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火星ヘリコプターのローター空力特性に関する数値的研究

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2020年4月~2021年3月)

報告書番号: R20JACA41

利用分野: JSS大学共同利用

PDFはここからダウンロード

  • 責任者: 佐藤允, 工学院大学
  • 問い合せ先: 佐藤允, 工学院大学(msato@cc.kogakuin.ac.jp)
  • メンバ: 佐藤 允, 小笠原 大地

事業概要

火星の洞窟, 縦穴探査を目的とした火星ヘリコプターの研究開発プロジェクトがJAXA宇宙研・東北大等が中心となって進められている. 火星の大気環境は地球と比べると密度が約1/100, 音速は約3/4であるため, 低レイノルズ数かつ高マッハ数でも高性能なヘリローターの開発が必要不可欠である. 現在, JAXA宇宙研大山研究室では, 火星大気を模擬した低圧環境におけるローター推力を実験的に測定する研究を進めている. しかし, 本実験は真空チャンバー内で行われるため, ローター周り流れについて調べることは極めて困難である. そこで本研究では実験と同様の条件でローター周り流れに関する数値解析を行うことにより, 流れ場の特性を明らかにすることを目的としている.

参照URL

なし

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

JAXAで開発された回転翼に関する流体解析ソルバー「rFlow3D」を用いた, 3次元回転翼周り流れに関する大規模数値シュミレーションを行うため.

今年度の成果

今年度は前年度に引き続き低レイノルズ数における三角薄翼・三角厚翼周り流れの数値解析を行った. 本解析はISASで行われた実験[1]を基にしている. パラメータとして翼端レイノルズ数Re(3000-20000)とピッチ角(0゜-30゜)を変化させた. ここでは三角厚翼の結果について示す. 数値解析ソルバーにはJAXAで開発されたrFlow3Dを用いている.

図1はピッチ角に対するCt(推力係数)とCq(トルク係数)の変化を示している. Re>15000では, 空力特性に対するレイノルズ数効果は弱い. 一方, Re<15000では, レイノルズ数の低下に伴い空力特性が変化しており, 青枠のピッチ角ではCt, Cqは増加する傾向にあるが, 赤枠のピッチ角ではCt, Cqは低下する傾向を示す.

図2はピッチ角5゜の条件における翼断面圧力分布(r/R=0.75)を各レイノルズ数に対して示している. レイノルズ数の低下に伴い, 上面前方における圧力の低下と下面前方での圧力の増加がみられる.

図3はピッチ角15゜の条件における翼断面圧力分布(r/R=0.75)を各レイノルズ数に対して示している. レイノルズ数の低下に伴い, 前縁の圧力係数が増加しており, これは前縁剥離泡の長さに起因している.

図4はr/R=0.75における翼表面圧力分布を示している. Re<10000では, 緩やかな圧力回復が観察されるのに対し, Re>10000では, 圧力が平坦な領域と急激な圧力回復が観察される. これら表面圧力分布の傾向は, Lee[2]が行った低レイノルズ数における平板翼のLES結果と一致している.

[1]江光希, “低レイノルズ数環境下における三角翼シングルロータ・二重反転ロータの空力特性評価”, 東京大学修士論文, (2020).

[2]Donghwi Lee, “A Study on Formation Mechanisms of Surface Pressure Distribution around a Laminar Separation Bubble”, 東京大学博士論文, (2017).

Annual Reoprt Figures for 2020

図1: 低レイノルズ数における三角厚翼の空力性能

 

Annual Reoprt Figures for 2020

図2: r/R=0.75の翼断面における圧力分布(ピッチ角5゜)

 

Annual Reoprt Figures for 2020

図3: r/R=0.75の翼断面における圧力分布(ピッチ角15゜)

 

Annual Reoprt Figures for 2020

図4: 表面圧力分布

 

成果の公表

-口頭発表

小笠原, 大山, 佐藤, 佐藤 “低レイノルズ数環境下における三角厚翼ローターの

数値的研究”, 第64回 宇宙科学技術連合講演会

小笠原, 大山, 佐藤, 佐藤 “三角厚翼ブレードのレイノルズ数効果に関する

数値的研究”, 第58回飛行機シンポジウム

小笠原, 大山, 佐藤, 佐藤 “レイノルズ数変化に伴う三角厚翼ロータの空力・流れ場特性の評価”, 令和2年度 宇宙航行の力学シンポジウム

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: 非該当
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: 1
  • 1ケースあたりの経過時間: 400 時間

JSS2利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.18

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 0.00 0.00
SORA-PP 303,086.83 2.38
SORA-LM 0.00 0.00
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 19.07 0.02
/data 19,531.26 0.38
/ltmp 3,906.25 0.33
アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.11

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 533,196.81 0.11
TOKI-RURI 3,675.99 0.02
TOKI-TRURI 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 9.54 0.01
/data 9,765.63 0.16
/ssd 95.37 0.05

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2020年4月~2021年3月)