圧縮性境界層における層流-乱流遷移後期過程の非線形渦動力学の解明
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月~2019年3月)
報告書番号: R18JACA13
利用分野: JSS2大学共同利用
- 責任者: 松浦一雄, 愛媛大学大学院理工学研究科 生産環境工学専攻
- 問い合せ先: 松浦一雄(matsuura.kazuo.mm@ehime-u.ac.jp)
- メンバ: 松浦 一雄
事業概要
音速の5倍以上の速さを有する極超音速流れが物体回りに形成する粘性境界層流れにおける層流から乱流への遷移過程は, 我々が普段経験する低速流れの遷移と比較して, 境界層の内部で音速より遅い領域と音速以上の領域が混在するなど密度変動や温度変動といった複雑因子が多く, それらの相互作用も多彩となるため, その渦動力学に関する詳細解明の発展が期待されている. 本研究では, 極超音速流れで見られる圧縮性境界層における層流―乱流遷移の直接シミュレーションを実施し, 後期過程における非線形渦動力学を解明することが目的である. 同時に, 後期過程を担う渦を直接的に誘起する方法論の開発およびその数値計算法の開発を行っている.
参照URL
なし
JSS2利用の理由
極超音速流れにおける境界層遷移は, 風洞自体による擾乱環境が存在し実験計測が困難であるため遷移現象の解明のためには数値シミュレーションが中心的な研究手段となる. 一方で, 境界層遷移は擾乱に敏感であり, また極超音速流れの強い圧縮性によって遷移が起こりにくくなるため, 高精度な大規模計算を短期間で可能にする最新鋭のスパコンが研究のフロンティアを牽引する役割を担っている.
今年度の成果
境界層中に置かれた突起の下流に形成される渦構造および遷移境界層中に生じる2次的ヘアピン渦構造に関して新たな知見を得た. 一般にDNSで再現された渦を速度勾配テンソルの第二普遍量の等値面で表示することが行われる. 本研究では, この等値面で囲まれる内部領域を抽出できるオイラー角を使った新たな判定法を提案すると同時に, ヘアピン渦を点群モデルで表現する新たな方法を提案した.
成果の公表
-査読付き論文
1. Kazuo Matsuura, Kotaro Matsui, Naoki Tani, Takashi Goto, Interaction of wake disturbance with compressible transitional boundary layers in a low-pressure turbine cascade under rotor-stator interaction, Enegy Procedia, Vol. 160, pp. 68-75 (2019).
2. Kazuo Matsuura, DNS investigation into the effect of free-stream turbulence on hairpin-vortex evolution, WIT Transaction on Engineering Sciences, Vol. 120, pp. 149-159 (2018).
-査読なし論文
松浦一雄, 層流―乱流遷移境界層渦のクラスタ解析, 京都大学数理解析研究所講究録, pp. 1-6 (2018).
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 自動並列
- プロセス並列数: 16 – 64
- 1ケースあたりの経過時間: 168 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.08
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 779,909.51 | 0.10 |
SORA-PP | 0.00 | 0.00 |
SORA-LM | 100.89 | 0.05 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 9.54 | 0.01 |
/data | 95.37 | 0.00 |
/ltmp | 1,953.13 | 0.17 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月~2019年3月)