複雑流の数値解析技術の研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)
報告書番号: R23JDA201J02
利用分野: 航空技術
- 責任者: 藤井謙司, チーフエンジニア室
- 問い合せ先: 阿部 浩幸(abe.hiroyuki@jaxa.jp)
- メンバ: 阿部 浩幸, 松山 新吾, 溝渕 泰寛, 南部 太介
事業概要
航空宇宙分野における流体シミュレーションの対象は航空機・宇宙機周りの乱流や化学反応をともなう流れ場である. また, ガスタービンエンジン・ロケットエンジン燃焼器などのシミュレーションでは複雑な形状を取り扱わなければならないことも多い. 本研究ではそのような多様な物理現象や複雑な形状を高精度・効率的に解析することが可能な数値解析技術を確立することを目指す.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
本研究では Direct Numerical Simulation (DNS) と Large Eddy Simulation (LES) による乱流解析が主要な手段であるため, 必然的に三次元非定常解析を実施しなければならない. また, 燃焼流などの解析においては化学反応により生じる多数の化学種に関する支配方程式を解かなければならない. このような解析は計算コストが非常に高く, スーパーコンピュータを使用した解析が必須である.
今年度の成果
平面乱流噴流のDNSデータベースを利用したアプリオリテストにより, SGS応力輸送方程式のモデリングを行い, LESの新たなSGSモデルを構築した. 構築したモデルにより, DNSの6倍粗い解像度の格子(格子点数で216分の1)を使用してRe=10,000の平面乱流噴流に対するLES解析を実施した. SGS応力輸送方程式モデルによるLESはDNSの速度場を非常に良く再現することを示した(図1).

図1: SGS応力輸送方程式モデルによるRe=10,000の平面乱流噴流に対するLES解析の結果. 瞬時の速度場(左図), および, 噴流中心に沿った時間平均速度場(右図)に関するLESとDNSの比較.
成果の公表
-査読なし論文
1) 松山 新吾, “えっ, そのSGSモデル, 使い方を間違っていませんか?”, 第55回流体力学講演会/第41回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム論文集, JAXA-SP-23-009, p.265-274, 2024.
-口頭発表
1) 松山 新吾, “えっ, そのSGSモデル, 使い方を間違っていませんか?”, 第55回流体力学講演会/第41回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム, 2023.
2) 松山 新吾, “SGS応力方程式モデルによる平面乱流噴流のLES”,日本流体力学会 年会2023, 2023.
3) 松山 新吾, “SGS応力方程式モデルによるRe=10^4の平面乱流噴流のLES”, 第37回数値流体力学シンポジウム, 2023.
4) 松山 新吾, “SGS 応力輸送方程式によるLESモデリング”, 第39回生研TSFDシンポジウム, 2024.
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 750 – 1500
- 1ケースあたりの経過時間: 10 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 1.08
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
TOKI-SORA | 29201399.41 | 1.32 |
TOKI-ST | 40391.64 | 0.04 |
TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-XM | 106.74 | 0.06 |
TOKI-LM | 1395.79 | 0.11 |
TOKI-TST | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 124.61 | 0.10 |
/data及び/data2 | 8913.71 | 0.05 |
/ssd | 984.08 | 0.09 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 30.01 | 0.11 |
---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
---|---|---|
ISVソフトウェア(合計) | 495.20 | 0.22 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)