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大気環境物質監視シミュレーション

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月~2019年3月)

報告書番号: R18JR2401

利用分野: 宇宙技術

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  • 責任者: 松浦直人, 第一宇宙技術部門宇宙利用統括
  • 問い合せ先: 菊池 麻紀(kikuchi.maki@jaxa.jp)
  • メンバ: 五藤 大輔, 菊池 麻紀, 鈴木 健太郎, Dai Tie, Cheng Yueming

事業概要

大気汚染物質の飛来と輸送を精度良く監視・予測するために, 数値モデリングと人工衛星観測を組み合わせた大気汚染の監視・予測システムを構築する. この目的のために, 領域規模から全球規模までをシームレスに扱える大気数値モデルをJAXAのスパコンJSS2上で稼働させ, 東アジア域における大気汚染の飛来・輸送のシミュレーションを実施する. さらに, その結果を人工衛星による大気汚染の観測と比較することで数値モデルを評価検証する.

参照URL

なし

JSS2利用の理由

日本を含む東アジア域での大気汚染の分布状態を精度良く監視・予測するためには, 高い空間解像度で広域を対象とした数値シミュレーションを定常的に実施する必要があり, そのためにはJAXAが有するスパコンJSS2の計算機資源を利用することが必須である.

今年度の成果

JSS2に実装した非静力学気象・大気化学モデルNICAM-SPRINTARSを稼働させ, 東アジアを対象としたエアロゾル数値実験を実施した. 今年度は, モデルで得られた大気汚染の4次元構造を詳細に検証するために, ひまわり8号から得られるエアロゾルの衛星観測だけではなく, COMS/GOCIから得られるエアロゾルの衛星観測, 環境省大気汚染物質広域監視システム(AEROS)や国立環境研究所ライダーによる地上観測といった複数の観測データを利用した. 図1は, モデル評価に関する結果の一例であり, エアロゾル濃度の指標であるAOT(エアロゾル光学的厚さ;上段), 地上PM2.5濃度(中段), 球形エアロゾル消散係数の鉛直分布(下段)に関して, 観測結果とモデル結果で, 大気汚染の時空間分布の比較を行ったものである. これによって, モデルがひまわりで得られた高AOT(鉛直積算量)の事例をうまく再現できている場合であっても, ライダーで得られたエアロゾル消散係数の鉛直分布をうまく再現できないことがあることがわかった. このように, 複数の観測結果を組み合わせることで, エアロゾルの輸送過程についてモデルを詳細に評価することができ, モデルの改良すべきポイントが明確化され, 今後のモデル改良の指針が示された. なお, この結果はGoto et al. (2019)として公表されている.

これと並行して, 衛星観測とモデリングをさらに積極的に融合し, より現実場に近いエアロゾル時空間分布を得るために, エアロゾルのひまわり観測データをNICAM-SPRINTARSモデルに同化する実験を昨年度に引き続き実施した. 図2に示すように, AERONET地上観測網のある7サイトにおいてAOTの時系列の比較を行った. この結果, 同化することでモデルの結果が地上観測の値に近づき, 例えば大阪のサイトでは, 平均二乗誤差(RMSE)は20%減少し, 相関係数(CORR)は0.3程度向上したことが示された. 特に, 時間変動も考慮した4次元局所アンサンブルカルマンフィルター(4D-LETKF)も, JSS2上で適切に稼働することが確かめられた. AOTの空間分布も図3で示したように, 独立した衛星観測MODISとの比較によって, より再現性が向上したことが確かめられた. 今後は, ひまわり衛星観測データだけではなく, 他の衛星との組み合わせによって, より高精度のエアロゾル分布を得ることが期待できる. なお, この結果はDai et al. (2019)として公表されている.

Annual Reoprt Figures for 2018

図1: AOT, 地表面PM2.5濃度, 球形エアロゾルの消散係数に関して, 複数観測(左図)とNICAMモデル(右図)によって得られた時系列比較. 場所は北日本を対象としており, 北海道(138.5°E - 146.0°E, 41.5°N - 46.0°N) および新潟(138.9°E, 37.8°N)の結果である. 観測結果に関しては, AOTはひまわり/AHIおよびCOMS/GOCIから導出されたもの, 地表面PM2.5濃度は環境省大気汚染物質広域監視システム(AEROS)によって測定されたもの, エアロゾル消散係数は国立環境研究所ライダーによって観測されたものである. 消散係数の結果において, 灰色で示した部分は, 雲や降水によってエアロゾルのリトリーバルができなかった部分である. NICAMのAOT及びPM2.5比較のパネルの上方で, 青系及び赤系の色で示されたものは, それぞれNICAMで硫酸塩エアロゾルおよびバイオマス燃焼起源エアロゾルが卓越していた期間を示しており, 水色は硫酸塩エアロゾルの全体への寄与が30%以上の期間, 青色は硫酸塩エアロゾルの全体への寄与が50%以上の期間, 水色は硫酸塩エアロゾルの全体への寄与が30%以上の期間, 赤色はシベリアでのバイオマス燃焼起源エアロゾルの全体への寄与が50%以上の期間を表している. 右下に示したパネルは, NICAMで計算された球形エアロゾルの消散係数に関する主要エアロゾルの分類である. 消散係数の値が0.02km-1以上の時空間に対して, それぞれの寄与が50%以上のものを表している. これらの結果は, Goto et al. (2019)の図8より引用している.

