風車周りのCFD解析
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)
報告書番号: R19JTET09
利用分野: 技術習得方式
- 責任者: 青山剛史, 航空技術部門数値解析技術研究ユニット
- 問い合せ先: 東京大学大学院 木村桂大(k.kimura@ilab.eco.rcast.u-tokyo.ac.jp)
- メンバ: 木村 桂大, 田辺 安忠
事業概要
風車を集約配置する大規模な風力発電所においては, 風車後方の低風速域(後流域)が後続風車に干渉することによる発電量の低下が問題となっており, 風車後流域の風速回復過程の解明が大きな関心を寄せている. 本研究では, 風車後流域に存在する渦・風速変動を大規模な数値解析によって解像することで, どのようなスケールの渦・風速変動が後流域の風速回復に寄与しているかを明らかにすることを目的とした.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
風車後流域の影響範囲を考慮すると, 風車直径の10倍程度のスケールで計算空間を確保する必要がある. 一方で風車から発生する主要な風速変動を解像する為には風車翼端における翼弦長基準の格子サイズが要求される. 結果的に広範囲に渡って高解像度格子を要求する大規模計算となり, スーパーコンピュータの利用が望ましい.
今年度の成果
風車後流域に対して一定のスケールの外乱を与えるための手法として, 風車の回転面を周期的に変化させる周期的ヨー角条件を付加した数値解析を実施した. 計算の実行には回転翼機用CFDソルバーであるrFlow3Dを用いた. 図1に周期的ヨー角条件における風車後流域の渦構造の可視化図の例を示す. 後流域に風車直径に代表されるスケールの蛇行運動が発生することで, 風車後流域の風速回復が促進される結果が得られた. また, 数値解析によって取得した風速分布に対して動的モード分解を適用することで, 流れ場に存在する主要な変動モードを抽出し, 今回得られた風速回復の促進効果がどのような周波数帯の渦や風速変動によって生じたかについて考察した. 図2に動的モード分解によって抽出した後流域の主要モードの例を示した. 各モードの乱流エネルギーの比較により, 蛇行運動に対応する長周期変動が風速回復に大きな寄与を与えることを示唆する結果が得られた.
成果の公表
-査読付き論文
1) Keita Kimura, Yasutada Tanabe, Yuichi Matsuo, and Makoto Iida. “Forced wake meandering for rapid recovery of velocity deficits in a wind turbine wake”, AIAA Scitech 2019 Forum, AIAA SciTech Forum, (AIAA 2019-2083)
2) 木村桂大, 田辺安忠, 飯田誠, “風力発電所における後流干渉と発電量損失に関する数値的検討”, 日本風力エネルギー学会誌, Vol.43 No.3(通巻No.131), 2019.
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 1 – 8
- 1ケースあたりの経過時間: 400 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.49
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 292.36 | 0.00 |
SORA-PP | 1,354,329.74 | 8.77 |
SORA-LM | 0.00 | 0.00 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 96.23 | 0.08 |
/data | 10,653.41 | 0.18 |
/ltmp | 2,130.68 | 0.18 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)