抵抗低減機体設計技術の研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)
報告書番号: R17JTET15
利用分野: 技術習得方式
- 責任者: 牧野好和 航空技術部門次世代航空イノベーションハブ
- 問い合せ先: 郭東潤 kwak.dongyoun@jaxa.jp
- メンバ: 小林保鷹, 山崎裕太朗, 郭東潤, 遠藤史歩子, 安達弘貴, 荻野翔矢
事業概要
航空機の燃料消費量削減及び空港騒音低減を目的とし,抵抗低減技術や空力構造等の統合設計技術の研究開発を行っている. 100-150席クラスの旅客機を対象とし,誘導抵抗低減技術および摩擦抵抗低減技術を適用し低抵抗機体設計を行い,基準機(TRA2012A)と比較し巡航揚抗比7%向上を実現する機体形状(TRA2022)を創出することを目標とする.同時に,将来の低抵抗・低騒音航空機(TRA203X)技術として,unconventional機体概念設計技術及び機体推進干渉効果・空港騒音推算技術を開発し,エンジンや騒音技術を合わせ2030年度前半に燃費50%減,騒音1/10を目指す低騒音・低燃費機体の設計基盤技術を得ることを目的とする.
参照URL
「エコウィング技術 | 航空環境技術の研究開発プログラム(ECAT) | JAXA航空技術部門」参照.
JSS2利用の理由
航空機の空力性能及び騒音特性を向上させるため,主翼及び航空機形状における設計作業にCFDを利用している. 空力設計では,複雑な形状における詳細な流れ場を理解しつつその改善形状を追求するため,迅速で正確な空力特性を把握することと同時に膨大な計算リソースが必要である. 事業遂行においてスパコンは必要不可欠である.
今年度の成果
本研究では,研修生や共同研究などの外部との連携により,エコウィング技術の研究開発において航空機の燃費削減及び騒音低減を目標に巡航飛行時の抗力を低減させる空力技術,空力騒音を低減させる設計技術の研究を行った.
抵抗低減技術では,誘導抵抗低減する翼端形状の研究を行い有望な翼端形状を抽出した. 昨年度の解析により選択した2つに翼端形状(Split tip wingletとDownward rakelet)について数値解析を行い最終的な空力形状を設計した. Downward rakelet形状では,翼端渦による干渉軽減による誘導抵抗低減に加え衝撃波の発生を抑制させることで造波抵抗低減が得られ(図1),基準形状に比べ翼のスパン長増の効果を含めて3%程度の抵抗低減効果が得られた.
空力騒音低減技術では,高揚力装置前縁スラットから発生する空力騒音をスラット配置変更により減らす低騒音化設計法の研究を行った. スラット配置による空力・騒音最適化設計向けに低コストな定常RANS CFD結果を元にした簡易的な騒音評価目的関数を検討し,高忠実度非定常 DDES CFD解析によりその妥当性を確認した. また,スラット配置最適化設計を行った結果を用い,流れ場変化と騒音変化の対応から騒音発生・低減メカニズムを調べ,低騒音化に向けた設計知識を得た.

図2: 高揚力装置スラット空力・騒音配置最適化と騒音発生/低減メカニズムの調査: (a) 三翼素高揚力翼型, (b)非定常計算結果可視化(Q値等値面をx軸方向渦度で色づけ)と騒音評価結果, (c)スラット配置変更によるスラット下方点における近傍場音圧値とスロット部を通過する質量流量のPSD比較, (d) 計算データから考察した低周波騒音発生機構の概念図
成果の公表
■ 査読付論文
1) 小田裕樹,湯原達規,李家賢一,”渦格子法を用いたスパン方向揚力分布の最適設計手法の検証”, 日本航空宇宙学会論文集, 66 巻 (2018) 1 号 pp. 31-38.
■ 口頭発表
1) 小林保鷹, “Reynolds Averaged Navier-Stokes計算を用いたスラット配置最適化設計向け騒音評価パラメータの検討”, 第55回飛行機シンポジウム, 2017.
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 15 – 50
- 1ケースあたりの経過時間: 300.00 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.18
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 1,038,242.42 | 0.14 |
SORA-PP | 14,889.15 | 0.19 |
SORA-LM | 8.52 | 0.00 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 889.49 | 0.62 |
/data | 22,837.66 | 0.42 |
/ltmp | 20,833.34 | 1.57 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 62.92 | 2.71 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)