機体騒音低減技術の飛行実証(FQUROH)低騒音化設計研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月~2019年3月)
報告書番号: R18JA2801
利用分野: 航空技術
- 責任者: 山本一臣, 航空技術部門FQUROHプロジェクトチーム
- 問い合せ先: 山本 一臣(yamamoto.kazuomi@jaxa.jp)
- メンバ: 山本 一臣, 伊藤 靖, 高石 武久, 村山 光宏, 坂井 玲太郎, 平井 亨, 田中 健太郎, 雨宮 和久, 中野 彦, 石田 崇
事業概要
航空機の高揚力装置及び降着装置から発生する機体騒音を低減する技術は, 空港周辺地域の騒音低減を実現するために国際的にも注目されている. 本研究は, 機体騒音低騒音化の技術成熟度を将来の旅客機開発ならびに装備品開発に適用可能な段階にまで高めることを目的としたFQUROHプロジェクトの一環として実施している. 最終的には本研究により, 国内航空産業界における国際競争力強化に貢献するとともに, 空港周辺地域社会における騒音被害, エアラインの運航コスト (着陸料) の軽減に貢献する. FQUROHプロジェクトでは実用的な低騒音化コンセプトと先進的な数値解析技術を基礎にした低騒音化設計法の実現可能性を検証することを目的の一つとしている. 本事業コードでは, スパコンを用いて主にLarge/Detached Eddy Simulation (LES/DES) による先進的な大規模数値解析を実施し, 騒音発生源の詳細把握や騒音予測, 低騒音化デバイスの形状設計を行った.
参照URL
「FQUROH(機体騒音低減技術の飛行実証)プロジェクト | 航空環境技術の研究開発プログラム(ECAT) | JAXA航空技術部門」参照.
JSS2利用の理由
FQUROHプロジェクトは, 機体騒音低騒音化という課題に対し, 最新の数値解析技術を用いた低騒音化設計を積極的に活用することにより技術成熟を加速し, フィデリティの高い設計技術開発を飛行試験によりデモンストレーションすることを目的としており, スパコン利用を前提に立案された. スパコンを利用した大規模かつ高忠実度な数値解析により, 風洞試験のみでは困難な, 詳細な物理現象の把握を基礎にした低騒音化設計を行うことが可能となる.
今年度の成果
機体騒音の騒音源の一つに, 主翼前縁に備え付けられた高揚力装置のスラットがある. スラットを含む翼断面形状を対象として, 騒音の発生にとって重要な渦を詳細に捉えるため, 高精度かつ高解像度な解析手法を導入して数値シミュレーションを実施し, その解析手法の有効性を確認した (図1). 数値解析手法の変更に加え, 乱流モデルの改良としてDelayed Detached Eddy Simulation (DDES) のサブグリッド長さスケールの影響調査も実施した. スラット配置についての低騒音化コンセプト検証のため, スラット配置を種々に変更した準3次元解析を実施し, 主翼空力性能を悪化させることなく, 低騒音化を実現できる可能性を示した (図2). 本解析で得られた知見などに基づき, 高揚力形態リージョナルジェット実機主翼から取り出した翼断面形状で準3次元解析を実施し, スラット低騒音化設計も行っている.
成果の公表
-査読なし論文
1) Sakai, R., Ishida, T., Murayama, M., Ito, Y., and Yamamoto, K., “Slat Noise Simulation on Unstructured Grid with Reduced Dissipation Approach,” 25th AIAA/CEAS Aeroacoustics Conference, Delft, The Netherlands, May 2019, to be presented.
-口頭発表
1) Murayama, M., Yamamoto, K., Ikeda, T., Sakai, R., Amemiya, K., Hirai, T., and Tanaka, K., “BANC-V Category 7 Slat Cove Noise: 30P30N-Modified Slat Configuration–JAXA’s result using structured grid UPACS,” 5th AIAA Workshop on Benchmark Problems for Airframe Noise Computations (BANC-V), Dallas, TX, June 2018.
2) Sakai, R., Murayama, M., Ito, Y., and Yamamoto, K., “BANC-V Category 7 Slat Cove Noise: 30P30N-Modified Slat Configuration–JAXA’s Result,” 5th AIAA Workshop on Benchmark Problems for Airframe Noise Computations (BANC-V), Dallas, TX, June 2018.
3) Sakai, R., Murayama, M., Ito, Y., and Yamamoto, K., “BANC-V Category 6: DLR Slat Noise Configuration–JAXA’s Result,” 5th AIAA Workshop on Benchmark Problems for Airframe Noise Computations (BANC-V), Dallas, TX, June 2018.
4) 坂井玲太郎, 石田崇, 村山光宏, 伊藤靖, 山本一臣, “30P30N非定常解析を通したDDESサブグリッド長さスケールの影響調査,” 4th Aerodynamics Prediction Challenge (APC-IV), 宮崎県宮崎市, 2018年7月.
5) 田中健太郎, 雨宮和久, 池田友明, 村山光宏, 山本一臣, 平井亨, “高次精度構造格子UPACSによる解析,” 4th Aerodynamics Prediction Challenge (APC-IV), 宮崎県宮崎市, 2018年7月.
6) 雨宮和久, 村山光宏, 山本一臣, 平井亨, 田中健太郎, 池田友明, “航空機高揚力装置スラット配置がスラット騒音に与える影響,” 第50回流体力学講演会/第36回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム, 3D11 (JSASS-2018-2160), 宮崎県宮崎市, 2018年7月.
7) 村山光宏, 雨宮和久, 田中健太郎, 伊藤靖, 横川譲, 山本一臣, 池田友明, 平井亨, “翼後退角有無によるスラット騒音変化について,” 第50回流体力学講演会/第36回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム, 3D12 (JSASS-2018-2161), 宮崎県宮崎市, 2018年7月.
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 自動並列
- プロセス並列数: 660
- 1ケースあたりの経過時間: 644 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 3.59
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 33,168,064.93 | 4.06 |
SORA-PP | 41,147.13 | 0.33 |
SORA-LM | 1,068.72 | 0.50 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 82.16 | 0.09 |
/data | 8,446.07 | 0.15 |
/ltmp | 2,520.07 | 0.22 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 268.29 | 9.39 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月~2019年3月)