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低レイノルズ数領域における翼性能向上に関する数値解析

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)

報告書番号: R19JACA43

利用分野: JSS2大学共同利用

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  • 責任者: 北村圭一, 横浜国立大学
  • 問い合せ先: 小川優(ogawa-suguru-ps@ynu.jp)
  • メンバ: 北村 圭一, 小川 優, 古澤 善克

事業概要

火星探査機の新しい形態として, 日本ではJAXAを中心に火星飛行機の研究開発が進んでいる. 火星大気は密度が小さく, 火星飛行機は低レイノルズ数領域を飛行することになるため, この領域で高い飛行性能を示す翼を開発する必要がある. 本研究では数値計算を用いて, 低レイノルズ数領域における翼周囲の流れ場構造を詳細に調べる. これにより翼性能を向上させる方法を提案し, そのメカニズムを明らかにすることを目的とする.

参照URL

なし

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

層流計算で境界層付近の細かい渦を捉えるためには5000万セルを超える格子での大規模計算が必要で, 計算時間を大幅に削減するために, JSS2を使用した. また, JAXAで開発された回転翼に関する流体解析ソルバ「rFlow3D」を用いた大規模な3次元回転翼の数値計算を行うため, JSS2を使用した.

今年度の成果

層流剥離抑制の手法として, 表面移動法(moving surface method)を導入し, 三次元翼(翼端は考慮しない)でその効果を実証した. 表面移動法は翼表面を流れに沿った方向に移動させ, 表面付近の流れを制御する方法であり, この流れはクウェット流れに基づく. これを翼表面付近の一部に適用することで, 流れを止めようとする逆圧力勾配に勝るだけの運動量を供給し剥離を制御する手法である(図1参照). 計算条件はRe = 23000, マッハ数0.2, 迎角3°, 6°, 9°である. ここで翼型は石井翼で翼弦長は1mである. また, 表面移動速度は一様流の半分とした. 計算結果から表面移動法を適用することで全ての迎角で一定の揚抗比の改善が見込めることが分かった(迎角3°13.7 → 19.5, 迎角6°13.0 → 27.6, 迎角9°6.75 → 25.8). また, 図2に代表ケースとして迎角6°におけるQ値の可視化結果を示す. 図2(a)から翼の前縁で剥離した流れが翼中腹付近で再付着し, その間に複雑な三次元的な流れ場を形成していることが分かる. しかし, 表面移動法を適用すると図2(b)のようになり, 表面移動法を適用することにより剥離が抑制されていることが分かる. この作用により, 翼前縁で流れが付着流れになることで負圧が大きくなり, その結果圧力抵抗が大幅に減少し, 揚抗比の大幅な改善につながったと考えられる. また, 表面移動法を適用することにより, 三次元性を生み出していた前縁剥離が抑制されたことで, 二次元流れ場に近似できることも明らかとなった. また表面移動法は他の手法と比べ周囲環境の影響を受けにくいため, 火星環境でも一定の効果が見込めると考えられる.

上記の計算に加え, 低レイノルズ領域を飛行するプロペラ推進の航空機におけるプロペラ・固定翼間の空力干渉の数値解析を行った. 計算条件は, レイノルズ数Re = 23000(固定翼コード長基準), 一様流速 9.0 m/s, 進行率J =0.8, 迎角は-5°から15°まで5°刻みである. 計算対象として, 固定翼の翼型には石井翼(翼弦長 50mm, 翼幅200 mm)を, プロペラには模型用プロペラであるAPC Propeller 6x4Eを採寸してモデル化したものを用いた. また, 固定翼の翼幅中心の前縁または後縁から固定翼翼弦長だけ離れた位置にプロペラを配置した. プロペラを固定翼前方に配置した場合(Fr. Prop.), プロペラ後流が固定翼上の剥離を抑制して低圧領域が小さくなったため, 迎角の変化に対して揚力係数が線型的に変化する傾向を示した(図3). また, プロペラのみの場合よりも推力係数が約15-35%上昇した(図4). プロペラを固定翼後方に設置した場合(Rr. Prop.), 固定翼に生じる空気力は固定翼のみの場合と大きく変わらなかったが, プロペラのみの場合よりも推力係数が55-220%上昇した. しかし, 固定翼後流の影響を受けて進行率が局所的に変動したため, プロペラ方位角ごとの推力係数の変動が非常に大きくなった. これらの結果は, 低レイノルズ領域を飛行するプロペラ推進の航空機の設計には, プロペラと固定翼の干渉による空気力の変動を考慮に入れる必要があることを示している.

Annual Reoprt Figures for 2019

図1: 表面移動法の概要図

 

Annual Reoprt Figures for 2019

図2: Cpで色付けしたQ値の等値面(-1.5 < Cp < 1.0)(瞬時場)(a) 表面移動法適用無し(b)表面移動法適用有り

 

Annual Reoprt Figures for 2019

図3: 各迎角での揚力係数の比較

 

Annual Reoprt Figures for 2019

図4: 各迎角での推力係数の比較

 

成果の公表

-口頭発表

小川優, 北村圭一, "表面移動法を用いた三次元翼の低レイノルズ数空力特性の向上, "日本航空宇宙学会第50期年会講演会, 2019

古澤善克, 北村圭一, "固定翼前方にプロペラを有する場合の固定翼/プロペラ空力干渉の数値解析, "日本航空宇宙学会第50期年会講演会, 2019

古澤善克, 北村圭一, "迎角を変化させた際のプロペラ/固定翼空力干渉の特性調査に関する数値解析, "第63回宇宙科学技術連合講演会, 2019

Suguru Ogawa, Keiichi Kitamura, "Improvement of the Aerodynamic Characteristics of Wing by Moving Surface Method at Low Reynolds Number", 32nd International Symposium on Space Technology and Science (ISTS), 2019

Yoshikatsu Furusawa, Keiichi Kitamura, "Unsteady Numerical Simulation on Angle-of-Attack Effects of Tractor-Propeller/Wing and Pusher-Propeller/Wing Interactions," AIAA Science and Technology Forum and Exposition 2020, 2020

JSS2利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: 512 - 2048
  • 1ケースあたりの経過時間: 140000 秒

利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.28

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 1,496,626.64 0.18
SORA-PP 252,879.23 1.64
SORA-LM 1,855.79 0.77
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 6.68 0.01
/data 4,901.89 0.08
/ltmp 1,367.19 0.12

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 2.37 0.06

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)


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所在地

JAXA(宇宙航空研究開発機構) 調布航空宇宙センター
所在地 〒182-8522 東京都
調布市深大寺東町7-44-1