人工衛星 – EORC
JAXA地球観測研究センター (EORC: Earth Observation Research Center)について
1995年4月に設置されたJAXA地球観測研究センター(Earth Observation Research Center: EORC)では、日本の人工衛星を用いた地球観測を実施する中核的機関として、地球観測、データ解析・利用研究を推進し、様々な形で地球環境を把握するための情報を提供してきました。これらの活動を通じて、自然と調和した社会の実現へ向けた社会基盤の一つとして、宇宙からの地球観測技術を用いた貢献を継続していきます。
全球高解像度大気モデルを用いた気象予測の研究
様々な気象災害に備えて正しい気象予報を行うためには、尤もらしい大気初期値と精密な大気モデルが必要です。JAXAでは、JSS2上に衛星観測データと数値シミュレーションを組み合わせて尤もらしい大気場を推定する同化システムを導入し, 同時に雲や降水を精密に計算する全球高解像大気モデルを用いた気象予測の研究を行っています。
[雲-表面温度]
数値モデルによって表現された2017年7月の気象場。表面温度(カラー ℃)と大気上端における外向き長波放射 (おおよそ雲の高さに相当) (白黒 W m-2)を示す。
[降水量-水蒸気量]
数値モデルによって表現された2017年7月の気象場。降水量(カラー mm hr-1)と大気中の水蒸気量 (白黒 mm)を示す。
[風-雲水量]
数値モデルによって表現された2017年7月の気象場。地上風速(カラー m s-1)と大気中の雲水量 (白黒 kg m-2)を示す。
全球雲解像数値大気モデルによるエアロゾルの解析
気候変動を適切に推定するには、地球におけるエアロゾル(汚染粒子)の複雑な役割を理解することが不可欠です。
JAXAは、高解像度の静水圧二十面体大気モデル(NICAM-Chem)に結合された地球大気化学モデルをJSS2に導入し、データ同化とモデル検証に衛星観測データを利用しています。
Model Specification in JSS2
Stretch-NICAM
●Horizontal resolution: 11km around Tokyo, dx=25km around
Hokkaido & Kyusyu (glevel6, stretch ratio 100)
●Emission: Daily biomass burning emission inventory from
GFAS (ECMWF), anthropogenic sources in 2007
●Meteorology: NCEP-FNL nudging
●Aerosol: sulfate, carbon, seasalt, and dust
●References: Goto et al. (2015, 2016, in prep)
●Platform: 1-day integration requires
衛星データを活用した黒潮の解析
現在いろいろな研究機関で、気象観測、人工衛星観測や数値モデル計算などによって地球環境の変化を捉える研究が進められています。その研究成果により、陸上だけではなく、地球表面の7割を占める海洋の変化もはっきりと捉えることができるようになりました。
この「黒潮の解析」はJSS2による1日ごとの日本の南側の海面温度(人工衛星GCOM-W: ヒマワリ-8により観測されたもの)と西から東へと流れる海流の変化を、JAMSTEC(海洋研究開発機構)と共同開発した3Km解像度の日本南岸域海洋モデルをベースとする衛星データ同化システムで解析した結果で、2017年の6月1日から9月30日までの変化を可視化しました。2017年夏にダイナミックに変化した「黒潮の大蛇行」を捉えています。
JAXAでは、JAXAや関係するさまざまな地球観測衛星による観測データを用いて、気候変動監視や予測に必要な海洋や海氷に関する物理量(海面水温、海上風速、海氷密接度等)の長期的なデータセットを公開すると共に、衛星・地上観測・モデルの連携により、海中を含めた複合的な海洋環境データセットの作成を行っています。
地球観測衛星による海洋・海氷データセットや、衛星データをモデルに同化した連続的な海洋環境データセットが、気候変動研究や現業分野で利用されることで、JAXA地球観測衛星データの必要性や利用が拡大することを目指しています。
2017年の6月1日から9月30日までの日本列島の南側の海域の変化
(オレンジ色は流れの等値面で、矢印は海流の強さ、方向を表しています)
JAXA地球観測研究センターの紹介