aFJR実用化促進事業
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)
報告書番号: R19JA2180
利用分野: 航空技術
- 責任者: 石井達哉, 航空技術部門推進技術研究ユニット
- 問い合せ先: 榎本俊治(enomoto.shunji@jaxa.jp)
- メンバ: 榎本 俊治
事業概要
航空エンジンの低燃費化を目標の一つとして, 高効率軽量ファン・タービン技術実証(aFJR)プロジェクトでは, 航空用エンジンの高バイパス比化に必要となる技術の研究を行った. 高バイパス比ファンでは従来よりも大型のファンが低速で回転するためファン流れのレイノルズ数が低下する. このことを利用し, ファン翼面境界層の層流領域ができる限り広くなるように設計することが可能である. 本研究では, このようなファン翼面境界層の遷移の有無を, 乱流モデルや遷移モデルを用いず, LES解析により推定することを試みた.
参照URL
「aFJR(高効率軽量ファン・タービン技術実証) | 航空環境技術の研究開発プログラム(ECAT) | JAXA航空技術部門」参照.
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
乱流遷移を予測する数値シミュレーションは, 計算量の大きさからスパコンで無ければ実行が困難である.
今年度の成果
Fig.1に計算領域全体のマッハ数分布を示す. 計算格子は実験を行ったTWT-2風洞の形状を模擬しており, 主流マッハ数は1.1である. ファン翼の少し上流に垂直衝撃波が存在し, ファン翼に流入する流れは亜音速になっている. Fig.2は瞬間のマッハ数分布である. X<25mmの範囲は剥離の無い綺麗な層流境界層であり, x=27mm辺りで遷移が起きており, 自然遷移している. 前縁から遷移に至るまでの間に何が起きているかを見るため, 速度変動のv'成分の瞬間値をFig.3に示した. 渦列がX=10mm辺りで発生し, 境界層中を伝わりながら成長し, X=27mmで遷移に至っている. Fig.4はファン翼面から0.02mm離れた面をY軸の上方から見下ろした図である. Z方向に2倍に拡大されている. この図を見ると, 12 < X < 23mmの範囲では斜めの波が発生している. Z方向に周期境界条件を使っているので, 斜めの波は周期境界に合致するものが選択的に成長する. このため精度の良い計算のためには, Z方向の幅を, この計算の数倍以上広く設定する必要があると考えられる.
図2(ビデオ): 翼断面のマッハ数分布(Y方向に5倍拡大)
図3(ビデオ): 翼断面の速度変動(v’)
図4(ビデオ): 翼面から0.02mm離れた面の速度変動(u’) (Z方向に2倍拡大)
成果の公表
-査読なし論文
榎本俊治, 賀澤順一, 遷音速ファン翼の境界層遷移のLES, 第33回数値流体力学シンポジウム
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 72
- 1ケースあたりの経過時間: 500 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.10
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 0.00 | 0.00 |
SORA-PP | 39,440.18 | 0.26 |
SORA-LM | 0.00 | 0.00 |
SORA-TPP | 130,380.18 | 7.87 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 11.05 | 0.01 |
/data | 3,329.19 | 0.06 |
/ltmp | 665.84 | 0.06 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 10.48 | 0.26 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)