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将来輸送システムの研究(空気吸い込み式輸送システム)

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)

報告書番号: R24JG3205

利用分野: 研究開発

PDF(はここからダウンロード)

  • 責任者: 南里秀明, 研究開発部門第四研究ユニット
  • 問い合せ先: 高橋 俊(takahashi.shun@jaxa.jp)
  • メンバ: 福井 正明, 長谷川 進, 磯野 達志, 伊藤 大樹, 井上 拓, 小寺 正敏, 古賀 勝, 加藤 悠之, 宗像 利彦, 永田 貴之, 大西 陽一, 小川 哲司, 田野 貴史, 富岡 定毅, 高橋 政浩, 高橋 俊

事業概要

宇宙輸送システムの大幅な低コスト化のために, 再使用可能なシステムの研究開発が世界的に取り組まれている. 本事業では, 大気中の空気を酸化剤とすることで高効率な再使用が期待できる空気吸い込み式複合サイクルエンジンを搭載した輸送機の実用化に向けて, 鍵となる関連技術の研究開発を行う.

参照URL

なし

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

空気吸い込み式の複合サイクルエンジンを搭載した機体を検討する際の課題として, 以下の点が挙げられる. 1)離陸時の亜音速から超高速域までの様々な気流条件での飛行を実現する空力特性. 2)機体とエンジンの一体化による統合設計の必要性. 3)空力加熱への耐熱性の高精度な評価. したがってこれらを設計するためのツールとして3次元CFDの活用が必要不可欠であり, 数多くのCFDを効率良く実行するためにスパコンが必要となる.

今年度の成果

(1) 将来型の空気吸い込み式輸送システムにおいて想定される機体形状について, 多様な飛行条件に対する解析を行うための検討を行った. その上で, 30以上の機体形状について, 1機体につき162条件(マッハ数6条件, 迎角9条件, 横滑り角3条件)に対してFaSTARのEuler解析によって空力解析を行い, 性能マップを評価した. 図1は, 複合サイクルエンジンを配置する流路を閉めた場合(close)と開けた場合(open)の揚力係数と抗力係数を, マッハ0.3から6.0まで, 迎角を-10degから+20degまで解析して比較した結果である. 抗力係数を比較すると, 速度が上がるにつれて流路の開閉の影響が大きくなっていることが確認された.

(2) 宇宙航空研究開発機構は, 極超音速燃焼飛行試験を2022年に実施した. 目的は, マッハ6程度で飛行する機体RD1でエチレン燃料を燃焼させ, 実際の飛行条件下での燃焼状態を探ることであった. 試験機は小型ロケットS-520によって弾道飛行軌道に投入され, 落下中にマッハ数に達したところで試験を実施した. その際, 試験機表面に設置されたADS (Air Data Sensing) Systemから飛行状況を把握することは, 非常に重要な課題である. 極超音速域でのピトー管の使用は, 空力加熱の観点から困難である. 本研究では機械学習を用いて飛行状態を把握するアルゴリズム等を開発した. 図2はその際に用いた空力解析結果の一例である.

(3) 空気吸い込み式エンジンを搭載した機体では, 高温部の冷却に再生冷却を用いることも検討されており, 条件によっては燃料が遷臨界から超臨界状態に至る可能性も示唆されている. これらの条件では熱物性の変化が強い非線形性を有するため, しばしば不安定な流動様式を示すことが報告されている. 図3は炭化水素燃料が遷臨界条件で加熱された2次元キャビティ流れの例を示しており, 解析においても不安定性が発生することが確認された.

Annual Report Figures for 2024

図1: 複合サイクルエンジン搭載機モデル形状の吸気口開閉時の空力解析結果

 

Annual Report Figures for 2024

図2: RD1 の供試体が落下していく時のマッハ数分布の一例

 

図3(ビデオ): 超臨界メタンの2次元加熱壁面キャビティ流れの不安定化現象

成果の公表

-査読なし論文

(1) Hasegawa, S. and Tani, K., "Comparison of Numerical Results with Aerodynamic Experimental Data for JAXA's Experimental Vehicle for Hypersonic Flights," AIAA Scitech 2025, AIAA 2025-1335, 2025.

(2) Takahashi, S., Takegoshi, M., Kato, K., Isono, T., Yatsuyanagi, S., Tomioka, S. and Kubosaki, K., "Numerical Analysis of Fuel Supply System of Scramjet Engine", AIAA Scitech 2025, AIAA 2025-0752, 2025

-口頭発表

(1) 長谷川進, "ADSを用いた飛行状態推定法の研究, ", 第56回流体力学講演会/第42回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム, 2024年7月

(2) 高橋俊, 竹腰正雄, 加藤周徳, 磯野達志, 八柳秀門, 富岡定毅, 久保﨑滉太, "スクラムジェットエンジンの燃料供給ラインの過渡解析手法の開発", 第56回流体力学講演会/第42回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム, 2024年7月

(3) 長谷川進, "統計的機械学習を応用した極超音速飛行実験における飛行状態評価, ", 機械学会年会, 2024年9月.

(4) 高橋俊, 八柳秀門, 磯野達志, 小野寺卓郎, 竹腰正雄, 富岡定毅, "不安定流動現象の予測に向けた臨界点近傍での炭化水素の流れの数値解析", 第38回数値流体力学シンポジウム, 2024年12月

(5) 加藤悠之, 佐々木大輔, 高橋俊, 竹腰正雄, "スペースプレーン設計に向けたFaSTARによる広い速度域に対する空力解析の基礎検討, " 日本航空宇宙学会北部支部2025年講演会ならびに第6回再使用型宇宙輸送系シンポジウム, 2025年3月

-その他

長谷川進, 谷香一郎:特願2024-210624 機械学習を用いたADSによる飛行状態推定法発明

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: 非該当
  • プロセス並列数: 92 - 2496
  • 1ケースあたりの経過時間: 10 時間

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 1.19

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 30635937.45 1.40
TOKI-ST 129188.41 0.13
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 23.86 0.01
TOKI-LM 1513.46 0.11
TOKI-TST 661.53 0.01
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 506.05 0.34
/data及び/data2 82114.79 0.39
/ssd 7512.67 0.40

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 21.63 0.07

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 5566.87 3.80

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)