「富岳」成果創出加速プログラム 航空機デジタルフライトが拓く機体開発DXに向けた実証研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)
報告書番号: R23JCMP30
利用分野: 競争的資金
- 責任者: 稲富裕光, 宇宙科学研究所学際科学研究系
- 問い合せ先: 高木亮治(takaki.ryoji@jaxa.jp)
- メンバ: 前山 大貴, 淺田 啓幸, 久谷 雄一, 河合 宗司, 今井 和宏, 松村 洋祐, 高木 亮治
事業概要
航空機全機周りの実フライト条件での高忠実LES解析による高精度空力予測の実現
参照URL
http://www.klab.mech.tohoku.ac.jp/fugaku/index.html 参照.
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
最終ターゲットである「富岳」と同じアーキテクチャを有するJSSを用いることで, 効率良くプログラム開発が可能であるため.
今年度の成果
高B/Fを要求する流体解析では最近の低B/F計算機において性能を出すことが困難になっている. 特に, メモリ性能を使い切るためには連続アクセスかつ長いループ長が必要であるが, 流体計算で一般的なステンシル計算では, いくつかの問題委がありメモリアクセス性能を使い切れていない. そのため, 今後ますます悪化するB/F環境に対応するため, ステンシル計算からの脱却を目指し, 基底関数ベースの手法の性能評価を実施した. ここではFR法を採用し, 階層型等間隔直交構造格子に対して, 従来のステンシル計算とFR法との比較を行った.
図1に比較結果の一例としてA64FX CPUの結果を示す. OpenMPを用いたスレッド並列を適用するループに対して, 「cl」がセルループへの適用, 「sl」は内点(Solution Point:SP)ループへの適用を示す. 「FD」が従来の差分法(ステンシル計算)の結果, 「3D, 1D, 4D」がFR法の結果である. ここで, 「3D,1D,4D」であるが, プログラムのデータ・ループ構造の違いで, SPは一般的には空間3次元であり, SPを内包するセルを合わせて4次元・4重ループになる. これをセルの1重ループ+SPの3重ループで実装する「3D」をベースに, SPの3重ループを1重化したものが「1D」, SPの3重ループとセルの1重ループを1重化したものが「4D」である. 図よりSPが小さい領域(FR法で利用されている領域)では差分法(FD)よりもFR法, 特に4Dが最速であることがわかる. 一方, SPが大きい領域(FR法では超高次精度を意味する)では従来の差分法(FD)が速いこともわかる. この様にSPの値やデータ・ループ構造による性能特性の違いが取得できた. なお, SPを大きくすることでFR法はより高次精度の計算となるが, 差分法では精度は変わらない. こういった違いも含めてより詳細な比較を行う予定である.
成果の公表
-査読付き論文
高木亮治, “計算格子の完全自動生成による流体解析と計算手法の検証”, 航空宇宙技術, Vol.22, pp. 79-93, 2023, DOI: 10.2322/astj.22.79
-口頭発表
高木亮治, “埋め込み境界法における保存則について”, 第55回流体力学講演会/第41回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム, 3C04, 7/14, 2023
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 1 – 40
- 1ケースあたりの経過時間: 50 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.14
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
TOKI-SORA | 3880322.30 | 0.18 |
TOKI-ST | 14102.96 | 0.02 |
TOKI-GP | 62.55 | 0.00 |
TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-LM | 247.67 | 0.02 |
TOKI-TST | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 495.58 | 0.41 |
/data及び/data2 | 23605.46 | 0.15 |
/ssd | 1636.15 | 0.15 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 2.99 | 0.01 |
---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
---|---|---|
ISVソフトウェア(合計) | 46.19 | 0.02 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)