低速バフェットに関する研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)
報告書番号: R19JTET26
利用分野: 技術習得方式
- 責任者: 青山剛史, 航空技術部門数値解析技術研究ユニット
- 問い合せ先: 金森 正史(kanamori.masashi@jaxa.jp)
- メンバ: 金森 正史, 吉川 貴広
事業概要
低速バフェットとは, 低速かつ高迎角飛行時に起こる空気力学的振動現象である. 航空機が安全に飛行するため, 低速バフェットが起こり得る低速高迎角流れの解析は重要であるが, 研究例は少ない. そこで本事業では航空機全機周りを対象にCFD解析を行う. その解析手法として, 壁近傍ではRANS, それ以外の領域ではLESを用いるDDESを実施する. そのDDESにおいてRANS/LESの切替えをより壁面に近づけた解析を行い, 従来の計算よりも, より実験値に近い解析解を求めることを目指す.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
本事業では航空機全機モデル周りの解析を行い, 現象把握のためには高解像度の格子が必要である. そのような大規模な計算では多くの計算資源が必要であり, 通常多くの時間を有するが, スパコンを用いることで短時間で多くの結果を得ることができる. よってスパコンの利用は必要不可欠である.
今年度の成果
本事業ではNASA-CRMを対象に, 2つの流れ場の条件で解析を行った. 解析手法であるDDESでは, RANS/LESの切替え位置をモデルパラメータであるCdesを用いて変更する. Cdes=0.65がデフォルト値であり, それよりも大きくするとRANS領域が拡がり, 小さくるとRANS領域が狭まる.
1つ目の流れ場の条件はEuropean Transonis Windtunnel で行われた実験[Lutz et al., AIAA 10.2514/6.2015-1094, 2015]でありその実験値と比較する. CFD解析で再現が難しかった翼根部分の断面圧力分布が, Cdesを0.1程度に下げるとより実験値に近付いていることがわかる(図1).
次に, JAXAの大型低速風洞で行われた実験[Uchiyama et al., AIAA 10.2514/6.2019-2190, 2019]と比較する. Cdesを0.1とするDDES解析で揚力係数をより良い一致が見られた(図2).
成果の公表
なし
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 480
- 1ケースあたりの経過時間: 240 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.16
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 1,430,169.20 | 0.17 |
SORA-PP | 1,858.61 | 0.01 |
SORA-LM | 1,293.87 | 0.54 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 476.84 | 0.40 |
/data | 9,765.63 | 0.17 |
/ltmp | 1,953.13 | 0.17 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)