ターボポンプ解析技術
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)
報告書番号: R24JG3214
利用分野: 研究開発
- 責任者: 清水太郎, 研究開発部門第三研究ユニット
- 問い合せ先: 根岸 秀世(negishi.hideyo@jaxa.jp)
- メンバ: Ashvin Hosangadi, 雨川 洋章, 大門 優, 福田 太郎, 藤原 大典, 深澤 修, 伊藤 浩之, 根岸 秀世, 中島 健賀, 大野 真司, 外山 雅士, 鵜飼 諭史, 山本 姫子, 山本 啓太, Andrea Zambon
事業概要
ターボポンプは液体ロケットエンジン開発においてコストや期間, リスクの観点で依然としてボトルネックなコンポーネントである. また, ターボポンプはそれ自体がポンプ, タービン, 軸受, 軸推力バランス機構, シール機構等のサブコンポーネントで構成される複雑なシステムであり, ターボポンプシステム全体を評価できる解析技術は世界的にも存在しない. またサブコンポーネントレベルの数値シミュレーション技術自体も, 予測精度が低いため試験による設計妥当性評価が必須となる.
本研究では, ターボポンプに係る数値シミュレーション技術の予測精度を高めつつ, ターボポンプシステム全体の評価を可能とする解析技術を目指す. その解析技術の活用により, 試験削減・代替を可能として今後のロケットエンジン開発をより低コスト, 短期間で実現可能となる. また, ロケットエンジンのポンプやタービンは, 一般産業界のものより小型で高速回転など極限環境で使われるために効率が低いことが知られている. 近年ではAdditive manufacturing技術の進展により, 従来では不可能であった形状の製品開発も可能となってきており, 本研究で構築するターボポンプ解析技術を活用することで, 革新的な高効率ターボポンプの設計実現を目指す.
参照URL
「数値シミュレーション技術|第三研究ユニット(旧 情報・計算工学センター)」参照.
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
・JAXAの技術でしか実現できない計算精度, 現象忠実度が高い大規模解析を可能とすること
・JAXAにおけるロケット開発の中でタイムリーに解析を実施し, 限られた期間内に結果を多数提示すること
・機微情報となるロケット関連情報をJAXA内のみで閉じて扱えること
今年度の成果
ポンプ解析技術については, ロケットエンジンの広範囲作動で問題となり得るキャビテーション不安定現象(キャビテーションサージや旋回キャビテーション)に関連して, 詳細数値シミュレ―ション技術の高度化を進めた. 本年度は, キャビテーションを考慮したインデューサ詳細流れ場の大規模Larget Eddry Simulation(LES)を実施し, 従来のRANS解析では再現できない逆流渦キャビテーションを精度よく予測できることを確認した(図1).
タービン解析技術については, LE-9の開発課題と認識されたタービンフラッタに関連して, Unsteady RANS解析をベースとして構造から流体への片方向連成CFD技術を構築した. Hannover大で実施された1.5段軸流コンプレッサを基礎検証対象として, 片方向流体-構造連成解析を実施し, フラッターの発生判別の指標となる空力減衰比について, 試験結果の傾向をおおよそ再現した. (図2, 3)
成果の公表
-査読なし論文
山本啓太, "ロケットエンジン用インデューサのキャビテーションサージ予測技術構築に向けた取り組み," ターボ機械, 第53巻第03号, March 2025.
-口頭発表
1) 山本啓太, 鵜飼諭史, 島垣満, 川崎聡, 根岸秀世, "非定常PIV計測によるロケットエンジン用インデューサの流れ場特性評価," ターボ機械協会第90回総会講演会, 2024年5月17日.
2) Keita Yamamoto, Satoshi Ukai, Mitsuru Shimagaki, Satosh Kawasaki, Hideyo Negishi, "PIV Measurements for Transient Flow Characteristics in a Rocket Engine Turbopump Inducer," ASME FEDSM2024 Fluids Engineering Division Summer Meeting, 15th-18th July, 2024.
3) 山本啓太, 鵜飼諭史, 根岸秀世, 大野真司, 賀澤順一, Maroldt Niklas, "非定常RANS解析を用いた1.5段軸流コンプレッサの空力減衰比評価," ターボ機械協会第91回熊本八代講演会, 2024年9月17日.
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: FLAT
- プロセス並列数: 4800 - 20160
- 1ケースあたりの経過時間: 300 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 2.43
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
TOKI-SORA | 64815405.41 | 2.97 |
TOKI-ST | 221935.52 | 0.23 |
TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-LM | 12106.46 | 0.87 |
TOKI-TST | 864.04 | 0.02 |
TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 636.37 | 0.43 |
/data及び/data2 | 300637.62 | 1.44 |
/ssd | 4735.29 | 0.25 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 56.63 | 0.19 |
---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
---|---|---|
ISVソフトウェア(合計) | 1567.02 | 1.07 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)