JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月～2017年3月)

報告書番号: R16J0115

• 責任者: 佐藤 英一(宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系)
• 問い合わせ先: 船木 一幸(funaki.ikkoh@jaxa.jp)
• メンバ: 川崎央,田内思担,外岡学志,古川裕介,荒井啓之
• 利用分類: 宇宙分野(宇宙工学)

概要

宇宙機推進のブレークスルーにより,次世代深宇宙探査技術を飛躍的に高めることを目指して,電気推進ロケットならびに将来型推進機の数値設計技術を獲得することを目的としている.本年度は電気推進ロケットの1つである「電磁プラズマ力学アークジェット」の数値モデリングを実施した.Navier-Stokes方程式とMaxwell方程式を組み合わせた電磁流体コードMAPSにより,推力・放電電圧を予測するだけでなく,推進性能および壁面熱流束を評価することに成功した.

目的

既存宇宙機推進技術の適用範囲は限られており,太陽系内の自由な航行にはほど遠いのが現状である.宇宙機推進のブレークスルーにより,次世代深宇宙探査技術を飛躍的に高めることを目的とする.

目標

電気推進ロケットならびに将来型推進機の数値設計技術を獲得する.本年度は電気推進ロケットの1つである「電磁プラズマ力学アークジェット」の数値モデリングを実施する.

参照URL

なし

スパコンの用途

宇宙機推進機のシミュレーションは,特に大型・大出力のものを地上試験することは難しいことから,スパコンにて予備的な設計ならびに評価ができれば,その開発工程を大幅に短縮することが可能となる.

スパコンの必要性

多大な計算リソースを必要とするプラズマ流解析コードにて,数値設計最適化を実施するために不可欠である.

今年度の成果

MPDスラスタの数値設計では,推力と電力クラスを最初に設定した後,初期スラスタ形状を推定する.解析ツールは,スラスタ形状・動作パラメータ推定作業と,放電プラズマ(電磁流体)・熱連成解析コードから構成され,ツール全体を複数回反復利用することで熱的に妥当なスラスタの形状を求め,推力・性能特性を算出する.本年度は,放電プラズマ解析コードであるMAPSコードによるMPDスラスタの数値シミュレーションを実施した.MAPSコードは,Navier-Stokes方程式とMaxwell方程式を組み合わせた電磁流体コードであり,プラズマ中の放電現象が自己無撞着に接続され,より現実的な放電現象のシミュレーションが可能となった.Fig.1には,スラスタヘッドの構成と,典型的なヘッド内放電分布を示した.

Fig.1:自己誘起磁場型MPDアークジェットの放電経路ならびにHallパラメータ分布Ar, 1.8g/s, 6kA)

成果の公表

査読なし論文

1)田内思担,窪田健一,川﨑央,船木一幸,中根昌克,水素MPDスラスタにおける推進性能の陽極形状依存性に関する数値的検討,平成28年度宇宙輸送シンポジウム,STEP-2016-028,相模原,2017年1月.

2)田内思担,中根昌克,川崎央,窪田健一,船木一幸 (JAXA), 水素MPDスラスタの推進性能の陽極形状依存性に関する数値解析,第60回宇宙科学技術連合講演会,4I04,函館,2016年9月.

3)川崎央,窪田健一,船木一幸,奥野喜裕,自己誘起磁場型MPDスラスタの電磁流体・熱連成シミュレーション,第60回宇宙科学技術連合講演会,4I05,函館,2016年9月.

計算情報

• 並列化手法: スレッド並列
• プロセス並列手法: 非該当
• スレッド並列手法: 自動並列
• プロセス並列数: 1
• プロセスあたりのスレッド数: 6
• 使用ノード数: 1
• 1ケースあたりの経過時間(時間): 10
• 実行ケース数: 1273

利用量

総仮想利用経費(円): 1,927,636

内訳

注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月～2017年3月)