解適合格子法を用いた燃焼流の研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)
報告書番号: R17JACA35
利用分野: JSS2大学共同利用
- 責任者: ジェミンスカエディータ 上智大学
- 問い合せ先: ジェミンスカエディータ Edyta.d@sophia.ac.jp
- メンバ: ジェミンスカエディータ, 相島雄太, 佐藤航太, 原悠人, 森下允晴, 坂井創, 仁賀雄一, 山本祥太, 唐新猛
事業概要
可燃性流れ,特に標準圧または高圧力のH2/AirとH2/O2混合気体の挙動を主に調べる. 興味のある物理現象としては,噴流火炎,水素安全の問題,デフラグレーションからデトネーションへの遷移,そしてデトネーション現象である. また,デトネーションを使った回転デトネーションエンジンの解析も試みたい.
また,可燃性流れのシミュレーションのための良く設計された解適合格子法のコードも完成させ,水素噴流火炎やDDT過程の問題を計算するために用いたい. DDT過程におけるデトネーションの開始の誘導時間の傾きの問題のような基礎的な機構がAMRによる高解像度の活用により明らかにされ,議論される. どのように速く,どのように幅広く水素が流れるのかというような工学的なパラメターもまた,燃焼特性と共に解析される.
参照URL
なし
JSS2利用の理由
局所的に高解像度を与える解適合格子法により可燃性流れをシミュレートするために数値計算が用いられる. 詳細な火炎とデトネーション構造を議論するために,火炎場やデトネーション場が,時間と二次元,三次元の大規模空間でのシミュレーションで再現されるために用いられる. それ故,スーパーコンピュータがこのような研究をするために必要になる. それなしでは,有効なデータを得ることは難しくなる.
今年度の成果
1)反応モデルを挿入したAMRプログラムを更に完成させた.
2)計算された噴流は,噴流の特徴を解析し,噴流火炎をスタートするに十分な浸透距離に発達した.
3)デフラグレーションからデトネーションへの遷移(DDT)が,高解像度のH2.O2混合気体で満たされた管内に再現され,DDTとデトネーションの基礎的なメカニズムが議論された.
4)4本の査読付き論文が・これらの計算結果により書かれ,世界的に著名でインパクトファクターの高い雑誌に印刷された.

図1: 次図は,yz面での82MPaの噴流圧力の瞬間的な水素の濃度分布である. 黒の実線は,ポンチ絵的に描いたブロックの境界を表す. より簡単な後処理のために,AMRブロックの数は,実際の計算での完全AMRブロック数の4分の1に減らされている. 例えば,時間tが2.4msの時,全部で12万ブロック(1億2千万格子点)が用いられた. 可視化のために,3万ブロックに減らされている.

図3: H2-O2で満たされた管内での密度勾配▽ρの時間履歴によって描かれたデトネーションの開始 瞬間的な反応が広がり,周りの衝撃波になる膨張する反応生成物を作り出している. DDTにおけるZeldovichの誘導時間の傾きがはっきりと見える.
成果の公表
■ 査読付論文
1)Xinmeng Tang, Edyta Dzieminska, Makoto Asahara, A. Koichi Hayashi and Nobuyuki Tsuboi. Numerical investigation of a high pressure hydrogen jet of 82 MPa with adaptive mesh refinement: concentration and velocity distributions. International Journal of Hydrogen Energy 2018 (Accepted).
2)Xinmeng Tang, Edyta Dzieminska, Makoto Asahara, A. Koichi Hayashi and Nobuyuki Tsuboi. Gradient mechanism on the onset of detonation in the deflagration to detonation transition. Submitted to Proceedings of combustion institude as PROCI-S-17-02072.
3) Xinmeng Tang, Edyta Dzieminska, A. Koichi Hayashi, Nobuyuki Tsuboi and Makoto Asahara. Numerical simulation of the auto-ignition and DDT by AMR. Archivum Combustionis 2018 (Resived).
4) Xinmeng Tang, Edyta Dzieminska, Makoto Asahara, A. Koichi Hayashi and Nobuyuki Tsuboi. Investigations of 105 MPa hydrogen jets. To be submitted to Science and Technology of Energetic Materials.
■ 口頭発表
1)林 光一, 坪井 伸幸, 朝原 誠, Xinmeng Tang, Edyta Dzieminska. 小孔から噴出した高圧水素ジェット中の着火の数値解析. 第55回燃焼シンポジウム, 富山, 2017.
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 自動並列
- プロセス並列数: 256 – 2560
- 1ケースあたりの経過時間: 100.00 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.12
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 1,003,703.34 | 0.13 |
SORA-PP | 0.00 | 0.00 |
SORA-LM | 0.00 | 0.00 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 052.45 | 0.04 |
/data | 524.52 | 0.01 |
/ltmp | 10,742.19 | 0.81 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)