圧力・温度・位置・変形量同時計測に基づく非定常空気力学現象の解明と高効率制御
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)
報告書番号: R24JCMP19
利用分野: 競争的資金
- 責任者: 中北和之, 航空技術部門
- 問い合せ先: 小島良実(kojima.yoimi@jaxa.jp)
- メンバ: 阿部 晃大, 今井 雅人, 小西 晃平, 宮本 一熙, 中北 和之, 小島 良実, 小椋 圭大, 菅原 瑛明, 斉藤 光祐, 辻村 一真, 竹内 諄育, 田辺 安忠, 谷田部 隼輔
事業概要
翼周りの流れを対象とした圧力・温度・位置・変形量同時計測法を確立し, その手法を用いた弾性変形, 移動を伴う翼における非定常空気力学現象の解明, 航空機離着陸時に問題となる風切り音を抑制する高効率制御法の検討を進める.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
微小な非定常空気力学現象をCFDによって高忠実に再現するためには高密度な格子が必要であり, 生産されるデータサイズは膨大となる. よって, より大きな計算資源と高度なコンピュータが不可欠であるためJSSを利用する.
今年度の成果
本年度は, TEノイズのCFDによる現象解明および, ヘリブレード風洞試験データを用いたCFD解析技術の確立に関する研究に関する数値解析を行った.
NACA0012翼回りから発生するTEノイズ(翼後縁ノイズ)について, FaSTARを用いた解析解と風洞試験のギャップ解消を試みた. 開放型風洞における流れの歪曲を考慮した有効迎角を用いて, 3次元CFD解析を行ったところ(図1), 翼表面における遷移位置が実験に近づき, 結果的に翼圧力面におけるスペクトルの実験予測精度が向上した. また, データ同化をFaSTARに適用した解析を行った. データ同化は風洞試験の情報を数値解析に導入することで, 予測精度を向上させる技術である. 本研究では, 逐次型データ同化手法であるアンサンブルカルマンフィルタを適用し解析をおこなった. その結果, TEノイズ発生状態における圧力面側翼近傍について実験予測精度が定性的に改善された. これらはTEノイズの高忠実度解析手法確立に大きく貢献する.
ヘリコプタブレード解析向けに, 風洞試験で計測したブレードの変形形状を用いたCFD解析を行うプラットフォームを構築した. 実証計算として, 風洞実験により得られたブレード上境界層遷移位置と, 計算により予測される境界層遷移位置を比較し, 現状の遷移モデルの課題点抽出を行なった. ここで開発した手法により, 移動変形を伴うブレードに対して, 実験と計算で流れ場の定量的な評価が可能になった.
成果の公表
-査読付き論文
K. Konishi, K. Saito, K. Takamura, H. Sugawara, K. Nakakita, M. Kameda, "CFD Analysis of UH-60A Rotor Blades in Hover Using an Integrated Platform for Wind Tunnel Tests and Numerical Simulations," International Journal of Computational Fluid Dynamics, 2025 (accepted)
-口頭発表
1. 斉藤 光祐, 今井 雅人, 小西 晃平, 高村 洸大, 菅原 瑛明, 田辺 安忠, 中北 和之, 亀田 正治 (2024) "stereo-DICによるヘリコプタブレードモデルの変形量計測," 第56回流体力学講演会/第42回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム (2024年7月3日, カクイックス交流センター, 鹿児島市山下町), 1B04.
2. 小西 晃平, 斉藤 光祐, 今井 雅人, 菅原 瑛明, 田辺 安忠, 亀田 正治 (2024) "変形計測データを用いたロータブレードまわり流れの空力弾性解析," 第56回流体力学講演会/第42回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム (2024年7月3日, カクイックス交流センター, 鹿児島市山下町), 1B05.
3. 阿部 晃大, 小西 晃平, 小島 良実, 亀田 正治 (2024) "データ同化によるTEノイズを伴う翼周り流れの再構成," 第56回流体力学講演会/第42回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム (2024年7月4日, カクイックス交流センター, 鹿児島市山下町), 2A03.
4. 宮本 一熙, 小西 晃平, 小島 良実, 亀田 正治 (2024) "CFD解析による2次元翼周りTEノイズの定量評価," 第56回流体力学講演会/第42回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム (2024年7月3日, カクイックス交流センター, 鹿児島市山下町), 1C12.
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 1 - 8640
- 1ケースあたりの経過時間: 591 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 1.37
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
TOKI-SORA | 25382048.23 | 1.16 |
TOKI-ST | 3586839.02 | 3.68 |
TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-LM | 30532.81 | 2.20 |
TOKI-TST | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 2497.80 | 1.68 |
/data及び/data2 | 213677.21 | 1.02 |
/ssd | 11102.98 | 0.59 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 17.59 | 0.06 |
---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
---|---|---|
ISVソフトウェア(合計) | 666.34 | 0.46 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)