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宇宙機の空力特性解析技術

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)

報告書番号: R23JTET44

利用分野: 技術習得方式

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  • 責任者: 稲富裕光, 宇宙科学研究所学際科学研究系
  • 問い合せ先: 高木 亮治(takaki.ryoji@jaxa.jp)
  • メンバ: 本多 秀輔, 中新井田 馨希, 高木 亮治, 佐藤 允

事業概要

火星における航空機探査の研究開発が世界的に行われており, 火星飛行機や火星ヘリコプタといった各種航空機形態が提案されている. 一方で, 近年の電動垂直離着陸機(eVTOL)の勃興により様々なeVTOL形態が模索され, 中でもプロペラや翼を飛行状況によって転換する転換型eVTOLは代表的なeVTOL形態の1つとなっている. 嶋らは「シンプルな機構でかつ空力的に高性能な飛行」の実現を目的とした新しい転換型有翼eVTOLであるPPB(Passive Pendulum Body)型eVTOLを提案し[1], 実験等によりその有効性を実証してきた. また, PPB型eVTOLにBox型の翼を用いるPPBB(Passive Pendulum Body with Box Wing)の研究により, Box翼の空力特性を明らかにしてきた[2].

加えて, 嶋らは静粛性と遷音速特性に優れたLoop形状プロペラの「Looprop」を提案し, 実験と数値解析によりその有効性を示している[3].

本研究では, PPB型eVTOL, PPBB型eVTOLおよびLoopropを対象として, 実験では測定が困難な, 流れ場に関する情報を数値解析を用いて取得し, 今後の設計において有用となる知見を得ることを目的としている.

[1] 嶋 英志, 堤 誠司, 藤本 圭一郎, 伊藤 浩, “Passive Pendulum Body:新しいeVTOL全機形態の提案”, 第 51 回流体力学講演会/第 37 回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム (2019).

[2] 嶋 英志, 米澤 宏一, 西田 涼馬, 佐藤 允, 堤 誠司, 藤本 圭一郎, “Box翼を持つマルチコプタの風洞試験”, 流体力学講演会/航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム 2020 オンライン (2020).

[3]Shima, E., Tsutsumi, S., Fujimoto, K., “Preliminary Study on Innovative Loop Propellers for Quiet eVTOL”, 8th Asian/Australian Rotorcraft Forum (2019).

参照URL

なし

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

JAXAで開発された流体解析ソルバー「rFlow3D」および「FaSTAR」を用いて, PPB型eVTOL, PPBB型eVTOLおよびLooprop周りの流れに関する大規模数値解析を行うため.

今年度の成果

PPB型eVTOLでは, プロペラが翼面の上方と下方において翼に近接した形で設置されている. 本解析では, プロペラが生み出す誘起流れが翼の空力特性に与える影響と, 翼の存在がプロペラの空力特性に与える影響を調べた. 計算対象は実験が行われたPPB型eVTOLのコンフィギュレーションに基づき設定し, 失速前迎角と失速後迎角の2つを対象にrFlow3Dを用いた解析を行った. 図1は失速前迎角および失速後迎角におけるプロペラ-翼周りの流れ場をQ値の等値面で可視化したものである. 失速前迎角では翼の上方と下方に設置した各プロペラからの翼端渦が明確に観察される. 一方, 失速後迎角では翼前縁からの剥離渦がプロペラと干渉している様子がわかる. 本数値解析より, プロペラの誘起流れが翼の空力特性に与える影響と, 翼の存在がプロペラの空力特性に与える影響に関する知見を得た.

Box型の翼(Box翼)を用いたPPBB型eVTOLの数値解析をFaSTARを用いて行った. 計算対象は, 実験が行われたPPBB型eVTOLのコンフィギュレーションに基づき設定しているが, Box翼の基礎特性を明らかにするため本解析ではプロペラは考慮していない. 図2はBox翼下翼側, Box翼上翼側および同条件における矩形翼における流線を可視化したものである. 矩形翼では翼端において明確な翼端渦が観察される一方, Box翼では本可視化においては明確な翼端渦は観察されなかった. このため, Box翼では通常の矩形翼に比べて誘導抗力が低減された. これらの数値解析結果より, Box翼の空力特性と流れ場に関する知見を得た.

eVTOLに関する数値解析に加えて, Loop型プロペラであるLoopropに関する数値解析をrFlow3Dを用いて行った. 図3はLoop型プロペラを3枚有した3Loopropの流れ場である. 本数値解析結果より, 前方ブレードと後方ブレードの空力特性の差, Loopropにおける翼端渦の形成メカニズム等の知見を得た.

Annual Reoprt Figures for 2023

図1: PPB型eVTOLにおけるプロペラ-翼干渉の流れ場(左図:失速前迎角, 右図:失速後迎角)

 

Annual Reoprt Figures for 2023

図2: Box翼および矩形翼における翼端渦

 

Annual Reoprt Figures for 2023

図3: 3Loopropの流れ場

 

成果の公表

なし

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: 非該当
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: 1
  • 1ケースあたりの経過時間: 480 時間

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.04

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 902075.99 0.04
TOKI-ST 10690.72 0.01
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 0.00 0.00
TOKI-TST 3.17 0.00
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 580.08 0.48
/data及び/data2 65078.46 0.40
/ssd 5406.15 0.51

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 2.67 0.01

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 514.88 0.23

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)