音響解析技術
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)
報告書番号: R17JG3213
利用分野: 研究開発
- 責任者: 嶋英志 研究開発部門第三研究ユニット
- 問い合せ先: 堤誠司 tsutsumi.seiji@jaxa.jp
- メンバ: 高木亮治, 堤誠司, 伊藤浩之, 清水太郎, 青野淳也, 芳賀臣紀, 森井雄飛, 安部賢治, 筧雅行, 本江幹朗, 菱田学, 川島康弘, 伊藤俊, 多湖和馬
事業概要
次期基幹ロケット(H3)開発に向け, リフトオフ時プルーム音響, 及び遷音速バフェットに起因する衛星の音響環境レベルの予測と低減化が求められている. そこで, 第2期までに構築したリフトオフ時音響解析ツールの改良および適用範囲の拡大を行い, ロケット・宇宙機の飛行全般に渡る音響環境を予測し,低騒音射点, 静粛機体設計に貢献する.
参照URL
「トップページ|第三研究ユニット(旧 情報・計算工学センター)」参照.
JSS2利用の理由
数十億点規模のLES解析を実施する必要があり, 目標とする周波数解像度を達成するためにはスパコン規模の計算リソースが必須である.
今年度の成果
H3ロケットの射点音響設計のために実施されたサブスケール試験では,地下に設けられた煙道の左右に取付けられた空気取入口を遮蔽することで優位な騒音レベルの低減化が観察された. そこで,CFDを利用することで空気取入口の流れ構造,及び音響環境に影響を調べ,低騒音化の原因を解析した. また,サブスケール試験では複数ある液体ロケットエンジンを忠実に模擬することが難しいことから,単一のエンジンとしてモデル化している. サブスケール試験形態と実機形態の双方をCFD解析することにより,試験形態に起因する音響環境の差異を調べた. 図1では,液体ロケット(LE-9)が3基のみで固体ブースターが0基のH3-30形態に関するサブスケール試験形態の解析結果を示す.
H3ロケットでは一段メインエンジンをクラスタ化することが検討されている.これまでに小型コールドフロー試験を実施し,クラスタ化によるフリージェットのマッハ波低減を観測しているが,発射台と干渉する条件下でのクラスタ効果は未確認であった.本年度実施されたサブスケール試験では,新しい射場形状を模擬した音響計測が行われたが,供給系の制約によりクラスタノズルは同排気量の単一ノズルとしてモデル化され,クラスタ効果は評価されていない.本解析では,排気ジェットと発射台の干渉におけるクラスタ効果を明らかにすることを目的とし,リフト量をパラメータとしてクラスタおよび単一の各ノズル形態に対する機体近傍の音圧レベルを比較した.解析の結果,各ノズル形態のノズル直径Dで無次元化したリフト量で最大音圧となるリフト量を整理できること(本ケースでは17Dで最大となる),さらに無次元化した同一リフト量で比較するとクラスタノズルの方が単一ノズルよりも音圧(OASPL)が小さくなることがわかった(図2).
成果の公表
なし
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 64 – 119
- 1ケースあたりの経過時間: 1,440.00 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 5.03
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 41,901,509.38 | 5.49 |
SORA-PP | 135,532.99 | 1.70 |
SORA-LM | 880.09 | 0.45 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 5,591.15 | 3.87 |
/data | 33,975.56 | 0.63 |
/ltmp | 5,913.99 | 0.45 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 111.51 | 4.80 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)