推進薬熱流体挙動解析技術
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)
報告書番号: R17JG3215
利用分野: 研究開発
- 責任者: 嶋英志 研究開発部門第三研究ユニット
- 問い合せ先: 梅村悠 umemura.yutaka@jaxa.jp
- メンバ: 小川哲司, 根岸秀世, 大西陽一, 大門優, 深澤修, 飯村拓哉, 藤本圭一郎, 外山雅士, 照沼暁光
事業概要
ロケット及び宇宙機の輸送能力向上には推進薬や加圧ガスの搭載量を最適に設計する必要があり,極低温推進薬の蒸発や低重力環境がシステム運用を決定する際の不確定要因となっている.本事業は,極低温推進薬の熱流動現象を再現する数値シミュレーション開発を実施し,軌道上飛行中の実機フライトデータ再現による現象理解を行う.推進薬タンクやフィードラインの内部熱流動を把握する事によって,「実機設計変更」や「推進薬供給に関する運用変更」の提案に繋げている.
参照URL
なし
JSS2利用の理由
上段ロケットの推進薬タンク内熱流動解析は,液面での蒸発を考慮する為に数ミリサイズの計算格子が必要であり, 500秒規模の運用時間を解かなければならない.この熱流動解析の計算負荷は非常に大きく,スーパーコンピュータの性能を必要とする.
今年度の成果
飛行運用中の上段推進薬タンク内は,流体密度差や機体加速度の変化によって流動が時々刻々と変化している. 気液界面へ伝わる熱量評価を向上させる為に気液界面相変化やヘリウムなどの成分混合の影響を考慮する物理モデルを実装し,H-IIAロケット上段についてエンジン始動前からエンジン停止後の慣性飛行までのシミュレーションを実現させた.
成果の公表
■ 査読なし論文
1) Liquid Nitrogen Chill-down Process Prediction by Direct Interface Tracking Approach, Yutaka UMEMURA, Takehiro HIMENO, Osamu KAWANAMI, Wataru SARAE, Kiyoshi KINEFUCHI, Hiroaki KOBAYASHI, Osamu FUKASAWA, Propulsion & Energy 2017
2) 再使用型ロケット用推進薬管理技術開発に向けた可視化技術, 梅村悠, 姫野武洋, 幅大地, 深澤修, 松本万有, 斎藤靖博, 宇宙科学連合2017
3) 宇宙輸送機推進薬タンク運用検討に向けたシミュレーション技術の研究, 梅村悠,姫野武洋,幅大地,河南治,深澤修,斎藤靖博
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 3 – 4
- 1ケースあたりの経過時間: 104.00 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.92
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 4,481,020.35 | 0.59 |
SORA-PP | 537,755.45 | 6.73 |
SORA-LM | 81.10 | 0.04 |
SORA-TPP | 8,021.22 | 0.89 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 646.24 | 0.45 |
/data | 22,964.06 | 0.42 |
/ltmp | 15,688.24 | 1.18 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.24 | 0.01 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)