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海洋衛星データ同化システムの構築検討

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2022年2月~2023年1月)

報告書番号: R22JR2402

利用分野: 宇宙技術

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  • 責任者: 沖理子, 第一宇宙技術部門地球観測研究センター
  • 問い合せ先: 可知 美佐子(kachi.misako@jaxa.jp)
  • メンバ: 可知 美佐子, 大石 俊

事業概要

近年の衛星やアルゴフロートなどの観測網の発展に伴い, 水温・塩分・海面高度がより高頻度・高解像度で観測されるようになった. しかし, 衛星は雨域を観測できず, アルゴフロートの観測数も全球海洋内部の時空間変動を正確に捉えるほど十分ではない. データ同化はシミュレーションと観測を融合しながら, 欠損値のない精度の高い3次元の海洋場を再現できる. そこで, 本研究ではJAXA Supercomputer System Generation 3(JSS3)にて衛星・現場観測値を同化するアンサンブルカルマンフィルタを用いた海洋データ同化システムを構築し, 海洋解析プロダクトを作成することを目的とする.

参照URL

https://earth.jaxa.jp/ja/research/fields/ocean/index.html 参照.

https://www.eorc.jaxa.jp/ptree/LORA/index_j.html 参照.

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

海洋モデルを用いた高解像度アンサンブルシミュレーションおよびアンサンブルカルマンフィルタによるデータ同化の計算は非常に大規模な計算である. そのため, JSS3のような大規模計算設備を用いることで, アンサンブルカルマンフィルタを実装した海洋データ同化システムの計算が初めて可能となる.

今年度の成果

前年度までの成果により, アンサンブルカルマンフィルタを用いた海洋データ同化システムを用いて高精度の解析値を作成するためには, Incremental Analysis Update (IAU; Bloom et al. 1996), Relaxation-to-prior perturbation(RTPP;Zhang et al. 2004), Adaptive Observation Error Inflation(AOEI;Minamide and Zhang 2017)の3種類のスキームを組み合わせて適用させる必要があることを実証した(Ohishi et al. 2022a, b). そこで, 今年度は, 昨年度までの渦許容と呼ばれる0.25°の水平解像度のシステムを渦を解像する0.1°の水平解像度になるようシステムの高解像度化を実施し, 北西太平洋域および海大陸域で解析プロダクトを作成した.

既存の海洋再解析データセットJCOPE2M(Miyazawa et al. 2017)および観測データセットAVISO(Ducet et al. 2000)と作成した解析プロダクトLETKF-based Ocean Research Analysis(LORA)の精度を比較した. その結果, LORAの海面流は中緯度の黒潮・黒潮続流域でJCOPE2Mより, 海大陸域の赤道周辺でAVISOより高い精度であった. また, LORAの海面水温はJCOPE2Mより北西太平洋域ほぼ全域で高精度であった. しかし, LORAでは冬季にかけて沿岸域で顕著な高水温バイアスがあるため, 精度が著しく低下している問題があることが明らかになった.

以上から, 本研究で作成した解析プロタクトLORAは地球惑星科学研究に使用するにあたり十分な精度を持つといえる. 本研究成果は国際一流誌Ocean Dynamicsで出版された(Ohishi et al. 2023). また, 来年度は沿岸域の高水温バイアスの問題を低減するために, 使用している大気強制に関する感度実験を行う予定である.

Annual Reoprt Figures for 2022

図1: 2016-18年で平均した5°経度×5°緯度ビンでの漂流ブイに対する(a) LORA, (b) JCOPE2M, (d) AVISOの海面東西流の平均二乗偏差. (c) JCOPE2M [(e) AVISO]とLORAの平均二乗偏差の差分. (a)の等値線はLORA, (b)と(c)はJCOPE2M, (d)と(e)はAVISOの2016-18年で平均した海面高度を表している. 細(太)線の間隔は0.25(1)mである. 左図の右下に示した値は全領域および解析期間で時空間平均した平均二乗偏差である.

 

成果の公表

-査読付き論文

1. Ohishi, Shun, Tsutomu Hihara, Hidenori Aiki, Joji Ishizaka, Yasumasa Miyazawa, Misako Kachi, and Takemasa Miyoshi, 2022: An ensemble Kalman filter system with the Stony Brook Parallel Ocean Model v1.0, Geosci. Model Dev., 15, 8395-8410, doi: 10.5194/gmd-15-8395-2022

2. Ohishi, Shun, Takemasa Miyoshi, and Misako Kachi, 2022: An ensemble Kalman filter-based ocean data assimilation system improved by adaptive observation error inflation (AOEI), Geosci. Model Dev., 15, 9057-9073, doi: 10.5194/gmd-15-9057-2022

3. Ohishi, Shun, Takemasa Miyoshi, and Misako Kachi, 2023: LORA: a local ensemble transform Kalman filter-based ocean research analysis, Ocn. Dyn., doi: 10.1007/s10236-023-01541-3

-口頭発表

1. 大石俊, 三好建正, 可知美佐子, 「LETKF-based Ocean Research Analysis(LORA)の精度評価」, 海洋表層関連過程に関する分野間交流ワークショップ, 名古屋, 2022年7月

2. 大石俊, 三好建正, 可知美佐子, 「LETKF-based Ocean Research Analysis(LORA)の精度評価」, 第26回海洋データ同化夏の学校, 青森県, 2022年8月

3. 大石俊, 三好建正, 可知美佐子, 「LETKF-based Ocean Research Analysis(LORA)の精度評価」, 日本海洋学会2022年度秋季大会, 愛知県, 2022年9月

4. 大石俊, 三好建正, 可知美佐子, 「LETKF-based Ocean Research Analysis(LORA)の精度評価」, 日本気象学会2022年度秋季大会, 北海道, 2022年10月

5. 大石俊, 三好建正, 可知美佐子, 「LETKF-based Ocean Research Analysis(LORA)の精度評価」, 統計数理研究所 共同研究集会「宇宙地球環境の理解に向けての統計数理的アプローチ」, オンライン, 2023年2月

-ポスター

1. 大石俊, 三好建正, 可知美佐子, 「LETKF-based Ocean Research Analysis (LORA)の精度評価」, 第13回データ同化ワークショップ, 神戸, 2023年2月

-Web

https://earth.jaxa.jp/ja/earthview/2022/10/21/7342/index.html

https://www.eorc.jaxa.jp/ptree/LORA/index_j.html

-その他

大石俊, 理研研究奨励賞(桜舞賞) 受賞, 2023年3月

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: 自動並列
  • プロセス並列数: 48 – 512
  • 1ケースあたりの経過時間: 20 分

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.56

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 15377459.05 0.67
TOKI-ST 0.00 0.00
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 0.00 0.00
TOKI-TST 0.00 0.00
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 12.50 0.01
/data及び/data2 174205.00 1.34
/ssd 125.00 0.02

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 0.00 0.00

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2022年2月~2023年1月)