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海洋衛星データ同化システムの構築検討

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)

報告書番号: R17JR2402

利用分野: 宇宙技術

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  • 責任者: 中島映至 宇宙科学研究所
  • 問い合せ先: 可知美佐子 kachi.misako@jaxa.jp
  • メンバ: 可知美佐子, 日原勉, 相木秀則, 宮澤泰正, 大石俊

事業概要

JAXAで作成する衛星海洋・雪氷プロダクトを最大限に活用し,日本一の高解像度(約3km分解能)の海洋モデル及びデータ同化システムを用いて,欠損域のない「海中天気予報」を作成し,衛星情報をより身近で利用可能なものにすると同時に,極域を中心とした気候変動研究を進め,地球温暖化予測や影響評価の精度を向上する.

参照URL

海洋環境監視 | 課題分野研究 | JAXA 第一宇宙技術部門 地球観測研究センター(EORC)」参照.

JSS2利用の理由

非常に高解像度(3km)な領域海洋モデルに衛星データを毎日に同化し,10日~80日先までの海中の三次元物理量を予報するため,EORCで通常利用しているLinux計算機では実行ができないため,スパコンが必要である.

今年度の成果

JAMSTECと共同開発した,3km解像度の日本南岸域海洋モデルをベースとした衛星海面水温(SST)データ同化システムをFY28にJSS2上に移植し,JSS2で運用可能なシステムを構築した.今年度は,本データ同化システムにおいて,GCOM-W衛星搭載AMSR2 SST,静止気象衛星ひまわり8号SST,Aqua及びTerra衛星搭載MODIS SSTを20アンサンブルメンバで同化し,衛星データの同化による日本南岸の黒潮流路や海中の変動の再現についての実験を実施した.図1は同化する衛星SSTの違いの同化結果へのインパクトを示したものであり,同化しているSSTの季節バイアス(MODISは夏に負,ひまわりは夏に正,AMSR2は年間中立)の違いが影響し,モデルシミュレーションの水温場で,夏季に鉛直プロファイルに大きいバイアスが発生していることが判明した.このため,SST同化時点での衛星間バイアス軽減を組み込んだ.

さらに,2017年9月末に黒潮大蛇行が発生したケースについて,JSS2スーパーコンピュータ可視化チームの協力を得て,黒潮変動の時間変化の動画を作成した.図2は2017年8月~9月にかけての日本南岸域での海洋変動の日変化のシミュレーションであり,海面の流速ベクトルと,流速が強い領域をカラーで示している.9月末に関東の南側で黒潮が大きく蛇行しているのがわかる.

また,名古屋大学と連携して,上記の3km解像度海洋モデルおよび衛星SST同化システムをタイ湾周辺に適用し,JSS2での試験を行った.同時に解像度の粗い(1/12度)西太平洋広域モデルも実装し,3km解像度モデルの境界条件を提供すると共に,アジアーオセアニア域の環境・災害問題対応に向けた検討を進めている.図3は,2015年8月のタイ湾周辺域について,3km解像度の衛星海面水温を同化したモデル海面水温(左)と,2km解像度のひまわり8号海面水温(右)の動画である.インドシナ半島東岸での湧昇(青色の低水温)がモデルでも再現できていることがわかる.

このように,衛星データのモデルへの同化を推進することにより,衛星観測の欠測を埋めた,あるいは,衛星から直接観測できない物理量を含めた連続的な海洋環境データセットを作成することができる.これらのデータセットは海洋環境監視,水産,船舶航行等の分野での活用が期待される.

Annual Reoprt Figures for 2017

図1: 衛星海面水温データが同化結果にもたらす差異.(a)MODISのインパクト(2017年1-4月平均),(b)同(2016年5-8月平均),(c)AMSR2のインパクト(2017年1-4月平均),(d)同(2016年5-8月平均),(e) ひまわり8号のインパクト(2017年1-4月平均),(f)同(2016年5-8月平均)

 

図2(ビデオ): 2017年8月~9月にかけての日本南岸域での海洋変動の日変化のシミュレーション動画

図3(ビデオ): 2015年8月のタイ湾周辺の海洋モデル(左)と衛星(右)による海面水温動画

成果の公表

■ 査読付論文

1) Miyazawa, Y., S. M. Varlamov, T. Miyama, X. Guo, T. Hihara, K. Kiyomatsu, M. Kachi, Y. Kurihara, H. Murakami, “Assimilation of high-resolution sea surface temperature data into an operational nowcast/forecast system around Japan using a multi-scale three dimensional variational scheme”, Ocean Dynamics, 67, 713-728, 2017.

■ 口頭発表

1) Hihara, H., Y. Miyazawa, T. Miyama, M. Kachi, H. Murakami, Y. Kurihara, N. Ono, H. Aiki, “Constructing an ocean data assimilation product using satellite sea surface temperature”, 日本地球惑星科学連合,幕張, 2017年5月.

2) Hihara, H., Y. Miyazawa, T. Miyama, M. Kachi, H. Murakami, Y. Kurihara, N. Ono, H. Aiki, “Constructing an ocean data assimilation product using satellite sea surface temperature”, 18-th International GHRSST Science Team Meeting, Qingdao, China, 2017年6月.

3) 日原勉, 宮澤泰正, 美山透, 可知 美佐子, 村上浩, 栗原幸雄, 相木秀則, 大石俊, “高解像度海洋モデルを用いた衛星海面水温同化システムの構築”, 2017年度日本海洋学会秋季大会, 愛媛, 2017年10月.

4) 大石俊, 日原勉,相木秀則,石坂丞二,宮澤泰正,可知美佐子,”東南アジア沿岸域の海洋データ同化のためのひまわり8号の海面水温解析”,2017年度日本海洋学会秋季大会,仙台,2017年10月

5) Kachi, M., H. Murakami, M. Kikuchi, T. Kubota, R. Oki, T. Nakajima, “Current and Future Status of the JAXA’s Missions and Earth Observation Priority Researches”, EUMETSAT Meteorological Satellite Users Conference 2017, Rome, 2017年10月

6) Kachi, M., M. Kikuchi, T. Kubota, R. Oki, M. Hori, H. Murakami, T. Nakajima, “JAXA Himawari Monitor and its Synergies to Earth Observation Missions”, 8th Asia Oceania Meteorological Satellite Users Conference, Vladivostok, 2017年10月

7) Hihara, H., Y. Miyazawa, T. Miyama, M. Kachi, H. Murakami, Y. Kurihara, “Ocean data assimilation experiments using high resolution satellite sea surface temperature around Japan”, 2018 Ocean Sciences Meeting, Portland, US, 2018年2月.

8) Ohishi, S., T. Hihara, H. Aiki, J. Ishizaka, Y. Miyazawa, M. Kachi, Investigation of Himawari-8 SSTs for oceanic data assimilation off Thailand/Vietnam, 2018 Ocean Sciences Meeting, Portland, USA, 2018年2月

JSS2利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: 自動並列
  • プロセス並列数: 20 – 32
  • 1ケースあたりの経過時間: 50.00 分

利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.72

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 5,534,231.01 0.74
SORA-PP 0.00 0.00
SORA-LM 0.00 0.00
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 042.92 0.03
/data 83,866.16 1.55
/ltmp 8,789.07 0.66

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)