乱流燃焼場を対象とした化学反応計算手法に関する研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)
報告書番号: R19JTET25
利用分野: 技術習得方式
- 責任者: 青山剛史, 航空技術部門数値解析技術研究ユニット
- 問い合せ先: 小松 湧介(ksw.koma2@asagi.waseda.jp)
- メンバ: 小松 湧介
事業概要
宇宙航空研究開発機構(JAXA)はマッハ5で巡航する極超音速航空機の実現を目指した研究開発を進めている. この研究開発の第一段階として, S-520探査ロケットを用いた極超音速条件下での飛行試験である極超音速統合制御実験(HIMICO)が計画されている. 現在までに超音速風洞試験およびエンジンの燃焼試験が行われており, 燃焼試験においてはある実験条件で燃料が自己着火することが確認されている. しかしながら, 自己着火条件の定量的な評価やエンジンの性能評価に必要なデータが不十分なのが現状である. そこで, 実験データを補間することや燃料の自己着火の条件を明らかにすることを目的として, CFD解析を行う.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
実燃焼器スケール(数千万セル規模)で化学反応を含む流れ場の数値解析を行うと, 計算コストが非常に大きくなる. そこで, 現実的な時間で数値解析を行うために, 並列化を行うことができるJSS2を利用した.
今年度の成果
極超音速統合制御実験用ラム燃焼器内の自己着火現象の解明と自己着火限界の予測を目的として, 有限反応速度モデルを採用した反応性流体解析ソルバを開発し, 実機スケールの燃焼器を対象として水素-空気9化学種 23 反応を考慮した LES による数値解析を行った. 数値解析の結果, 自己着火はリーンで静温が高い領域で起きること(図1), 自己着火までの時間は予混合を仮定した着火遅れ時間と強い相関があること(図2)など, 実験では解明できなかった自己着火の発生メカニズムを明らかにした. 数値解析による自己着火限界の予測の点ではまだ課題があるが, 定性的な予測は可能である.
成果の公表
-口頭発表
1) Komatsu, Y., Yamamoto, H., Sato, T., and Taguchi, H., Numerical Simulation of the Ram Combustor for High-Mach Integrated Control Experiment (HIMICO), 32nd International Symposium on Space Technology and Science, Fukui, Japan, 2019-a-33, Jun. 2019.
2) 小松 湧介, 山本 姫子, 佐藤 哲也, 溝渕 泰寛, 南部 太介, 田口 秀之, 極超音速統合制御実験(HIMICO)用ラム燃焼器内の自己着火現象に関する数値解析, 第47回日本ガスタービン学会定期講演会, 函館, C-20, 2019年9月.
3) 小松 湧介, 佐藤 哲也, 溝渕 泰寛, 南部 太介, 田口 秀之, 極超音速統合制御実験(HIMICO)用ラム燃焼器内の自己着火現象に関する詳細反応機構を考慮した数値解析, 令和元年度宇宙輸送シンポジウム, 相模原, STCP-2019-021, 2020年1月.
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 1024
- 1ケースあたりの経過時間: 180 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.66
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 5,869,603.13 | 0.71 |
SORA-PP | 19,863.22 | 0.13 |
SORA-LM | 206.23 | 0.09 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 476.84 | 0.40 |
/data | 9,765.63 | 0.17 |
/ltmp | 1,953.13 | 0.17 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)