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大規模惑星集積並列N体計算:原始惑星円盤内での微惑星の衝突破壊による効果

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)

報告書番号: R17JACA27

利用分野: JSS2大学共同利用

PDFはここからダウンロード

  • 責任者: 小南淳子 東京工業大学地球生命研究所
  • 問い合せ先: 小南淳子 kominami@mail.jmlab.jp
  • メンバ: 小南淳子

事業概要

地球や他の惑星は太陽が生まれたときに,その周りに円盤状に取り残されたダストが集まってできたと考えられます.

現在の理論では木星型惑星や氷型惑星といった太陽系の外側の惑星は形成することはできず,また,地球のもととなるような小さい原始惑星もさらに成長する前に太陽に落ちてしまうと考えられています.私たちのグループはN体計算という方法で惑星ができる過程をシミュレーションしています.

本研究ではJSS2 に対応させたKninja というコードを使い,ガス抵抗,タイプ1惑星移動,衝突破壊を入れたN体計算を行います.

本年度の目的は,既存の惑星形成理論の暴走成長フェーズ,そして寡占成長フェーズが上記のより現実的な系を考えた場合,どのように変わるのかを検証します.

参照URL

なし

JSS2利用の理由

当初,Kninja は「京」で使えるようにチューニングしました.しかし,十分な計算結果を出すためには割り当てられた計算時間が不足していました.また,JSS2のSORA-MA は「京」より速く,科学的計算結果を出しやすいという点も挙げられます.

今年度の成果

従来のN体計算による惑星集積過程の研究では,衝突した微惑星は破片などを出さずに合体して一つの新しい微惑星になると仮定されてきた(完全合体の仮定).これは,破壊や破片の生成を取り入れると,粒子数が増大し,計算時間が膨大になるためである.完全合体だと微惑星の成長と共に粒子数が減少するので初期の粒子数を大きくとれる.しかし,破壊によって生成された破片は力学的摩擦によって原始惑星及び,微惑星の速度分散を引き下げるため,惑星形成過程に大きな影響を持つ.このため,N体計算には破壊過程を正しく取り入れることが必須である.

衝突破壊を入れると,質量の小さな微惑星が大量に生成され,ガス抵抗の効果でその速度分散が小さくなる.その速度分散の小さい大量の微惑星が原始惑星の周りに存在することで原始惑星のplanetesimal driven migration(PDM) が促進される可能性がある.このPDMは円盤外側に原始惑星を運ぶ可能性があるので.その場合,タイプ1惑星移動による惑星落下をある程度防ぐ可能性がある.本研究ではガス抵抗,タイプ1惑星移動と破壊モデルを入れた大規模なN体計算を行い,惑星移動がどうなるかを調べた.その結果,衝突破壊を入れると原始惑星の周りに質量が小さく速度分散の小さい微惑星が生成された.これらの小さい微惑星があることで質量の大きい微惑星のみだった場合より,原始惑星の外側へのPDMがより連続的に起こりやすくなった.

Annual Reoprt Figures for 2017

図1: 原始惑星の軌道長半径の時間進化の図.衝突破壊入りの場合,外側移動が続く.

 

成果の公表

■ 口頭発表

1) 小南淳子, “衝突破壊プロセスを入れたN体計算における原始惑星の動径方向移動”, JpGU, 幕張

2) 小南淳子, “大規模N体計算で惑星を作る”サブ課題A惑星形成のこれまでとこれから, ポスト「京」萌芽的課題・計算惑星アプリケーション開発状況共有ワークショップ, 神戸

3) 小南淳子, “シミュレーションで明らかにされつつある惑星形成過程”, 最新の天文学の普及を目指すWS,神戸

4) 小南淳子, “衝突破壊プロセスを入れたN体計算における原始惑星の動径方向移動”, 天文学会,千葉

■ Web上の研究成果のURL

1) http://www.hpci-office.jp/pages/k-san_cu18

JSS2利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: 2 – 32
  • 1ケースあたりの経過時間: 96.00 時間

利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.19

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 1,587,491.68 0.21
SORA-PP 0.00 0.00
SORA-LM 0.00 0.00
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 004.77 0.00
/data 047.68 0.00
/ltmp 976.56 0.07

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)