改善の余地があることが示された.これは,元となるモデルが平衡モデルであることが影響している可能性もあり,今後は壁面モデルのさらなる改良に向けて,圧力勾配や剥離のような非平衡効果と熱流束の複合的影響についても考察を進めていく.

Annual Reoprt Figures for 2021

図1: 壁面熱流束を伴う衝撃波/乱流境界層干渉の計算設定. 側面, 主流方向速度; 壁面, 流体温度で色付けしたQ2等値面.

 

Annual Reoprt Figures for 2021

図2: 平均速度分布. 左列, DNS; 右列, 壁面モデルLES. (a), (b) 疑似断熱壁条件, (c), (d) 加熱壁条件, (e), (f) 冷却壁条件.

 

Annual Reoprt Figures for 2021

図3: (a) 壁面せん断応力および (b) 壁面熱流束の主流方向分布. 実線, 壁面モデルLES; シンボル, DNS. 黒, 疑似断熱壁条件; 赤, 加熱壁条件; 青, 冷却壁条件.

 

成果の公表

-査読付き論文

R. Hirai, R. Pecnik, and S. Kawai, "Effects of the semi-local Reynolds number in scaling turbulent statistics for wall heated/cooled supersonic turbulent boundary layers", Physical Review Fluids 6 (12), 124603, 2021.

https://doi.org/10.1103/PhysRevFluids.6.124603

-口頭発表

1) 平井遼, 河合宗司:壁面熱流束を伴う衝撃波/乱流境界層干渉現象のDNS解析, 第53回流体力学講演会/第39回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム

2) R. Hirai and S. Kawai, "DNS analysis of wall heat flux effects on shock wave and turbulent boundary layer interactions", AIAA Scitech Forum 2022.

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: 320 - 432
  • 1ケースあたりの経過時間: 120 時間

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.01

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 186868.08 0.01
TOKI-ST 0.00 0.00
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 0.00 0.00
TOKI-TST 0.00 0.00
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 341.11 0.34
/data及び/data2 10651.11 0.11
/ssd 511.11 0.13

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 0.00 0.00

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2021年2月~2022年1月)


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JAXA(宇宙航空研究開発機構) 調布航空宇宙センター
所在地 〒182-8522 東京都
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