次世代ジェットエンジンの設計解析技術開発/低騒音化技術
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)
報告書番号: R19JA0716
利用分野: 航空技術
- 責任者: 石井達哉, 航空技術部門推進技術研究ユニット
- 問い合せ先: 榎本俊治(enomoto.shunji@jaxa.jp)
- メンバ: 榎本 俊治, 石井 達哉
事業概要
超高バイパス比航空用ジェットエンジンでは, 吸音ライナの面積は従来のエンジンに比べて小さい. 本事業では, 面積が狭い吸音ライナでも高い騒音低減性能をもたらす吸音デバイス技術を開発する.
参照URL
「DANTE(次世代ジェットエンジンの設計・解析技術開発) | 航空環境技術の研究開発プログラム(ECAT) | JAXA航空技術部門」参照.
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
吸音ライナ形状と入射音周波数を変化させて多数のLES計算を行うため, SORA-PP, TPP の計算性能と SORA-FS, J-Spaceのストレージ容量が必要だった.
今年度の成果
グレージング流れの有る吸音ライナの吸音性能の評価を数値解析によって行うことを目的とした. 吸音ライナの計算モデルは, 実際のフローダクト装置を大幅に簡略化して, 2次元・層流で孔が一つだけとした. 図1は吸音ライナの孔の周辺の音圧と速度ベクトルを示している. 図の上側はM=0.3の流れが左から右に流れており, その境界層部分のみが図に示されている. 入射音も図の左から右に進んでいる. グレージング流れによって吸音ライナの孔の中には渦が発生しており, 入射音によって渦の形状が変化している. 図2は速度の入射音による変動成分を示している. 速度変動は, 孔の下流側の角の近傍が大きく, 孔の入り口のそれ以外の部分はほとんど音が通過していないことが分かる. 図3は, 数値計算のデータから計算した音響インテンシティの時間平均の発散である. 音響インテンシティの発散が負(図の青色部分)は, 音が減っている場所を示しているものと思われる. これにより, グレージング流れが有る場合の吸音ライナでは, グレージング流れの無い吸音ライナとは異なる原理で吸音が起きていることが明らかとなった.
図1(ビデオ): 吸音ライナの孔の周辺の音圧と速度ベクトル
図2(ビデオ): 入射音による流速の変動成分
成果の公表
-査読なし論文
1) Shunji ENOMOTO, Tatsuya ISHII, Toshio NISHIZAWA, Hidemi TOH, Numerical Analysis of an Acoustic Liner Performance in Grazing Flow, 25th AIAA/CEAS Aeroacoustics Conference, AIAA-2019-2613
2) 榎本俊治, 石井達哉, グレージング流れを伴う複数孔の吸音ライナの数値解析, 第51回流体力学講演会/第37回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム, JSASS-2019-2141-F+A
-口頭発表
榎本 俊治, 石井達哉, グレージング流れの有る吸音ライナにおける吸音の数値解析, 日本機械学会 流体工学部門 第39回流力騒音シンポジウム, 2019年12月17日
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 12 – 96
- 1ケースあたりの経過時間: 37 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.31
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 3,456.96 | 0.00 |
SORA-PP | 118,145.36 | 0.77 |
SORA-LM | 3.37 | 0.00 |
SORA-TPP | 427,719.82 | 25.82 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 30.22 | 0.03 |
/data | 2,172.36 | 0.04 |
/ltmp | 4,512.13 | 0.38 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 12.23 | 0.31 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2019年4月~2020年3月)