連携大学院:3次元バフェット解析に関する研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)
報告書番号: R17JTET21
利用分野: 技術習得方式
- 責任者: 青山剛史 航空技術部門数値解析技術研究ユニット
- 問い合せ先: 橋本敦 hashimoto.atsushi@jaxa.jp
- メンバ: 小島良実, 齋藤陽一
事業概要
遷音速バフェットとは,遷音速飛行中の航空機において,翼上面に発生する衝撃波が振動する現象であり,航空機の安全性に大きな影響がある.
これまで,スパン方向に一様な形状を持つ2次元翼におけるバフェットが広く研究されてきた. 一方,現実の航空機により近い3次元翼におけるバフェット現象の研究例は多くない. 3次元翼におけるバフェットでは,スパン方向に衝撃波面が伝播することが知られているが,そのメカニズムの解明は不十分である.
本事業では,3次元翼におけるバフェット現象のメカニズムを明らかにすることを目的とする. 後退角を変更した平行四辺形状の翼モデルについてCFD(Computational Fluid Dynamics)解析を実施した. その結果,スパン方向への衝撃波面の伝播を再現することができた. また,翼後縁で発生する圧力波のコード方向への伝播が観察された.
参照URL
なし
JSS2利用の理由
本事業で解析した3次元バフェット現象は複雑な非定常流れであり,その解析には多くの計算資源を必要とする. そのため,スーパーコンピュータの利用が必須となる. また,大きな容量となる計算結果の分析にあたっても大容量メモリが必要となる. よって,数値計算の実行及び非定常データの分析にJSS2を利用した.
今年度の成果
(図1)および(図2)に後退角0°と15°のケースにおける表面圧力係数Cpの時間変動を示す. Fig. 1の後退角0°の結果をみると,衝撃波面が主に翼弦方向に振動している. また,振動は翼幅方向に一様であり,現象は2次元的である. 一方Fig. 2の後退角15°の結果をみると,衝撃波面がスパン方向に伝播している様子が観察でき,3次元的な現象が発生している. また,衝撃波の伝播は翼の中間あたりから起きていることもわかる.
(図3)に後退角15°のケースで翼後縁から発生する圧力波(クッタ波)を可視化した連続画像を示す. キャプションは無次元時刻を示している. Fig. 3をみると,クッタ波は翼後縁に対して平行に発生し,上流へと伝播している.
以上のように,本研究では3次元バフェットの再現に成功した. また,翼後縁で発生したクッタ波が翼弦方向に伝播する様子を観察した.
図1(ビデオ): 表面圧力係数の時間変動(後退角0°)
図2(ビデオ): 表面圧力係数の時間変動(後退角15°)
成果の公表
■ 査読付論文
1) 小島良実, 橋本敦, 青山剛史, 亀田正治, “三次元翼における遷音速バフェット特性のスパン方向変化,” 日本航空宇宙学会論文集, 第66巻, 第1号, pp. 39-45, (2018).
■ 口頭発表
1) Yoimi Kojima, Atsushi Hashimoto, Takashi Aoyama and Masaharu Kameda, “Variation in spanwise direction of transonic buffet on a three-dimensional wing,” 31st International symposium on shock waves, Nagoya, Japan, (2017).
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: N/A
- プロセス並列数: 320
- 1ケースあたりの経過時間: 60.00 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.92
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 7,331,969.95 | 0.96 |
SORA-PP | 40,867.27 | 0.51 |
SORA-LM | 180.59 | 0.09 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 104.90 | 0.07 |
/data | 19,531.26 | 0.36 |
/ltmp | 3,906.25 | 0.29 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 93.24 | 4.01 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)