前向き空洞前面での衝撃波振動遷移の数値解析的研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)
報告書番号: R17JACA23
利用分野: JSS2大学共同利用
- 責任者: 水書稔治 東海大学工学部
- 問い合せ先: 水書稔治 mizukaki@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp
- メンバ: 水書稔治, 小田切太郎, 比護悠介, 加藤明里
事業概要
火星など大気を有する惑星への探査機の着陸時に利用する超音速パラシュート周囲では衝撃波の非定常振動が発生する場合があり, 時として, 大振動によりパラシュートの機能不全を引き起こす. 本研究では, このような衝撃波の大振動の発生メカニズムを解明する実験結果を考察するための数値解析手法の確立と, 大振動に至らせないためのパラシュート設計に貢献することを目標としています. 現象の理解のために, 単純化したパラシュート形状での解析手法を確立し, 実際の形状への適用に発展させる.
参照URL
「mizukaki – 航空宇宙学専攻」参照.
JSS2利用の理由
本研究課題は,マイクロ秒単位で非定常に振動する衝撃波現象を3次元的に数値解析することで解明できる.そのため,利用する数値解析プログラムとして,圧縮性流体解析コードとして定評のあるJAXA開発のFaSTARが適していると判断した.FaSTARによる本研究課題の模型形状周囲の流れ場の3次元解析において,1000万点以上の計算グリッドによる解析が必要と判断した.そのため,並列計算と大規模な実行メモリが必要になるため,JSS2の利用が最適と判断した.
今年度の成果
本年度は,超音速流中(M=2.0および3.0)の前向きキャビティ前方に発生する離脱衝撃波の振動が,キャビティ直径(D)と深さ(L)との比(L/D)が変化することで受ける影響の検証を実施した.これは,前年度で行われた超音速風洞実験の結果と対比させ,実験では観測不可能なキャビティ内部の現象理解を進めることが目的である.
L/Dは,0,0.2,0.5,1.0,および2.0の5条件を実施した.上流の気流条件が安定であると場合に対し,乱流である場合の挙動とを比較するため,キャビティ底部からスパイク(針状の突起)をキャビティ外部に突出させた.スパイクの直径(d)とDとの比(d/D)は,0.12,キャビティ外部への突出長さ(l)とDとの比(l/D)は,2.5とした.計算空間の一例をFig.1に示す.l/D=2.5とした理由は,l/D > 2.0 の条件下では,キャビティ内の音響振動が存在しない場合には,離脱衝撃波の振動は発生しないとの先行研究の結果を参考とした.
解析の結果,気流Mach数2.0においては,L/D > 0.5において離脱衝撃波の振動様態が,「振動 Oscillation」から「脈動 Pulsation」に変化すること,気流Mach数3.0においては,振動から脈動への遷移が,L/D > 1.0と変化が再現された.代表的な解析結果をFig.2に示す.
図2(ビデオ): 解析結果(L/D = 0.5, Mach3.0)
図3(ビデオ): 解析結果(L/D = 1.0, Mach3.0)
成果の公表
■ 査読付論文
1) Mizukaki, T. and Yamada, K.*Transition Behavior of Shock Waves from Oscillation to Pulsation around a Forward-Facing Concave with Spike, AIAA (2018)
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: N/A
- プロセス並列数: 32
- 1ケースあたりの経過時間: 15.00 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.01
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 25,933.40 | 0.00 |
SORA-PP | 179.05 | 0.00 |
SORA-LM | 0.00 | 0.00 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 491.14 | 0.34 |
/data | 9,908.68 | 0.18 |
/ltmp | 4,882.81 | 0.37 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)