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DBDプラズマアクチュエータを用いた流れ制御技術の高度化に関する研究

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)

報告書番号: R24JACA26

利用分野: JSS大学共同利用

PDF(はここからダウンロード)

  • 責任者: 立川智章, 東京理科大学
  • 問い合せ先: 立川智章(tatsukawa@rs.tus.ac.jp)
  • メンバ: 小川 拓人, 立川 智章, 瀧川 圭太, Tan Kevin

事業概要

航空機などへの利用が期待される誘電体バリア放電(DBD)プラズマアクチュエータを用いた能動的流れ制御技術の確立, 実流れへの適用を目的とする. 今年度はこれまで取り組んできた翼周り流れの制御に加えて, 複雑な剥離現象を生じる流れに対する流れ制御の高忠実シミュレーションを行い, 流体制御デバイスの適用可能範囲を広げ, 能動的流体制御技術の向上に取り組む.

参照URL

なし

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

JAXAスーパーコンピュータで計算実績が豊富な圧縮性流体解析ソルバLANS3Dを用いて大規模3次元非定常流れシミュレーションを実施するため

今年度の成果

これまで本課題では, プラズマアクチュエータ(PA)を用いた翼面上の流れの剥離制御手法の研究を行ってきた. NACA0015翼周りの流れ(レイノルズ数:63,000)に対する剥離制御においては, 高忠実度シミュレーションにより得られた流れ場の考察に基づき, これまで高迎角で有効とされてきた無次元バースト周波数よりも高い, 無次元周波数18による制御が有効である可能性を示した. 今年度は, 翼周りの流れと比べてより複雑な剥離現象が生じるAhmedモデル周りの流れの制御に取り組んだ. Ahmedモデルは, 丸みを帯びた先頭部, 長い胴体, 後方で斜めに切り落とされたスラント部, そして垂直な後端部から構成される. 簡易的な形状であるが, モデル後方では, 航空機や飛翔体においても観察される複雑な3次元流れを形成する. 本研究ではモデル後方の複雑な流れの制御に取り組むことで, PAの実利用に向けて有用な知見の獲得を目指す. 本研究ではスラント部の傾斜角を25度に設定し, 特にモデル後方に発生する剥離や縦渦を含む複雑な流れに注目し, PAを用いた流れ制御を試みた.

スラント部における流れの制御を目的として, 図1に示すように複数のPA設置条件を検討した. 具体的には, ルーフ部後端に設置し, 主流方向と逆向きに誘起流を発生させるPA1_Counter, スラント部前縁に設置し, 主流方向に誘起するPA2, 同じ位置で主流方向と逆向きに誘起するPA2_Counterの3条件である. さらに, それぞれの条件に対して誘起流の強さを増加させたケースを_Strongとした. PAを設置していない基準となるケースはBaseと呼ぶ. 計算格子は約5.8億点で, Ahmedモデル高さを基準にレイノルズ数は200,000とした. 支配方程式は3次元圧縮性Navier-Stokes方程式を用い, 空間差分法には6次精度コンパクト差分法(α=0.48)を, 時間積分法には, ADI-SGS陰解法(内部反復5回)を用いた. 時間刻みΔt=5.0×10^-4とし, 乱流解析手法としてImplicit LESを用いた. 流入マッハ数は0.2とし, 比熱比は空気のγ=1.4, プラントル数はPr=0.72とした.

図2にBaseにおける流れ場の様子を示す. 等値面は速度勾配テンソルの第二不変量で, 速度の絶対値によって色付けされている. スラント部中央には大規模な剥離領域が形成されており, またスラント部の左右端部からは縦渦が発生している様子が確認できる. これらは, 実験的にも知られるスラント角度25°のAhmedモデル特有の流れ構造であり, 数値シミュレーションによって流れが再現されていることがわかる. 図3にスラント部中央断面の速度分布を示す. PA2_Strongのケースがスラント部における剥離を最も効果的に抑制できており, 次いでPA1_Counter_Strong, PA2の順に剥離領域が小さくなる. 一方, PA2_CounterおよびPA2_Counter_Strongのケースでは, 逆に剥離領域が拡大している. これらの結果から, スラント部の剥離に関しては主流方向に流れを誘起する制御が一概に効果的であるとは言えないことがわかる. 特に, PA1_Counter_Strongのケースでは, ルーフ部後端で一度剥離が発生した後, 再付着し, スラント部に沿う流れが形成されることで, スラント部全体での剥離領域が縮小していることは特筆すべき点である.

スラント部の端部から発生する縦渦周辺の渦度絶対値の分布を図4に示す. PA2_Counter_Strongではスラント部の後縁に近づくにつれて渦が減衰していることが確認される一方, スラント部の剥離抑制効果が高かったPA1_Counter_Strongでは端部から発生する縦渦にほとんど効果を及ぼしていないことがわかる. この違いは, スラント部の剥離剪断層と縦渦との位置関係に起因すると考えられる. 縦渦の生成に寄与する端部周辺の流れの構造をより詳細に調べ, 適切に剪断層を制御することで, 間接的に縦渦を制御できる可能性がある.

以上のように, Ahmedモデル周り流れの制御を行うことで, PAを用いてスラント部の剥離抑制が可能であることがわかった. また, スラント部の流れを剥離させることで, 縦渦を弱めることも可能であることがわかった. 縦渦への影響は制御条件によって大きく異なり, モデル端部周辺の流れとスラント部の剥離剪断層との関係を明らかにすることで, より良い縦渦の制御法についても今後議論したいと考えている.

Annual Report Figures for 2024

図1: PA設置条件

 

Annual Report Figures for 2024

図2: Baseにおける瞬間場(等値面は速度勾配テンソルの第二不変量)

 

Annual Report Figures for 2024

図3: モデル中央断面の主流方向速度分布

 

Annual Report Figures for 2024

図4: 縦渦周辺の渦度絶対値分布

 

成果の公表

-口頭発表

瀧川圭太, 浅田健吾, 立川智章, 渡部航太朗, 藤井孝藏,“DBDプラズマアクチュエータを用いたAhmed modelスラント部流れ制御のLES解析”,第38回数値流体力学シンポジウム,東京,2024年12月

-ポスター

瀧川圭太, 浅田健吾, 立川智章, 藤井孝藏,“DBDプラズマアクチュエータによるAhmed modelスラント部の流れ制御”,日本機械学会流体工学部門 プラズマアクチュエータ研究会 第11回シンポジウム,オンライン,2025年1月

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: 自動並列
  • プロセス並列数: 79 - 269
  • 1ケースあたりの経過時間: 24 時間

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.46

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 12498425.60 0.57
TOKI-ST 0.00 0.00
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 0.00 0.00
TOKI-TST 0.00 0.00
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 40.00 0.03
/data及び/data2 35400.00 0.17
/ssd 0.00 0.00

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 0.00 0.00

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)