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機体騒音低減技術の飛行実証(FQUROH)低騒音化設計研究

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)

報告書番号: R17JA2801

利用分野: 航空技術

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  • 責任者: 山本一臣 航空技術部門FQUROHプロジェクトチーム
  • 問い合せ先: 山本一臣 yamamoto.kazuomi@jaxa.jp
  • メンバ: 山本一臣, 伊藤靖, 高石武久, 村山光宏, 坂井玲太郎, 平井亨, 田中健太郎, 雨宮和久, 中野彦, 石田崇

事業概要

現在,高揚力装置及び降着装置に対する低騒音化技術は空港周辺地域の騒音低減を実現するために国際的にも注目されているが,その技術成熟度を,将来の旅客機開発ならびに装備品開発に適用可能な段階にまで高めることを目的としたFQUROHプロジェクトの一環として本研究を実施している.これにより,国内航空産業界における国際競争力強化に貢献するとともに,空港周辺地域社会における騒音被害,エアラインの運航コスト (着陸料) の軽減に貢献する.FQUROHプロジェクトでは実用的な低騒音化コンセプトと先進的な数値解析技術を基礎にした低騒音化設計法の実現可能性を検証することを目的の一つとしている.本事業コードでは,スパコンを用いて大規模なReynolds-averaged Navier-Stokes (RANS) 解析やLarge/Detached Eddy Simulation (LES/DES)などの先進的な数値解析により,騒音発生源の詳細把握や騒音予測を行い,低騒音化デバイスの形状設計を行った.

参照URL

FQUROH(機体騒音低減技術の飛行実証)プロジェクト | 航空環境技術の研究開発プログラム(ECAT) | JAXA航空技術部門」参照.

JSS2利用の理由

FQUROHプロジェクトは,機体騒音低騒音化という課題に対して,最新の数値解析技術を用いた低騒音化設計を積極的に活用することにより技術成熟を加速し,フィデリティの高い設計技術開発を飛行試験によりデモンストレーションしようとするものであり,スパコン利用を前提に立案したプロジェクトである.スパコンを利用した数値解析により,風洞試験のみでは困難な,詳細な物理現象の把握を基礎にした低騒音化設計を行うことが可能であるためである.

今年度の成果

FQUROHプロジェクトでは機体騒音低騒音化設計に向けて,高揚力装置のひとつであるスラットから発生する騒音を低減させるため,非定常Delayed Detached Eddy Simulation (DDES) 解析を利用したスラット騒音低騒音化設計を実施した.高揚力装置を展開したリージョナルジェット実機主翼から,代表的な断面を取り出して非定常解析DDES解析を行い,2種類のスラット騒音低減デバイスとその形状パラメータを検討し,実機翼型にあわせたデバイス形状を決定できた.縮尺模型を利用した空力騒音計測試験により設計検証を行ったが,縮尺模型を利用する事に起因するデバイス強度/製造の制約に関して,その低騒音化効果や空力性能への影響を事前に調べて試験におけるリスクを低減した.空力・騒音計測風洞試験を実施し,その効果を確認する事ができた.

なお,スラット騒音低騒音化を進める上で,Spalartらが提案したDDESによるこれまでの解析では,スラットカスプより発達するせん断層の混合の遅れが見られ,その影響でスラット騒音に特徴的なピーク音を過大評価してしまう課題があった.同様のせん断層の混合遅れは他論文でもこれまでに指摘されており,その解決策として,DDESにおけるLESモードでの長さスケールの定義が新たに提案されてきた.そこでスラット騒音のベンチマーク問題として知られる高揚力装置スラットとフラップを展開した30P30N翼型とDLR F16翼型を対象に,既報にある長さスケール5通りを導入してそれぞれ非定常流体音響シミュレーションを実施し,その効果を確認した.その結果,Deckら,Shurらの定式化にある渦の方向を考慮した長さスケールを採用することで,従来の解析よりもせん断層の混合が促進され,せん断層に沿った流れの統計量分布が改善する様子が見られた.スラットカスプでは形状的な制約からスパン方向格子幅が相対的に大きくなり,その解析は格子の非等方性に由来する悪影響を受けやすいが,これを避けるためにDeckら,Shurらの既報にある渦の解像に寄与する格子幅のみ採用する考え方が重要であることがわかった.

Annual Reoprt Figures for 2017

図1: DLR F16翼型スラット周りの流れ場におけるQ等値面 (Mach数分布で色付け) の長さスケールΔによる違いの比較

 

成果の公表

■ 査読なし論文

1) Yamamoto, K., Takaishi, T., Murayama, M., Yokokawa, Y., Ito, Y., Arizono, H., Sakai, R., Shoji, H., Ueno, Y., Isotani, K., Lee, H.-H., Inoue, T. and Kumada, T., “FQUROH: A Flight Demonstration Project for Airframe Noise Reduction Technology – the 1st Flight Demonstration,” AIAA Paper 2017-4029, 23rd AIAA/CEAS Aeroacoustics Conference, Denver, CO, 2017, DOI: 10.2514/6.2017-4029.

2) Sakai, R., Ishida, T., Murayama, M., Ito, Y. and Yamamoto, K., “Effect of Subgrid Length Scale in DDES on Aeroacoustic Simulation around Three-Element Airfoil,” AIAA Paper 2018-0756, 2018 AIAA Aerospace Sciences Meeting, Kissimmee, FL, 2018, DOI: 10.2514/6.2018-0756.

■ 口頭発表

1) 坂井玲太郎, 伊藤 靖, 村山 光宏, 山本一臣, 石田崇, “スラット騒音のDDES解析におけるサブグリッド長さスケールの影響,” 第49回流体力学講演会/第35回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム, 1B15, 2017.

2) 雨宮和久, 村山光宏, 山本一臣, 平井亨, 田中健太郎, 池田友明, “非定常解析を用いた航空機高揚力装置スラットの低騒音化配置の検討,” 第37回流力騒音シンポジウム, 東京大学, 2017.

JSS2利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: N/A
  • プロセス並列数: 1728
  • 1ケースあたりの経過時間: 130.00 時間

利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 5.81

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 48,916,266.87 6.46
SORA-PP 36,243.83 0.45
SORA-LM 26.32 0.01
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 064.49 0.04
/data 8,954.25 0.17
/ltmp 2,682.33 0.20

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 177.48 7.63

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2017年4月~2018年3月)