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ターボポンプ解析技術

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)

報告書番号: R23JG3214

利用分野: 研究開発

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  • 責任者: 清水太郎, 研究開発部門第三研究ユニット
  • 問い合せ先: 鵜飼 諭史(ukai.satoshi@jaxa.jp)
  • メンバ: 雨川 洋章, 大門 優, 福田 太郎, 藤原 大典, 深澤 修, Ashvin Hosangadi, 根岸 秀世, 中島 健賀, 大西 陽一, 大野 真司, 外山 雅士, 鵜飼 諭史, 山本 啓太, Andrea Zambon

事業概要

ターボポンプは液体ロケットエンジン開発においてコストや期間, リスクの観点で依然としてボトルネックなコンポーネントである. また, ターボポンプはそれ自体がポンプ, タービン, 軸受, 軸推力バランス機構, シール機構等のサブコンポーネントで構成される複雑なシステムであり, ターボポンプシステム全体を評価できる解析技術は世界的にも存在しない. またサブコンポーネントレベルの数値シミュレーション技術自体も, 予測精度が低いため試験による設計妥当性評価が必須となる.

本研究では, ターボポンプに係る数値シミュレーション技術の予測精度を高めつつ, ターボポンプシステム全体の評価を可能とする解析技術を目指す. その解析技術の活用により, 試験削減・代替を可能として今後のロケットエンジン開発をより低コスト, 短期間で実現可能となる. また, ロケットエンジンのポンプやタービンは, 一般産業界のものより小型で高速回転など極限環境で使われるために効率が低いことが知られている. 近年ではAdditive manufacturing技術の進展により, 従来では不可能であった形状の製品開発も可能となってきており, 本研究で構築するターボポンプ解析技術を活用することで, 革新的な高効率ターボポンプの設計実現を目指す.

参照URL

https://stage.tksc.jaxa.jp/jedi/simul/index.html 参照.

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

・JAXAの技術でしか実現できない計算精度, 現象忠実度が高い大規模解析を可能とすること

・JAXAにおけるロケット開発の中でタイムリーに解析を実施し, 限られた期間内に結果を多数提示すること

・機微情報となるロケット関連情報をJAXA内のみで閉じて扱えること

今年度の成果

FY2023は, 特に予測が難しく, かつターボポンプ開発において課題となり得る, ターボポンプ非定常現象に注力してCFD技術の高度化を実施した.

タービンについては, LE-9の開発課題と認識されたタービンフラッタについての解析技術を取得するため, 構造から流体への片方向連成CFD技術を試作し, 実機で発生したフラッタの再現解析を実施した. また流体構造双方向連成解析に着手し, 水中翼フラッタを例に基礎検証を実施した. (図1)

ポンプについては, ロケットエンジンの広範囲作動で問題となり得るキャビテーション不安定現象(キャビテーションサージや旋回キャビテーション)に対して, 詳細数値解析技術高度化のため, 大規模LESによるインデューサ詳細流れ場解析を実施した. その結果, インデューサに生じるキャビテーション不安定現象の要因の1つである逆流の正確な予測を実現した(図2). また, CFDを用いたキャビテーション特性パラメータ同定を実施し, キャビテーションサージの発生範囲や周波数をより正確に予測できる新たなモデルを構築した.

ここで構築された解析技術は, H3ロケット1段エンジンLE-9やCALLISTO RSR2エンジンのターボポンプ開発等に活用されている.

Annual Reoprt Figures for 2023

図1: 水中翼フラッタ流体構造双方向連成による渦構造への影響.

 

Annual Reoprt Figures for 2023

図2: LES解析とPIV試験によるインデューサ上流の流れ場比較

 

成果の公表

-査読付き論文

Keita Yamamoto, Satoshi Ukai, Taro Fukuda, Satoshi Kawasaki, Hideyo Negishi “Establishment of Prediction Model for Cavitation Surge Frequency and Onset in an Inducer Considering Dynamic Characteristics of Cavitation Compliance and Mass Flow Gain Factor”, 2023, ASME Journal of Fluids Engineering, Vol.145, DOI: https://doi.org/10.1115/1.4062377

-招待講演

山本啓太, 水車/ポンプに生じるキャビテーション現象の予測技術構築, 2023, ターボ機械協会創立50周年記念ワークショップ

山本啓太, ロケットエンジン用ターボポンプに生じる非定常現象解析技術構築, 2024, 日本航空宇宙学会関西支部 第490回航空宇宙懇談会

-口頭発表

Keita Yamamoto, Satoshi Ukai, Mitsuru Shimagaki, Satoshi Kawasaki, Hideyo Negishi “Research Activities on Numerical and Experimental Studies of Cavitation Instabilities in the Rocket Engine Turbopump”, 2023, Aerospace Europe Conference 2023 – 10th EUCASS – 9th CEAS

山本啓太, 鵜飼諭史, 西村凌, 濁川尭明, 宮川和芳, 根岸秀世 “ターボポンプタービンのインレットディストーションに関する研究”, 2023, ターボ機械協会第89会学術講演会

鵜飼 諭史, 山本 啓太, 根岸 秀世 “ロケットエンジン用タービン解析技術の現状と今後の展望”, 2023, ターボ機械協会第89会学術講演会

Keita Yamamoto, Satoshi Ukai, Robson DosSantos, Tobias Traudt, Hideyo Negishi “Numerical simulations of the LUMEN turbine at nominal and throttling conditions”, 2023, IGTC2023 Kyoto

S. Ukai, K. Yamamoto, H. Negishi, T. Irie and K. Miyagawa, “Two-Way Coupled FSI Simulation of Flat Plate Hydrofoil Flutter”, 2023, IGTC2023 Kyoto

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: FLAT
  • プロセス並列数: 4800 – 20160
  • 1ケースあたりの経過時間: 300 時間

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 1.40

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 36683013.09 1.66
TOKI-ST 258732.75 0.28
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 11865.02 0.90
TOKI-TST 3519.39 0.06
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 21760.10 61.03

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 553.14 0.46
/data及び/data2 191497.52 1.18
/ssd 4110.24 0.39

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 25.88 0.09

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 1863.39 0.84

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)