JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月～2017年3月)

報告書番号: R16J0113

• 責任者: 佐藤 英一(宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系)
• 問い合わせ先: 本江 幹朗(motoe.mikiroh@jaxa.jp)
• メンバ: 嶋田徹,本江幹朗,松野友樹
• 利用分類: 宇宙分野(宇宙輸送,衛星利用,宇宙工学)

概要

宇宙経済が今後も発展し続けるためには,航空機と同様な安全で経済的な宇宙輸送手段が必要である.しかし現在の宇宙輸送手段は爆発性を持つという点で航空機とは状況が本質的に異なる.

本事業では爆発性を持たない安全なロケットとして期待されるハイブリッドロケットを実現するために,従来の課題を克服するA-SOFT技術を提案し,その実用化に向けてロケット内部の旋回乱流燃焼場をコンピュータによってシミュレーションする技術の開発に取り組んでいる.

目的

本質的に爆発性を持たない推進系であるハイブリッドロケットの実現に向けた研究開発によって,安全で経済的な宇宙輸送手段の実現を推し進め,宇宙経済の持続的な発展に貢献することを本事業の目的とする.

目標

ハイブリッドロケットの課題である推力制御性能の解決策として期待されるA-SOFT技術の技術実証に向けて,旋回乱流燃焼現象の解析技術(①現象の理解を目指した詳細な解析技術の開発,②設計に有用な解析ツールの開発)を確立することを目標とする.

参照URL

なし

スパコンの用途

ハイブリッドロケットの燃焼器における旋回乱流燃焼場の定常,非定常数値解析技術を確立する.これを用いて燃焼器の特性と特徴的な物理現象を把握し,実機開発へ貢献する.

スパコンの必要性

乱流燃焼現象に対する実用的な数値解析を一般的な計算機で行うことは計算速度とメモリ容量の観点から不可能である.よって,ハイブリッドロケットの開発に供する乱流燃焼解析を行うためにはスパコンによる高速且つ大規模な解析が必要不可欠である.

今年度の成果

<解析1>

ハイブリッドロケットの非定常燃焼解析技術の確立を目的として,Detached-eddy simulation (DES)とLarge-eddy Simulation (LES)による解析を行い双方の結果を比較した.酸化剤流旋回型ハイブリッドロケットに対するLESとDESによって予測された瞬時の燃料後退速度の軸方向分布と実験値との比較をFig.1に示す.また,Fig2.に中心軸を通る断面での温度コンタを示す.これらにより双方がこの種のハイブリッドロケットに対し妥当な解析を行えていることを確認した.

<解析2>

ハイブリッドロケット内部における定常旋回乱流燃焼場の並列計算コード作成に向けて,JSS2を用いた解析演習を行った.

Fig.1(解析1):燃料後退速度軸方向分布(瞬時値)

Fig.2(解析1):温度コンタ

成果の公表

口頭発表

<解析2>

1) ICFD2016

計算情報

• 並列化手法: プロセス並列,スレッド並列
• プロセス並列手法: MPI,非該当
• スレッド並列手法: 非該当,OpenMP
• プロセス並列数: 680,1
• プロセスあたりのスレッド数: 1,2
• 使用ノード数: 45,1
• 1ケースあたりの経過時間(時間): 240, 6
• 実行ケース数: 3, 20

利用量

総仮想利用経費(円): 3,719,261

内訳

注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月～2017年3月)