 

Annual Reoprt Figures for 2018

図2: 選定したAERONETの7サイトにおけるAOTの時系列比較. ひまわり, MODIS, AERONETの複数の観測結果と, NICAM-SPRINTARSによる4つの結果を示している. モデル結果にはエアロゾル同化なしの結果(CONTROL), 同化ありの結果(LETKF), 6時間毎の4次元の同化ありの結果(4D-LETKF-6H), 24時間毎の4次元の同化ありの結果(4D-LETKF-24H)がある. 平均二乗誤差(RMSE)と相関係数(CORR)は, NICAMとAERONETの結果を用いて算出したものである. この図はDai et al. (2019)の図12から引用している.

 

Annual Reoprt Figures for 2018

図3: NICAMの4実験とTerra/MODISの月平均AOT(1段目)及び, NICAMの4実験とTerra/MODISとのAOTのバイアス(BIAS;2段目), 平均二乗誤差(RMSE;3段目), 相関係数(CORR;4段目)に関する2016年11月の空間分布図. パネル上部に記載された 'ave'は領域平均値を表している. BIASは, モデル結果から観測結果を差し引いた量として定義している. また, BIAS及びRMSEのパネル内に黒点で示した領域では, 平均値と分散値の差が95%信頼区間から外れている. CORRのパネル内に黒点で示した領域では, 相関係数が95%信頼区間にあることを示している. この図はDai et al. (2019)の図6から引用している.

 

成果の公表

-査読付き論文

Dai T., Cheng Y., Zhang P., Shi G., Sekiguchi M., Suzuki K., Goto D., Nakajima T. (2018) Impacts of meteorological nudging on the global dust cycle simulated by NICAM coupled with an aerosol model. Atmospheric Environment, 190, 99-115, doi:10.1016/j.atmosenv.2018.07.016

Goto D., Kikuchi M., Suzuki K., Hayasaki M., Yoshida M., Nagao T.M., Choi M., Kim J., Sugimoto N., Shimizu A., Oikawa E., Nakajima T. (2019) Aerosol model evaluation using two geostationary satellites over East Asia in May 2016. Atmospheric Research, 217, 93-113, doi:10.1016/j.atmosres.2018.10.016

Dai T., Cheng Y., Suzuki K., Goto D., Kikuchi M., Schutgens N.A.J., Yoshida M., Zhang P., Husi L., Shi G., Nakajima T. (2019) Hourly aerosol assimilation of Himawari-8 AOT using the four-dimensional local ensemble transform Kalman filter. Journal of Advances in Modeling Earth Systems, https://doi.org/10.1029/2018MS001475.

-口頭発表

Goto D., Kikuchi M., Suzuki K., Hayasaki M., Yoshida M., Nagao T., Sugimoto N., Shimizu A., Nakajima T. (2018) Understanding of Atmospheric Aerosol Behavior Using a Semi-Regional Model, a Geostationary Satellite and in Situ Measurements over Japan in May 2016, 15th Annual Meeting: Asia Oceania Geosciences Society (AOGS), Honolulu, Hawaii, USA, June 2018

Goto D. (2018) Analysis of aerosol transport to Japan by combining seamless regional model and multiple observations including geostationary satellite: A case study of May 2016, Land Cover/Land Use Changes (LC/LUC) and Impacts on Environment in South/Southeast Asia -International Regional Science Meeting, Manila, Philippine, May 2018

JSS2利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: 自動並列
  • プロセス並列数: 1 - 160
  • 1ケースあたりの経過時間: 20 時間

利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.04

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 27,369.32 0.00
SORA-PP 0.00 0.00
SORA-LM 0.00 0.00
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 1,645.09 1.70
/data 39,920.83 0.70
/ltmp 12,695.32 1.09

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月~2019年3月)


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所在地

JAXA(宇宙航空研究開発機構) 調布航空宇宙センター
所在地 〒182-8522 東京都
調布市深大寺東町7-44-1