マイクロプラズマアクチュエータの表面分布法の検討
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)
報告書番号: R24JACA47
利用分野: JSS大学共同利用
- 責任者: 松野隆, 鳥取大学
- 問い合せ先: 松野 隆(matsuno@tottori-u.ac.jp)
- メンバ: 金崎 雅博, 加藤 泰輝, 森澤 征一郎, 松野 隆, 中川 巧
事業概要
プラズマアクチュエータ (PA) は放電プラズマを利用した流体制御デバイスであり, プラズマの移動によって平滑な物体表面から壁面噴流が生成できるという, 流体力学的に非常に応用価値の高い特徴を持つ. 近年申請者らにより小スケールのPAを多数用いることにより, 表面に体積力分布を与える方法が提案されている. 本研究では高速流の境界層制御を念頭に置き, 3次元境界層の速度プロファイルを任意に制御するためのPA適用手法とその最適化手法について知見を得ることを目的とする.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
計算コストが高い大規模な3次元流体解析と空力設計を行うためにはスーパーコンピュータの演算能力が必要である. またJAXA JSS3は空力解析ツールの利用環境が整っており研究に最適である.
今年度の成果
今年度は, 昨年度構築した最適設計手法の応用範囲拡張と実問題への適用性検証を行った. 当初計画においては後退翼上境界層制御に対するプラズマアクチュエータ(PA)の最適化を予定していたが, 最適設計におけるPAの実装手法の検討に時間を要したため, 設計手法の検証として, 流れの変化が顕著で解探索が容易かつ設計変数の自由度が高いブラフボディ問題を対象とした. 最適設計は二次元および三次元の両方について行い, ブラフボディに設置する流体制御デバイスの形状を最大24個の設計変数を用いてNURBSによる自由曲面として定義し, 抗力最小化問題を解いた. 三次元計算においては, 約2000万点規模の格子をPointwiseで生成し, FaSTARを用いてRANS解析を実施した. 最適設計はEGOおよびEGO-MAsを用い, 昨年度の特徴量抽出結果に基づいて設計空間を縮約した. 二次元解析では流体制御デバイスの設計領域をさまざまに変更した条件で最適設計を実施し, 設計領域に対する性能の依存性を調べた. これらの知見を踏まえ, 本研究で開発した手法により複雑形状の空力最適化が効率的に行えることを示した.
図1は二次元最適設計により得られた抵抗最小の流体制御デバイス形状の例である. 0.1x – 0.5xは基準スケールに対する設計領域の縮小率を示しており, 例えば0.1xの場合, 全幅の3%が最大フェアリング幅である. 図2は対応する流体制御デバイス付きブラフボディ周りの流れのマッハ数分布および流線である. 剥離抑制による抗力低減を達成するためのデバイスの最小サイズおよび各サイズでの形状的特徴に関する知見は, 三次元設計に活用された. 本対象は最適設計手法の検証に適しており, 今後も継続的に活用する. さらに, 本研究で得られた知見を基に, 主目的であるプラズマアクチュエータと流体制御デバイスを複合した新たな流体制御コンセプトの提案と最適設計, および風洞試験による実証を目指して研究を進める.
成果の公表
-口頭発表
中川巧, 井藤壮悟, 友川健吾, 松野隆, “商用車前方に設置する剥離抑制デバイスの設計探査,”
日本機械学会中国四国支部第63期講演会, No.255-1, 徳島, 2025, 07C3.
-ポスター
中川巧, “数値計算を用いたブラフボディ前方角部に設置する空気抵抗低減デバイスの最適化,” 航空宇宙流体科学サマースクール2024, 東北大学, 2024.
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 12 - 1000
- 1ケースあたりの経過時間: 8 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.02
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
TOKI-SORA | 252399.75 | 0.01 |
TOKI-ST | 22945.27 | 0.02 |
TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-LM | 4075.14 | 0.29 |
TOKI-TST | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 163.33 | 0.11 |
/data及び/data2 | 7963.00 | 0.04 |
/ssd | 0.00 | 0.00 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
---|---|---|
ISVソフトウェア(合計) | 390.12 | 0.27 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)