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CMB偏光観測衛星LiteBIRDの光学要求解析

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)

報告書番号: R19JACA34

利用分野: JSS2大学共同利用

PDFはここからダウンロード

  • 責任者: 永田竜, 高エネルギー加速器研究機構
  • 問い合せ先: 永田竜(rnagata@post.kek.jp)
  • メンバ: 永田 竜

事業概要

原始背景重力波の存在はインフレーション理論に通有の予言であり, その波の強度は「インフレーションのエネルギースケール」の指標である. 宇宙科学研究所戦略的中型衛星 2 号機 LiteBIRD は, 偏光地図の奇パリティ成分に刻印された原始重力波の信号検出を目的としたマイクロ波背景輻射偏光の観測衛星である. 原始重力波に由来する偏光信号は, 既に観測で確認されている密度揺らぎ由来の偏光成分に比較して極めて微弱な信号であると考えられており, その検出に向けた取り組みにおいては, 徹底した系統誤差の理解と克服が必要不可欠な要素である.

本年度は低周波望遠鏡 (LFT) 1/4 スケールモデルで測定されたビームパターンを使ってビーム特性の評価シミュレーションを行い, 実測データに基づいた望遠鏡概念設計の検証を行った. 性能試験において望遠鏡本来の光学特性を同定するには, 測定誤差の振る舞いを理解することが不可欠である. ビーム畳込みのフルシミュレーションを行うことで, 測定データに含まれる不規則なビーム構造が観測に与える影響を定量化し, 測定系の改善に関するフィードバックを行った.

参照URL

LiteBIRD: インフレーション宇宙を検証するCMB偏光観測小型科学衛星」参照.

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

偏光の全天地図を作成するため LiteBIRD は走査観測を行う. そのため, ビーム畳込み計算はサンプリングレートである約 20 Hz の頻度で一年間分繰り返される. 1/4 スケールモデルで測定されたビーム関数は分角スケールの分解能で数千平方度にわたって広がっており, サンプリング毎に数百万グリッド点で評価される. 積分とそれに伴う座標変換の繰り返しは莫大な計算量を要求するため, 高性能の数値計算資源を必要とする.

LiteBIRD は宇宙科学研究所戦略的中型衛星 2 号機に選定されており, 本共同利用課題において達成された検討成果は光学設計の根幹をなす要素としてプロジェクトの推進に大いに寄与している.

今年度の成果

LFT 1/4 スケールモデルで測定されたビームパターンを用いて, 走査観測, ビーム畳込み, 偏光地図作成からなる一連のシミュレーションを実行し, 測定データに含まれる不規則な構造が観測に与える影響を評価した.

(図 1)は 45 (=180/4) GHz 帯における, 直交する 2 偏波のビーム関数の差分である. (図 1 左上)の測定系にて評価されたそれらのビームパターンは, 概ね設計値に則した振る舞いを見せる一方で, フィード由来の交差偏波, ビーム重心のズレ, スキャンノイズ等の誤差をも含んでいる. (図 2)はビームのミスマッチとマイクロ波背景輻射の温度非一様性が結合することで生じた偽偏光の角度パワースペクトルである. メインビーム領域においては交差偏波に由来する効果として, ビーム楕円率のミスマッチにして 1% 相当の偽偏光が認められた. 極近傍サイドローブ領域においては, 個々の偏波でビームの重心が 40 秒角程度ズレていることによる汚染が見られた. ファーサイドローブにかけてはスキャンノイズを含む測定誤差によって偏光地図の大角度相関が大きく汚染されることが示唆された. これらの評価結果によって, スケールモデル測定系の更新に際し, 定量的な要求に基づいた具体的な指針を設けることができた.

Annual Reoprt Figures for 2019

図1: LiteBIRD LFT 1/4 スケールモデル (左上枠内) で測定された 45 (=180/4) GHz 帯の差分ビームパターン:H.Takakura et al., IEEE TST vol. 9, issue 6 (2019)

 

Annual Reoprt Figures for 2019

図2: ビームパターンのミスマッチに由来する信号汚染の角度パワースペクトル

 

成果の公表

-査読なし論文

LiteBIRD: an all-sky cosmic microwave background probe of inflation: Bulletin of the American Astronomical Society 51, 7, 286 (2019)

-口頭発表

永田竜, "CMB偏光観測衛星LiteBIRDにおける系統誤差の研究 XIII", 日本天文学会2019年秋季年会

-Web

http://litebird.jp/

JSS2利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: 32
  • 1ケースあたりの経過時間: 2.5 時間

利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.23

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 2,114,525.58 0.26
SORA-PP 22.21 0.00
SORA-LM 0.00 0.00
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 9.54 0.01
/data 1,907.35 0.03
/ltmp 1,953.13 0.17

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.25 0.01

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)


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所在地

JAXA(宇宙航空研究開発機構) 調布航空宇宙センター
所在地 〒182-8522 東京都
調布市深大寺東町7-44-1