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圧縮性熱乱流境界層の物理とモデリングに関する研究

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)

報告書番号: R19JACA31

利用分野: JSS2大学共同利用

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  • 責任者: 河合宗司, 東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻
  • 問い合せ先: 平井遼(hirai@klab.mech.tohoku.ac.jp)
  • メンバ: 河合 宗司, 平井 遼, 森 優樹

事業概要

本研究では, 加熱・冷却壁を伴う圧縮性熱乱流境界層において, 壁面近傍の乱流物理に関してLESによる解析を行い, 壁面熱流束を受けた際の平均速度分布と乱流構造の関連性を明らかにする. さらにLES解析により得られた知見を元にして, 熱壁乱流に適用できるLES壁面モデルの提案を行う.

参照URL

河合研究室 | 東北大学 大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 空力設計学分野」参照.

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

特に冷却壁条件において, 乱流境界層内層乱流に関わる壁ユニットベースのレイノルズ数は高レイノルズ数条件となり, 冷却壁を伴う熱乱流境界層の高忠実なLES計算には非常に高い計算コストがかかり, JSS2などのスーパーコンピュータを用いた大規模並列計算が必要不可欠である.

今年度の成果

本研究では加熱・冷却壁を伴う乱流境界層に対して大規模LES解析を行い, 壁面熱流束を伴う乱流境界層現象における詳細な乱流物理の解明を目指している. さらに, LES解析により得られた知見をもとにしたLES壁面モデルの改善を行っている. 今年度は下記の計算条件で壁面モデルを使わない通常の大規模LES, および壁面モデルLESの計算を行った. 主流条件は【Re】_θ=5,000, M_∞=2.28とした (レイノルズ数の代表長さθは境界層の運動量厚さ). 空間差分に6次精度コンパクト差分法, 時間積分法に3段3次TVD Runge-Kutta法を用いた. 壁面温度T_wは空力加熱を受けた壁面温度 (回復温度) をT_rとした時に T_w/T_r =0.5,1.0,2.0 の全3ケースを計算した. T_w/T_r <1.0 のときに冷却条件, T_w/T_r >1.0 のときに加熱条件, T_w/T_r =1.0 のときに擬似断熱条件となる.

図1に, (a) 密度および粘性係数の変化を考慮する変換 [Trettel & Larsson (2015), Patel et al. (2015)] を施した平均速度分布と (b) 粘性応力分布を示す. 圧縮性乱流境界層で良く用いられるvan Driest変換と比較して, 図1 (a) に示す速度スケーリング則は各ケース間で良い一致を示すが, 対数則付近で僅かな差異が生じていることがわかる. 本研究で行った解析により, この差異が 図1 (b) に示す粘性応力の分布の差異から生じていることが明らかになった.

乱流境界層内層域, すなわち平衡流における運動量バランス(全剪断応力一定)を考えると, 粘性応力分布の差異は, 直接的にレイノルズ剪断応力の差異としても現れる(図1). レイノルズ剪断応力と乱流構造の間には密接な関係があることから, 乱流構造にも変化が生じていることが考えられる. 図2に y^*≈15 高さ断面における瞬時の主流方向速度変動を内層長さスケールで示す (y^*=√ρ √(τ_w ) y/μ は準局所長さスケール). 疑似断熱壁 (図2 (a)) と比較して, 加熱壁 (図2 (b)) で小さく, 冷却壁 (図2 (c)) で大きくなる乱流構造の変化が見られ, この乱流構造の変化が図1 (a) の平均速度分布の差異の原因であることが示唆される.

さらにこれらの現象理解を基に, 渦粘性近似における長さスケールを変更することにより, LES壁面モデルの改善にも一部成功している. 図3に, 壁面モデルを使わない通常の大規模LESと同条件での壁面モデルLES結果の比較である (a) van Driest変換された速度分布と (b) 温度分布を示す. 改善した壁面モデルLESは通常のLESの解と良く一致しており, 平板乱流においては提案した改良が良く機能していることが示されている.

Annual Reoprt Figures for 2019

図1: 断熱・加熱・冷却壁を伴う熱乱流境界層の比較. (a) 密度および粘性係数の変化を考慮する変換 [Trettel & Larsson (2015), Patel et al. (2015)] を施した平均速度分布, (b) 粘性応力分布. 黒線, 疑似断熱条件; 赤線, 加熱条件; 青線, 冷却条件; 点線, 壁法則.

 

Annual Reoprt Figures for 2019

図2: y*≈15の高さ断面における瞬時の主流方向速度変動. (a) 疑似断熱条件, (b) 加熱条件, (c) 冷却条件.

 

Annual Reoprt Figures for 2019

図3: 提案壁面モデルLESによる断熱・加熱・冷却壁を伴う熱乱流境界層の予測精度. (a) van Driest変換を施した平均速度分布, (b) 温度分布. シンボル, 参照解 (通常のLES); 実線, 改善した壁面モデルLES; 破線, 従来の壁面モデルLES. 黒線, 疑似断熱条件; 赤線, 加熱条件; 青線, 冷却条件; 点線, 壁法則.

 

成果の公表

-口頭発表

(1) 平井遼, 河合宗司:高熱流束を伴う熱乱流境界層の壁面モデル構築に向けたLES解析, 第37回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム

(2) R. Hirai, S. Kawai, "Assessment of Wall-Modeled LES for Turbulent Boundary Layers with Heated/Cooled Wall", 72nd Annual Meeting of the APS Division of Fluid Dynamics

JSS2利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: 660 - 1020
  • 1ケースあたりの経過時間: 120 時間

利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.11

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 976,363.17 0.12
SORA-PP 0.00 0.00
SORA-LM 0.00 0.00
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 291.82 0.24
/data 14,657.98 0.25
/ltmp 3,125.00 0.27

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)


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JAXA(宇宙航空研究開発機構) 調布航空宇宙センター
所在地 〒182-8522 東京都
調布市深大寺東町7-44-1