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非線形フォースフリー磁場計算による「ひので」観測に基づく太陽コロナ磁場推定

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)

報告書番号: R17JU0912

利用分野: 宇宙科学

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  • 責任者: 藤本正樹 宇宙科学研究所太陽系科学研究系
  • 問い合せ先: 清水敏文 shimizu.toshifumi@jaxa.jp
  • メンバ: 清水敏文, 川畑佑典, 長谷川隆祥, 土井崇史, 伴場由美

事業概要

太陽系最大の爆発現象である太陽フレアの発現機構を理解することを目的とする.太陽観測衛星「ひので」で観測された太陽表面磁場を用いて3次元の磁気流体力学計算を行うことで,上空のコロナにおける3次元磁場構造を数値モデルの助けを借りて推定する.推定された3次元磁場構造を用いて,フレア発生に関わる発現機構を探る研究を推進する.

参照URL

なし

JSS2利用の理由

スパコンの大規模計算環境を利用して太陽観測衛星「ひので」の高空間分解能の磁場を用いた3次元の磁気流体力学計算によるフォースフリー磁場モデリングを行う.3次元の磁気流体力学計算を用いて,3次元磁場の緩和を行うためには,多くの計算資源が必要となるため.

今年度の成果

表面磁場の観測からコロナの3次元磁場構造を知るには,非線形フォースフリー磁場(NLFFF)モデリングによる外挿手法が現在有効な手段となっている.低密高温の太陽コロナではローレンツ力のみで力学的平衡が成り立つとするフォースフリー近似(∇xB(x)=α(x)B(x))が妥当だからである.観測された光球磁場データを境界条件として与え,この非線形の方程式を数値計算で解く事で,3次元磁場情報を導出する.しかし,このNLFFFモデリングには様々な不定性(手法依存性,観測装置依存性,観測の空間分解能依存性)が報告されており,どの要素がモデリングの精度に重要かは明らかになっていない.我々はその中でも未だ調査されていない,NLFFFモデリングの初期条件依存性について研究を行った. NLFFFモデリングによる外挿計算は通常初期条件として,解の知られているポテンシャル磁場(∇xB(x)=0)を与え,その後,底の境界条件を観測と整合させながら3次元空間で緩和させることで解を得る.我々はこの初期条件を,線形フォースフリー磁場(LFFF; ∇xB(x)=α0B(x), α0は定数)に変更することで最終的なNLFFFがどのように変化するかを調べた.定数α0を異なる12個の値で計算を行った所,得られたNLFFFのエネルギーや自由エネルギーはそれぞれ初期条件に依存しない(図1)一方で,再現された磁力線の形が,12個それぞれの解で大きく異なることがわかった(図2).磁力線の形のばらつきは,磁力線の長さが長いと(100Mm-)大きくなり,短い場合はばらつきが小さくなることが明らかになった.これは短い磁力線は観測から与えた底の境界条件の影響を受けやすいため,初期条件の依存性が小さくなることが原因と考えられる.

Annual Reoprt Figures for 2017

図1: それぞれの初期条件(α0)における初期条件の磁気エネルギー(青),NLFFFの磁気エネルギー(赤),自由エネルギー(緑,NLFFFとポテンシャル磁場のエネルギー差).

 

Annual Reoprt Figures for 2017

図2: 太陽観測衛星「ひので」でとられたX線画像とNLFFFの磁力線の比較.初期条件を変えることで観測との整合性をよくすることができる可能性を示唆している.

 

成果の公表

■ 査読付論文

1) Yusuke Kawabata, Satoshi Inoue, Toshifumi Shimizu: “Non-potential Field Formation in the X-shaped Quadrupole Magnetic Field Configuration”, The Astrophysical Journal, 842, 106, 2017

■ 口頭発表

1)川畑佑典, Andrés Asensio Ramos, 井上諭, 清水敏文:「Comparison between chromospheric field derived from He I 10830 Å observation and nonlinear force-free field modeling from photosphere」,天文学会秋季年会,北海道大学,2017年9月

2)長谷川隆祥, 清水敏文: “Reversed Rotation of a Sunspot Associated with the X2.1 flare in NOAA 12297”, Daiwa-Adrian Workshop, 英国UCL,2017年7月

3)長谷川隆祥, 清水敏文: “黒点の逆回転と大規模フレア”, 天文学会2017年秋季年会,北海道大学,2017年9月

4)長谷川隆祥, 清水敏文: “Reversed Rotation of the Well-Developed Sunspot Associated with an X-class Flare”, Helicity Thinkshop, 東京大学, 2017年11月

5)長谷川隆祥, 清水敏文: “太陽フレアに関連した磁気ヘリシティについての観測的研究”,第25回ひので・実験室ミーティング,東京大学,2018年2月

■ その他

1)Takahiro Hasegawa: “Observational Studies on Magnetic Helicity Associated with Solar Flares”, Master thesis, The University of Tokyo, March 2018.

JSS2利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: N/A
  • プロセス並列数: 12
  • 1ケースあたりの経過時間: 5.00 時間

利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.13

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 0.00 0.00
SORA-PP 62,736.30 0.79
SORA-LM 0.00 0.00
SORA-TPP 84,134.72 9.39

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 033.65 0.02
/data 334.59 0.01
/ltmp 6,835.94 0.52

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)