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風車周りのCFD解析

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)

報告書番号: R17JTET09

利用分野: 技術習得方式

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  • 責任者: 田辺安忠 航空技術部門次世代航空イノベーションハブ
  • 問い合せ先: 木村桂大 k.kimura@ilab.eco.rcast.u-tokyo.ac.jp
  • メンバ: 木村桂大, 田辺安忠, 篠崎陽介

事業概要

風車を集約配置する大規模な風力発電所においては,風車後方に形成される後流が後続の風車に干渉することで出力低下及び疲労の増大をもたらす. 本研究では風車翼及びその後流域を対象とした大規模な数値解析を実施し,風条件および運転条件に対する風車後流の速度分布の傾向を明らかにしていく. 今年度においては自然風況の特性(乱流による変動・大気境界層による速度差)が風車後流の速度分布に与える影響に着目し,流入風条件を変更した計算を実施した.

参照URL

なし

JSS2利用の理由

風車後流域の詳細を確認する為には,風車直径の10倍程度のスケールに対して格子を配置する必要がある. 一方で風車の回転による変動の影響を考慮する為には風車翼の翼弦長基準の格子サイズが要求される. 従って広範囲に渡って詳細格子を配置する大規模計算となり,スーパーコンピュータの利用が望ましい.

今年度の成果

自然風況のモデリングとして,高度によって風速差を与える大気境界層条件と,自然風況のスペクトルモデルから生成した風速変動を与える大気乱流条件を作成した. これらの条件下で後流解析を実施し,自然風の特徴が後流域に与える影響について調査した. 大気境界層条件に関しては,上下方向の速度差は後流域が持つ変動によって平滑化され,風車直径の数倍程度の遠方域であれば大気境界層の影響は小さいことがわかった. 大気乱流条件においては風速変動により風車翼から発生する渦の崩壊が促進され,速度回復が早まる傾向が得られた. 以上の結果は,後流域の速度回復が平均的な速度場よりも風速変動によって引き起こされるものということを示唆している.

Annual Reoprt Figures for 2017

図1: 大気境界層による速度差を考慮した後流解析

 

Annual Reoprt Figures for 2017

図2: 風車後流域における主流方向速度コンター(上:一様流条件 下:大気境界層条件)

 

Annual Reoprt Figures for 2017

図3: 風車翼端渦の可視化(上:大気乱流条件 下:一様流条件)

 

Annual Reoprt Figures for 2017

図4: 後流域における平均主流風速の推移( 大気乱流条件 vs 一様流条件)

 

成果の公表

■ 査読付論文

1) Keita Kimura, Yasutada Tanabe, Takashi Aoyama, Yuichi Matsuo, Chuichi Arakawa, and Makoto Iida, ‘CFD simulations of a wind turbine for analysis of tip vortex breakdown,’ Journal of Physics: Conference Series, 749 (2016) 012013, 2016

■ 査読なし論文

1)篠崎陽介,田辺安忠,青山剛史,松尾裕一,荒川忠一,大宮司啓文,飯田誠,“風車後流シミュレーションによる後流拡大の考察,” ながれ,36(6),pp.403-408,2017.

■ 口頭発表

1)篠崎陽介,田辺安忠,青山剛史,松尾裕一,荒川忠一,飯田誠,“風車後流に対する翼端渦放出周期の影響,” 第49回流体力学講演会/第35回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム,東京(2017 6 29),JSASS-2017-2025-F/A,2017.

2)篠崎陽介,田辺安忠,青山剛史,松尾裕一,荒川忠一,大宮司啓文,飯田誠,“風車後流シミュレーションによる後流拡大の考察,”日本流体力学会年会2017,東京(2017 8 31),pp.1-6,2017.

3)篠崎陽介,田辺安忠,青山剛史,松尾裕一,荒川忠一,飯田誠,“風車後流エネルギ回復の翼端渦放出周期依存特性の解析,”日本機械学会2017年度年次大会講演論文集, 17(1),さいたま(2017 9 4),J0540206,2017.

4)Yosuke Shinozaki,Yasutada Tanabe,Takashi Aoyama,Yuichi Matsuo,Chuichi Arakawa,Hirofumi Daiguji,Makoto Iida,”Dependent characteristics of tip vortices on kinetic energy transition in wind turbine wakes”,WindEurope Conference & Exhibition 2017,Amsterdam(2017 11 30),PO153,2017.

5) Keita Kimura, Yasutada Tanabe, Takashi Aoyama, Yuichi Matsuo, Chuichi Arakawa, and Makoto Iida, ‘Evaluation of wind turbine wake simulation focusing on grid resolution,’ WWEC 2016, Tokyo, Japan, October, 2016

6)Keita Kimura, Yasutada Tanabe, Takashi Aoyama, Yuichi Matsuo, Chuichi Arakawa, and Makoto Iida, “CFD analysis of the effect of Atmospheric Boundary Layer on wind turbine wake,” AHS 73rd Forum, #28, Texas, USA, May, 2017.

7)木村桂大,田辺安忠,青山剛史,松尾裕一,荒川忠一,飯田誠,”風車翼端渦崩壊過程の周速比特性,” 第49回流体力学講演会/第35回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム, 1B08, 東京,2017.

8)Keita Kimura, Yasutada Tanabe, Takashi Aoyama, Yuichi Matsuo, Chuichi Arakawa, and Makoto Iida, “Numerical study of wake flow mixing in turbulence condition,” WindEUROPE Conference&Exhibition2017, Amsterdam, Netherlands, November, 2017.

9)木村桂大,田辺安忠,青山剛史,松尾裕一,飯田誠,” 数値解析にもとづく風車後流域の速度分布推移,” 第39回風力エネルギー利用シンポジウム,東京,2017.

JSS2利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: 2 – 8
  • 1ケースあたりの経過時間: 1,000.00 時間

利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.75

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 561,986.58 0.08
SORA-PP 1,028,549.46 12.88
SORA-LM 0.09 0.00
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 096.56 0.07
/data 10,986.33 0.20
/ltmp 2,197.27 0.17

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)