時間発展に関して不変集合となるロスビー波解の大規模構造形成における役割について
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)
報告書番号: R24JACA46
利用分野: JSS大学共同利用
- 責任者: 小布施祈織, 岡山大学
- 問い合せ先: 小布施祈織(obuse@okayama-u.ac.jp)
- メンバ: 小布施 祈織
事業概要
惑星大気の運動を記述する最も簡単な数理モデルの1つである2次元球面上順圧モデルでは, 木星などの巨大ガス惑星などで見られるような大規模帯状流が自発的に形成される. しかしながらこのメカニズムは明らかになっていない. 本研究は, この系に特有なロスビー波解の非線形相互作用を詳細に調べることにより, どのようなロスビー波相互作用が大規模構造形成強く寄与しているのかを明らかにすることを目的とする.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
共同研究をする可能性のある研究グループがJAXAスーパーコンピューティングシステムにアカウントを有していたため, 共同研究をする場合のデータの共有を考えると当システムの利用が望ましいと考えた. また,前年度からの継続研究であり研究に必要なデータの大部分がJAXAスーパーコンピューティングシステムに置かれていたため, 継続利用を希望した.
今年度の成果
回転球面上非強制問題における大規模帯状流形成では, ロスビー波3波相互作用 Y_(n1)^(m)×Y_(n2)^(-m)→Y_(n3)^0 (ただしY_n^mは球面調和関数)のうち,
(1) m_1=-m_2が小さい
(2) |n_1- n_2| が非常に小さい
(3) n_1, n_2が非常に大きい
を満たすものが重要であることが示唆されている(Hagimori et al , 2024)が, これらの条件がどのようにしてどの程度の強さで働いているかはいまだ分かっていない. そこで本研究では, 大規模帯状流形成の初期状態への依存の有無の確認および, 上記(1)-(3)のうちどの条件が最も強く効いているのかを明らかにする計算を行った.
その結果, まず, 帯状流の形成をある程度の段階まで阻害し続けると, その後通常の時間発展に戻しても帯状流が卓越しなくなることが分かった. また, 帯状流が卓越しなくなった状態から全体に大きな摂動を加えても帯状流が卓越することはなかった. この結果は, 大規模帯状流はどのような初期状態であっても形成されるというわけではないことを示している. 続いて上で記した条件(1)-(3)について考えるために, 様々な初期エネルギー分布(特にmの分布に着目)での時間発展を調べた. その結果, (1)の重要度は比較的低いことが示唆された. また, 帯状流が卓越する場合逆カスケ-ドが起こるため(3)についても重要度合いは低いと考えられる. したがって, 3つの条件のうち条件(2)「n_1, n_2が非常に近いこと」が比較的重要度が高い可能性があることが分かった.
成果の公表
-口頭発表
1) Kiori Obuse, Hagimori Yusuke, and Michio Yamada, "Rossby wave nonlinear interactions and large-scale zonal flow formation in two-dimensional turbulence on a rotating sphere", EGU General Assembly 2024, Austria Center Vienna, 14th-19th Apr. 2024
2)小布施祈織, 山田道夫, "回転球面上二次元乱流におけるロスビー波三波相互作用による大規模帯状構造形成について", 日本流体力学会2024年度年会, フォレスト仙台, 2024年9月25日-27日
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: 非該当
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 1
- 1ケースあたりの経過時間: 24 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.00
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
TOKI-SORA | 8.76 | 0.00 |
TOKI-ST | 0.07 | 0.00 |
TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-LM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TST | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 140.00 | 0.09 |
/data及び/data2 | 10240.00 | 0.05 |
/ssd | 0.00 | 0.00 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
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ISVソフトウェア(合計) | 0.00 | 0.00 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)