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火星ヘリコプターのローター空力特性に関する数値的研究

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2021年2月~2022年1月)

報告書番号: R21JACA41

利用分野: JSS大学共同利用

PDFはここからダウンロード

  • 責任者: 佐藤允, 工学院大学
  • 問い合せ先: 佐藤允, 工学院大学(msato@cc.kogakuin.ac.jp)
  • メンバ: 佐藤 允

事業概要

火星の洞窟, 縦孔探査を目的とした火星ヘリコプターの研究開発プロジェクトがJAXA宇宙研・東北大等が中心となって進められている. 火星の大気環境は地球と比べると密度が約1/100, 音速は約3/4であるため, 低レイノルズ数かつ高マッハ数でも高性能なヘリローターの開発が必要不可欠である. 現在, JAXA宇宙研大山研究室では, 火星大気を模擬した低圧環境におけるローター性能を実験的に測定する研究を進めている. しかし, 本実験は低圧タンク内で行われるため, ローター周りの流れについて調べることは極めて困難である. そこで本研究では実験と同様の条件でローター周り流れに関する数値解析を行うことにより, 流れ場の特性を明らかにすることを目的としている.

参照URL

なし

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

JAXAで開発された回転翼に関する流体解析ソルバー「rFlow3D」を用いた, 3次元回転翼周り流れに関する大規模数値シュミレーションを行うため.

今年度の成果

今年度は火星ヘリコプター「HAMILTON」[1]におけるローター周り流れの数値解析を行った. パラメータとして翼端マッハ数(Mtip)を変化させた. ピッチ角はトリム解析を行うことで推力係数(Ct)が一定となるようにした. 数値解析ソルバーにはJAXAで開発されたrFlow3Dを用いた.

計算対象は, HAMILTONのシングルローター周りの流れである. ただし, ローター以外の部品は解析では考慮していない. 図1はブレード形状[1]を示しており, 断面翼型はIngenuityで用いられたCLF5605とした[2]. なお, 今回の解析で用いたブレード平面形・翼断面形状は現段階におけるベース形状であり, より空力性能が高いブレードの設計が進行中であることを付記する.

図2は翼端マッハ数に対するトルク係数(Cq)とFigure of Meritの変化を示している. 比較のため, 地球大気条件の結果も合わせて示した. 火星大気条件では, Mtipが0.7から0.9のケースでCqが比較的低く, それに伴いFigure of Meritも高くなっている. 特に, Cqが最小でFigure of Meritが最大となるのはMtipが0.8から0.9のケースとなった. 地球大気条件の結果と比較すると, 火星大気条件では空力性能が著しく低下することが明確であり, Mtipの影響も火星大気条件と地球大気条件では大きく異なることがわかる. 地球大気条件ではMtipが0.8以上のケースで空力性能の低下が始まっている.

図3はr/R=0.9のブレード断面における平均流れ場を, Mtipが0.8から1.1のケースについて示している. 上段は音速に基づく圧力係数(Cpa), 下段は局所マッハ数(M_local)の分布である. 各ケースにおける断面分布より, Mtip=0.8と0.9のケースでは衝撃波の形成が観察されない. Mtip=1.0と1.1のケースではM_local>1を超える領域が存在しており, 圧力分布, 速度分布からも衝撃波の存在が確認できる.

図4はMtip=0.9のケースにおける翼端渦の影響を示している. 前方ブレードによって生成された翼端渦がブレード下方を通過していることがわかる. ブレード前方における速度分布より, この翼端渦の上方において-x方向(回転方向)への流れの誘起が顕著であることがわかる. このように, 前方のブレードが生成する翼端渦による誘起流れによって, 局所的なマッハ数が低下することでMtip=0.9のような高い翼端マッハ数でも衝撃波が生じず, 空力性能が低下しないことがわかった.

[1]杉浦正彦, 田辺安忠, 菅原暎明, 竹川国之, 大山聖, 佐藤允, 金崎雅博, 岸祐希, “火星ヘリコプタ用ロータブレード平面形状の空力最適設計”. 流体力学講演会/航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム2020オンライン (2020).

[2]Koning, W. J. F., Johnson, W., and Grip, H. F., “Improved Mars Helicopter Aerodynamic Rotor Model for Comprehensive Analyses”, AIAA J., Vol. 57, pp. 3969-3979 (2019).

Annual Reoprt Figures for 2021

図1: 計算対象

 

Annual Reoprt Figures for 2021

図2: 空力性能における翼端マッハ数効果

 

Annual Reoprt Figures for 2021

図3: r/R=0.9の断面における平均分布

 

Annual Reoprt Figures for 2021

図4: Mtip=0.9における翼端渦の影響

 

成果の公表

-口頭発表

佐藤允, 川久保辰真, 杉浦正彦, 田辺安忠, 菅原瑛明, 木村桂大, 竹川国之, 大山聖, 岸祐希, 金崎雅博, “火星ヘリコプター「HAMILTON」のローター空力特性における翼端マッハ数効果”, 第53回流体力学講演会/第39回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム (2021).

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: 非該当
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: 1
  • 1ケースあたりの経過時間: 192 時間

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.01

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 150797.52 0.01
TOKI-ST 0.00 0.00
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 0.00 0.00
TOKI-TST 0.00 0.00
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 10.00 0.01
/data及び/data2 20480.00 0.22
/ssd 100.00 0.03

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 0.00 0.00

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2021年2月~2022年1月)