センターニュース 第3号
スーパーコンピュータ活用課が発行する、JSSユーザの皆さまにはもちろんのこと、一般の方々にも航空宇宙分野における研究開発ツールとしてのスパコンの役割・活動等について、知っていただくためのセンターニュース第3号です。
そらくん、るりちゃん:「夏本番ですね!」
スパコッコ:「だいぶ暑い日が続いてますよぉ!」
ドクターエアロ:「暑さ対策を十分にして、スパコンは元気に運用します!」
大規模チャレンジの成果が出ています!
航空宇宙研究開発用に最適化した高性能マシン(JSS)の提供と、大規模チャレンジという仕組みの構築・実施を通して、世界初の解析の実現に貢献しています。
今回は国産基幹ロケットであるH3ロケットの液体ロケットエンジンの燃焼シミュレーションを紹介します。ロケットエンジンは仕組みが複雑な上、燃焼時には非常に高温になる上に非常な圧力がかかります。実際の実験にはかなりのコストがかかるので、計算科学による解析がその開発に重要な役割を果たします。
<液体ロケットエンジン燃焼器の実機スケール非定常燃焼解析の実現>
第3ユニット 芳賀 臣紀
シミュレーション結果が表彰されました
解析時間は4 msとまだ短いですが、実機スケール特有の複雑な音響モードと流れの連成を過渡的にとらえることに成功しました。
関連研究で日本燃焼学会ベストプレゼンテーション賞、炎の写真展優秀賞の2件の外部表彰を受賞しました。
燃焼器内に発達した圧力変動と火炎の変形①
燃焼器内に発達した圧力変動と火炎の変形②
計算コストを劇的に抑えた解析技術の開発
実機スケール燃焼器の実現を通して達成した計算速度 及び安定性向上により、非定常燃焼解析のコストを劇的に短縮(数か月/ケースが1週間/ケースに短縮)することが出来ます。非定常燃焼解析の実用化で、エンジン設計開発現場において非定常燃焼現象の理解・予測を実現することが可能となりつつあります。
単一噴射器非定常燃焼解析(従来の定常解析と同等の計算時間)の場合、開発中のH3ロケット1段LE-9エンジン燃焼器の技術 課題に対して、燃焼や燃焼室音響を考慮した非定常 燃焼解析に要する時間を従来の1/20以下に短縮出来ます。従来は簡易評価に留まっていた非定常現象について、非定常燃焼解析(噴射器端からの渦放出等)を用いたトラブルシュートが可能となるでしょう。
今後期待される成果
〇実機スケール解析でしか再現・予測ができない事象について、課題解決に活用することを検討しています。噴射器の配列、形状(機械加工、3D造形)の忠実な再現や、複雑な音響モードと燃焼場のカップリングを目指します。
〇実機燃焼器のデジタル化を世界に先駆けて実現することで開発期間/経費の削減だけでなく、現象理解に基づく経験に依存しない次世代エンジンの設計の実現を目指します。
その他の燃焼器航空機や発電用等に適用することで、脱炭素社会に向けた研究開発にも貢献が期待されています。
お役立ち情報
JSS3ポータルに「ユーザサポート」の項目を追加しました。
JSS3ユーザにより快適にスパコンを使っていただくための情報を掲載します。
まずは「可視化サポート」の詳細を掲載しています。もし、可視化作業で何かトラブルありましたら、こちらを参照してみてください。また、可視化チームへのご相談もお待ちしています。
そのページには、ユーザさんに使ってもらう「JSSイラスト素材集」も掲載しています。
航空宇宙関連の資料を作るときに活用してください。
これからも、どんどん追加していきます。
ポータルサイト及びJSS相談窓口案内
(1)JSSについての情報は、以下のポータルサイトでご覧いただけます。
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編集後期
夏本番になり、センターニュースの第3号を発行することができました。JSS3による成果もどんどんと出ています。ここから年末に向けて更なる安定した運用を目指して行きます。運用改善に向けた情報も発信していきます!
(2022.8.4発行)