超小型衛星打上げ機の開発
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)
報告書番号: R16J0120
- 責任者: 久保田 孝(宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系)
- 問い合わせ先: 中村 隆宏(nakamura.takahiro@jaxa.jp)
- メンバ: 堤誠司,伊藤浩之,中村隆宏
- 利用分類: 宇宙分野(ロケット)
概要
超小型衛星打上げロケットSS-520-4号機を用いて,3㎏程度の超小型衛星TRICOM-1を軌道投入する.2017年1月15日にロケット打上げを実施したが,ロケット搭載機器の不具合のため衛星は軌道投入されなかった.第1段の飛翔軌道および落下点は軌道計画通りであり,軌道計画時の空力特性の設定は適切であったことが実証された.また,正常飛行中に取得された機体各部の温度計測結果より,空力加熱条件が適切であったことも確認された.
目的
民間事業者が取り組むロケット関連機器の技術をSS-520-4号機に搭載し,超小型衛星の打上げを実施して開発機器の機能実証を行うことを目的とする.これにより,民間事業者はロケット,衛星開発において直面する課題を抽出し,今後の開発に役立てる.JAXAはこれらの成果物を基幹ロケットや観測ロケットなどの事業に還元させることにより,宇宙技術の高度化,発展を図る.
目標
SS-520-4号機は,2段式の観測ロケットSS-520に対して第3段モータを追加し3段式に改修した超小型衛星打上げ機である.打上げ性能の余裕が少ないロケットの開発を短期間で進めるために,以下の観点について適切かつ迅速に検討するプロセスを確立する.①軌道検討時における空力特性の策定,②機体各部への環境条件検討時における空力的観点からの条件提示.
参照URL
なし
スパコンの用途
・SS-520-4号機は打上げ性能に対する余裕が少ないことから,機体形状各部で発生する抗力の割合や抵抗低減対策についてCFDを用いた検討を実施し,機体外形状の設計に反映した.
・機体各部への環境条件として,空力加熱による入熱量,および機体外形状への外力分布をCFDにより解析し,機体設計時の要求項目として設定した.
打上げ軌道に対して風による影響が大きいことから,機体全体での空力特性(特に抵抗係数,法線力係数)について,機体表面の微小突起物も含めたCFD解析を実施し,風洞試験結果と合わせて軌道設計におけるベースラインとして適用した.
段間の早期分離といった異常飛行時でも飛行安全要求を満足することを示すために,異常時を想定した形態でのCFD解析を実施し,異常飛行時軌道計算用の空力特性を設定した.
スパコンの必要性
スパコンを用いたCFD解析は,結果の検証において十分な考察が必要となるが,風洞試験と比較して①様々な形状に対して即応性が良い,②模型スケールから実機スケールまで幅広い気流条件の設定が可能,③機体表面分布や気流分布といった細部の分布についても評価・考察が実施可能,といった多くのメリットがある.
開発・設計段階でスパコンを活用することで早いサイクルで検討・評価を実施し,結果として短期間での打上げを実現できた.このことは,ロケット開発における短期間化,開発リスク低減において,スパコンを用いたCFD解析が有効なツールであることを示している.
今年度の成果
1. 機体各部への空力荷重,入熱条件の策定
微小突起物も含めた機体外形状について,ノミナル軌道,空力加熱率評定軌道それぞれにおける気流条件での流れ場をCFDにより解析し,機体各部位における①空力荷重,②空力加熱率を評価した.
2. 全機形態での空力特性の解析
微小突起も含めた機体外形状について,ノミナル軌道での空力特性をフライト中の各マッハ数における気流条件での流れ場をCFDにより解析し,各気流条件での抵抗係数,法線力係数,風圧中心を評価した.
成果の公表
なし
計算情報
- 並列化手法: プロセス並列
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 144
- プロセスあたりのスレッド数: 1
- 使用ノード数: 12
- 1ケースあたりの経過時間(時間): 8
- 実行ケース数: 60
利用量
総仮想利用経費(円): 920,262
内訳
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
SORA-MA | 0.00 | 0 |
SORA-PP | 87,436.22 | 746,530 |
SORA-LM | 0.00 | 0 |
SORA-TPP | 0.00 | 0 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
/home | 2,973.58 | 17,141 |
/data | 18,139.33 | 104,566 |
/ltmp | 1,241.69 | 7,157 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
J-SPACE | 23.78 | 44,865 |
注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)