火星ヘリコプターのローター空力特性に関する数値的研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月~2019年3月)
報告書番号: R18JACA41
利用分野: JSS2大学共同利用
- 責任者: 佐藤允, 工学院大学
- 問い合せ先: 佐藤允, 工学院大学(msato@cc.kogakuin.ac.jp)
- メンバ: 佐藤 允, 小笠原 大地, 鈴木 陽大
事業概要
火星の洞窟, 縦穴探査を目的とした火星ヘリコプターの研究開発プロジェクトがJAXA宇宙研・東北大等が中心となって進められている. 火星の大気環境は地球と比べると密度が約1/100, 音速は約3/4であるため, 低レイノルズ数かつ高マッハ数でも高性能を発揮できるヘリローターの開発が必要不可欠である. 現在, JAXA宇宙研大山研究室では, 火星大気を模擬した低圧環境におけるローター推力を実験的に測定する研究を進めている. しかし, 本実験は真空チャンバー内で行われるため, ローター周り流れについて調べることは極めて困難である. そこで本研究では実験と同様の条件でローター周り流れに関する数値解析を行うことにより, 流れ場の特性を明らかにすることを目的としている.
参照URL
なし
JSS2利用の理由
JAXAで開発された回転翼に関する流体解析ソルバー「rFlow3D」を用いた, 3次元回転翼周り流れに関する大規模数値シュミレーションを行うため.
今年度の成果
今年度は低レイノルズ数における回転平板翼周り流れの数値解析を行った. 本解析は東北大学で行われた実験[1]を模擬しており. 対象とする流れは図1に示すような形状の回転平板翼周りの流れである. パラメータとしてレイノルズ数(3,870-77,300)と迎角(0-30)および平板のアスペクト比(2および4)を変化させた. ここでは主にアスペクト比4のケースの結果について示す. 数値解析ソルバーにはJAXAで開発されたrFlow3Dを用いている.
図2は推力係数とトルク係数の実験値との比較を示している. 迎角が25 deg. 以上の大迎角条件を除き, 実験値と良く一致していることが各レイノルズ数の条件で確認できた. 図3はレイノルズ数77,300, 迎角20 deg. のケースにおける渦構造を示している. ここで, 等値面は圧力で色付けされている. 前縁剥離渦と翼端渦の放出および翼端ではこれらの渦同士が干渉していることが確認できた. 図4は翼表面摩擦係数の実験[1]との比較をレイノルズ数7,730, 迎角20 deg. のケースについて示している. 結果より数値解析結果は実験結果とおおむね一致しており, 前縁剥離渦と翼端渦の挙動を数値解析によって十分に再現できていることが確認できた.
[1]大河内雅喜, “低レイノルズ数環境下におけるロータ空力特性の実験的研究”, 東北大学修士論文, (2013).
成果の公表
-口頭発表
小笠原大地, 佐藤允, 田辺安忠, 菅原瑛明, “rFlow3Dを用いた回転平板翼流れに関する数値解析”, 第1回火星ヘリコプター研究会, 2019.
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: 非該当
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 1
- 1ケースあたりの経過時間: 400 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.17
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 881.82 | 0.00 |
SORA-PP | 269,181.44 | 2.15 |
SORA-LM | 0.00 | 0.00 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 19.07 | 0.02 |
/data | 19,531.26 | 0.34 |
/ltmp | 3,906.25 | 0.33 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月~2019年3月)