GOSAT-2利用研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)
報告書番号: R23JR3501
利用分野: 宇宙技術
- 責任者: 久世暁彦, 第一宇宙技術部門衛星利用運用センター
- 問い合せ先: 菊地信弘(地球観測研究センター)(kikuchi.nobuhiro@jaxa.jp)
- メンバ: 橋本 真喜子, 木幡 賢二, 片岡 文恵, 菊地 信弘, 野口 英行, 塩見 慶, 須藤 洋志, 菅野 敦, 和田 盛哲, 吉田 武仁
事業概要
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」(GOSAT-2)が観測する高分解能スペクトルデータから二酸化炭素, メタンおよび一酸化炭素の大気中濃度を導出する. そのための導出アルゴリズムの開発, 検証および改善を行う.
参照URL
https://www.eorc.jaxa.jp/earthview/2020/tp200203.html 参照.
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
衛星観測データから温室効果ガス濃度を導出する処理を行うためにJAXAスーパーコンピュータを利用する. 1日分の観測データを処理するために, おおよそ100時間のCPUタイムを必要とする. 1ノードあたり12コアを持つプレポストシステムを同時に10ノード利用すると, 1日分の観測データがおよそ1時間で処理できる.
今年度の成果
我々はGOSATおよびGOSAT-2のレベル1データから主要な温室効果ガスである二酸化炭素とメタンの大気中濃度を導出するアルゴリズム(レベル2アルゴリズム)を開発している. 我々のレベル2アルゴリズムは短波長近赤外(SWIR)と熱赤外(TIR)の観測スペクトルを同時に利用し, 二酸化炭素とメタンの対流圏における濃度を鉛直2層まで導出するところが特徴である. また, SWIRが持つ偏光情報を利用することにより, エアロゾル補正の精度向上を図っていることも我々のアルゴリズムの特徴である. GOSATとGOSAT-2はほぼ同じスペックのセンサーを搭載しており, 同じレベル2アルゴリズムが適用できる. ただし, 2機の衛星データから同一の結果(二酸化炭素とメタンの濃度)を得るためにはセンサー特性を注意深く評価する必要がある.
前年度までの検討によって特に装置関数を最適価することにより, 温室効果ガス濃度の導出精度を大幅に改善することに成功し, GOSATとGOSAT-2から導出される二酸化炭素とメタンのカラム平均濃度が観測誤差の範囲で一致するようになった. そこで今年度ではGOSAT-2のレベル1データ(V210210)をJSS3上で処理し, 約5年分の二酸化炭素・メタン(および一酸化炭素)の全球濃度データを得た. また, 雲判別の手法を開発することによって品質管理されたデータをJAXA/EORCの研究プロダクト(バージョン3)として公開した. データはGOSAT-2が定常観測を開始した2019年2月から直近の2023年12月まで揃っている. なお, GOSATに対してはレベル1データ(V230231)を処理し, 2009年6月から2023年12月までの14年以上の長期データを公開している.
図1は2023年における二酸化炭素濃度の月平均分布を示している. 左列から順に1月, 4月, 7月, 10月である. 上段はカラム平均濃度(XCO2), 中段が対流圏下層濃度(XCO2_LT)である. 二酸化炭素の全球平均濃度は毎年4月に極大となることと, 濃度が高い領域は北半球の大陸部に集中していることが分かる. 対流圏下層の二酸化炭素は, 都市部だけでなくシベリア地方を含むユーラシア大陸北部でも高濃度になっていることが分かる. シベリア地方の二酸化炭素濃度は夏季になると急速に低下していく. カラム平均濃度と対流圏下層濃度を比較すると, 後者の方が二酸化炭素の吸収・排出源と空間的相関が高い. 下段は一酸化炭素のカラム平均濃度であるが, これは主として森林火災が発生している領域を反映している. アマゾン, アフリカ中央部, インドシナ半島などで毎年決まった時期に森林火災が発生している. これらの一酸化炭素濃度の高い領域と二酸化炭素の対流圏下層濃度が空間的相関を持っていることが分かる.
同様に, 2023年におけるメタン濃度の月平均分布を図2に示す. 上段がカラム平均濃度(XCH4), 下段が対流圏下層濃度(XCH4_LT)である. アフリカ中央部, シベリア地方, インドから中国にかけての帯状の地域にメタンの発生源があると考えられるが, これらも対流圏下層濃度との相関が高い.
一般的に大気輸送モデルを用いて温室効果ガス濃度から吸収・排出量を逆推定しようとする時, 輸送誤差が吸収・排出量の推定誤差要因の一つとなる. 吸収・排出源との空間的相関が高い対流圏下層濃度を用いれば輸送誤差の影響を低減できるため, 吸収・排出量の推定精度が向上する可能性がある. 現状のバージョン3アルゴリズムによって導出されるカラム平均濃度はGOSATとGOSAT-2とでほとんど差がないが, 対流圏下層濃度では系統的な差が見られる(図3, 4). 今後も改善を継続し, 二酸化炭素・メタンの吸収・排出量の推定精度改善に寄与していきたい.
成果の公表
-Web
https://www.eorc.jaxa.jp/GOSAT/GPCG/index_GOSAT2.html
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: 非該当
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 1
- 1ケースあたりの経過時間: 10 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.03
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
TOKI-SORA | 0.00 | 0.00 |
TOKI-ST | 212230.16 | 0.23 |
TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-LM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TST | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 0.00 | 0.00 |
/data及び/data2 | 102400.00 | 0.63 |
/ssd | 0.00 | 0.00 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 265.44 | 0.96 |
---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
---|---|---|
ISVソフトウェア(合計) | 0.00 | 0.00 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)