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DBDプラズマアクチュエータを用いた流れ制御技術の高度化に関する研究

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)

報告書番号: R23JACA26

利用分野: JSS大学共同利用

PDFはここからダウンロード

  • 責任者: 浅田健吾, 東京理科大学
  • 問い合せ先: 浅田 健吾(asada@rs.tus.ac.jp)
  • メンバ: 浅田 健吾, 小川 拓人

事業概要

ロケットや航空機, 自動車といった様々な輸送機周りの流れを, プラズマ放電を利用したDBDプラズマアクチュエータと呼ばれるデバイスを用いることで制御し, 高効率で堅牢な輸送機システム開発を実現する. 時々刻々と変化する流れに対応するため, 本事業では3次元非定常流れのシミュレーションを実施し, 流れ場の分析を行うことでフィードバック制御をはじめとした流れの制御手法の高度化を目指す.

参照URL

なし

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

大規模な3次元非定常流れシミュレーションをJAXAスーパーコンピュータで計算実績が豊富な圧縮性流体解析ソルバLANS3Dを用いて実施可能なため.

今年度の成果

これまで本事業では, DBDプラズマアクチュエータ(PA, 図1)を用いた流れの剥離制御技術を確立するために, NACA0015翼周り流れ(レイノルズ数:63,000)に対する高忠実なシミュレーションを行うことで迎角に応じてPAの駆動方法を変化させるフィードバック制御モデルの提案と性能検証を行ってきた. また, PAのバースト駆動(周期的にON/OFFを切り替える駆動法)において, 剥離制御に効果的であるとされている無次元バースト周波数F+はこれまで1や6というような値だったのに対して, 10以上の比較的高い周波数も失速前の低迎角において有効であることがわかってきた.

そこで, 令和5年度はこのような高い周波数を用いたバースト駆動が大規模に剥離する高迎角においても剥離制御に有効であるかどうかを確かめるために高忠実シミュレーションを行った. PAは翼前縁から コード長の5%位置に設置し, 迎角は失速迎角以降の14度とした. 無次元のバースト周波数はこれまで効果的であるとされてきた1や6に加えて, より高い周波数の18や30を検討した.

図2に制御を行った際のL/Dの推移をバースト周波数ごとに示す. 横軸は無次元時間Tである. 過去の研究においてF+=1は高迎角において, 揚力をある程度高く維持できるが, 抗力も大きくなるためにL/Dを高く維持できないことが知られている. また, F+=6は失速迎角付近の12度においては効果的に剥離を抑制することができるが, 図2が示すように14度のような更に高い迎角になると流れの付着を維持するが難しくなり, L/Dも時間経過とともに低下することがわかっている. 一方で今年度新たに計算を行った比較的高いバースト周波数, 特にF+=15, 18, 20 を用いたケースはL/Dを高く維持できていることがわかる. また, バースト周波数は高ければ高いほど良いというわけではなく, F+=30のケースではL/Dを向上することができていない.

図3に特徴的なケースの瞬間流れ場を示す. 等値面は速度勾配テンソルの第二不変量にコード方向速度で色付けしたもので, 渦構造を表している. F+=6のケースはT=5において剥離は抑制されており, 乱流へと遷移した流れが翼に沿って流れているのがわかる. しかしながら, T=11においては図3に示すように翼後縁から次第に流れの剥離が進行し, 大規模な剥離へと至る. 一方で, F+=18のケースではT=14においても流れは翼面に沿っており, 流れの付着状態を維持できている. このような違いが生じる理由をF+=6 (T=5)と18 (T=14)の流れ場を比較することで考えてみる. F+=6ではコード長の10%付近で流れは複雑な渦構造をもつ乱流へと遷移しているが, F+=18ではPAによって誘起されるスパン方向(y軸方向)の渦構造はコード長の20%付近まで維持されている. このようにスパン方向の渦が剥離を維持するのに重要な役割を果たしていることが予想されるが, さらに高い周波数であるF+=30になるとF+=6に比べて明確にスパン方向の渦が維持されているにもかかわらず, 流れは上流から剥離している. これらの事実からスパン方向の渦の維持と乱流へと遷移するタイミングのバランスが重要であることが予測されるが, より詳細なメカニズムは今後議論したいと考えている.

以上に示したように令和6年度は迎角14度のNACA0015翼流れの高忠実シミュレーションを行うことで, F+=18のバースト駆動が剥離制御に有効であり, スパン方向の渦が剥離抑制に重要な役割を担っている可能性があることを示した.

Annual Reoprt Figures for 2023

図1: DBDプラズマアクチュエータの概略図

 

Annual Reoprt Figures for 2023

図2: 揚抗比の時間履歴

 

Annual Reoprt Figures for 2023

図3: 瞬間流れ場

 

成果の公表

-査読なし論文

T. Ogawa, K. Asada, A. Yakeno, K. Fujii, “Revisiting burst drive conditions of DBD plasma actuator for airfoil flow control”, AIAA SciTech2024, Orlando, FL, U.S.A., Jan. 2024.

小川拓人, 浅田健吾, 藤井孝藏, “DBDプラズマアクチュエータを用いた翼流れ剥離制御のバースト駆動条件の再考”, 第55回流体力学講演会, 東京, 2023年7月.

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: 自動並列
  • プロセス並列数: 79
  • 1ケースあたりの経過時間: 40 時間

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.01

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 358295.52 0.02
TOKI-ST 0.00 0.00
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 0.00 0.00
TOKI-TST 0.00 0.00
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 40.00 0.03
/data及び/data2 16558.09 0.10
/ssd 0.00 0.00

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 0.00 0.00

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)